合戦の後は…
「…ぶはっ!!」
雪合戦のラストは時雨先輩の反則的な雪だまにこちらのメンバーが飲まれることによって終わった。たったいま俺が雪の中から出てくると、他のメンバーは既に出てきていて、アリスたちがつくっていた巨大かまくらの中に居た
「…誰か一人くらい心配してくれても…」
「…まぁまぁ、仕方がありませんよ」
「奏夢さん?」
知らぬ間に奏夢さんが近くに来ていた。…あれ?さっきはかまくらに…
「私には秘密が沢山あるんです。ひとつひとつ考えたらキリないですよ」
「?は、はぁ…」
「さ、早く行きますよ、皆様がお待ちです」
そう言われ、俺もかまくらの中へ入る。…かまくらは想像以上にでかくて、全員が入ってもまだスペースに空きがあった。…部室くらいでかいじゃねーかよ
「あっちゅんも揃ったし、あれやろぉよ、ひとみん♪」
「あぁ、分かった」
そして時雨先輩は桜先輩に言われ、奥からコンロとフライパンを出し、俺らの円の中心に置いた。…フライパンが無駄にでかいのは、無視しよう、うん
「じゃ、アリスがやりたがってた餅焼き始めるぞ」
「ワオ!!やるのネ♪」
そしてコンロに火がつき、切り餅をフライパンに乗せていく。その間に阿見津先輩が皆に皿と箸を渡して回っている
「で、どう食うんすか、桜先輩?」
だが、肝心の味付けが見当たらない。いくらなんでも餅を単体で食べるって事はないだろう…
「ふにゅ?」
…何の話って顔をされましたねー。えー
「…まさか、焼いた餅をそのまま食うんすか?」
「うん、そのつもりだよぉ?」
何事も無いようにさらっと言う桜先輩。…もしかして、こんだけ周りが気にしてないって事は、皆本気かよ。…諦めるか
こうしてる間に餅が焼け、皆の皿に移される。アリスは感動の顔で餅を見つめていた
「こ、これが日本の餅ネ!美味しそうヨ♪」
「…そういや、アリスはこっちでは珍しいものばかりだったな」
「そうヨ!だからこれも、とっても珍しいネ♪だから早く食べたいヨ♪」
「いよっしぃ♪じゃあ皆♪いただきまーすぅ♪」
そして全員が餅を口に運ぶ。…ん…?
「あら…これは、チーズかしら??」
憐香の餅の中にはチーズが入っているらしかった。…いや、でも俺のはチーズじゃ…
「にゅふふ~♪皆のお餅にはそれぞれ何かが入ってるんだよぉ♪ちなみに私のはイチゴだからぁ、イチゴ大福みたいになっちゃったぁ♪」
どうやら味付けをしなかった理由はこれらしい。…ただ、そんな餅どこで売ってるんだよ…聞いたこと無いぞ、餅の中にイチゴって…
「てことは、私のはチーズですのね。中々美味ですわね」
始めに中の物に気付いた憐香はチーズ。普通に当たりだな
「…私のは多分、角煮っぽいが…中々脂っこいな…」
「……僕のも、豚の角煮かな…」
時雨先輩と羽根黒先生のは豚の角煮らしい。…なんでもありだな、その餅
「あ、私のは普通にあんこです♪つぶあんですねー♪」
『私も』
風と阿見津先輩はつぶあんだ。一番普通のを引き当てたんだな
「私は…ハンバーグですかね」
「あ、ウチもー♪これおいしい♪」
奏夢さんと蜜柑はハンバーグ…。食べごたえあるなぁ
「…俺はカレーっすよね」
「…私もです、淳さん…」
そして俺とコハルはカレーだった。…なんか主食じゃなかったの、桜先輩だけか…
「私を忘れたら困るよ、河内君」
「あ、三笠先輩。すんません」
「まぁいい…。ちなみに私のだが…ほら」
三笠先輩は自分の餅を掴み、中を見せてくれる。…?
「…なんすか、これ」
「カオル…これは?」
中に入ってたのは何やら赤い物だった。三笠先輩は桜先輩に確認を取る。だが…桜先輩も怪訝そうな顔をしている
「…なんだろうねぇ?」
「…は?か、カオル、これの中身が分からないって…」
「だって私が作ったものじゃないしぃ…コハ~?」
桜先輩はコハルに聞いてみるが…
「お姉さま、さすがに私が分かるはずが無いでしょう?」
…コハルも分からない?じゃあ…
「阿見津先輩、中に何入ってるか分かります?」
ショー部1の頭脳派、阿見津先輩だ。阿見津先輩は中身を見て…
『福神漬け』
「はいっ!?」
…中に入ってたのは、福神漬けか…
「全く…酔狂だな」
「全くだ、三笠」
「おもしろいねー♪」
皆が笑顔のまま、不思議餅を口に運び、笑いあってる。…いい風景だ…
「…」
ただ…この時、阿見津先輩の表情に陰りがあったのを、気付けばよかったのだが、今の俺たちには知るよしも無かった…