白い妖精
「…」
「おつーっす。…桜先輩?」
とある日の部室、はいって見ると中には桜先輩が居た。ただ、なんかいつもと違う印象だった。…なんか、黄昏てる?
「…桜先輩~?」
「…ふにゅ?あっちゅん?」
桜先輩が振り替える。…あれ、眼鏡かけてる
「…桜先輩、視力悪かったんでしたっけ?」
「あまり良くは無いけど、別に眼鏡をかける程じゃないよぉ?これはだて眼鏡だよぉ♪」
そういい、眼鏡を外す桜先輩。…ただ、やっぱりなんか様子が変だ。…どうも伏し目がちだな…
「…桜先輩、何を考えてるんすか?」
「え?」
…桜先輩は、分かりやすい人だ。基本的ににこにこしてるが、何かあるとどうも笑顔に影がさす。…こういう時、力になれるのか?
「…いや、なんか様子がいつもと違いますからね」
「…えへへ…やっぱり分かりやすいよねぇ…」
「…力になれないかもっすけど、言ってくれませんか?話すだけでも、少し楽になれる筈っす」
「…うん…」
そして桜先輩は口を開いた
「…ねぇ、今何月?」
「今っすか?11月っすけど…」
「…私とひとみん、もう少しで卒業なんだよね…」
「…」
「でね…今年はあっちゅんとかふーちゃんとかが入ってくれて…いろんなことが出来て…毎日が楽しいんだぁ」
「…そうっすね、俺も楽しいっす。…疲れますけどね」
「でね…正直…もっと、もっと楽しい思い出作りたいんだぁ…」
「なら、まだまだ時間があるんですから…」
「違うよ!」
そこで桜先輩が少し怒りながら身を乗り出してきた。…泣いてる?
「…私はっ…もっと皆と居たいの…」
「…集まるだけなら、暇さえあれば…」
「私は…卒業したら家を継がなきゃいけないから…」
「…桜財閥っすね」
「…そうなったら、忙しくてもう皆と会えなくなる…」
そう話す桜先輩の目には既に涙が溢れていた。…そうか…
「寂しいんすね?」
「…うん…」
「…あ…桜先輩、外を見てください?」
俺は外を指差す。桜先輩がそちらに視線を移すと…
「…ぅわぁ…♪」
「初雪っすね」
外では雪が降っていたのだ。チラチラ舞い落ちる様はまるで妖精だった
「…良かったっすね、空の妖精さんがプレゼントっすよ」
「…プレゼント?」
「だってほら、雪があればなんでも出来ますよ?雪合戦にかまくら、スキーにスケートと、やれることは沢山あります。…確かに、卒業は寂しいっす。だけど、俺たちがここで出会えた事実は変わらないっすから」
俺は素直に自分の気持ちを伝えた。すると桜先輩の涙が収まり、笑顔に変わった
「…うん!♪これからもいっぱいいっぱい、遊ぶぞぉ♪」
「…遊ぶんじゃなく、部活っすよ」
「おう、カオルに河内。…カオル?目…」
そして他の部員が一同に来る。時雨先輩が桜先輩の目が赤い事に気付き、河内をにらむ
「ふにゅ?何もないよぉ?ねー、あっちゅん♪」
「え、あぁ…はい」
「…なんか、怪しいなー?」
「ですわね…。カオル先輩、何があったんですの?」
「…?」
風、憐香、阿見津先輩も俺らに疑いの目を向ける。…そして桜先輩と目があい…
「「逃げろぉっ!!」」
「「あ、待てっ!?」」
そして俺と桜先輩は一目散に逃げる。それを追う他のメンバーはそれを追った。…皆の顔は、笑顔だった
…雪が降りだし、少しずつ終わりの時が近づきながらも、俺たちはまだまだ歩く…