2人目 2
───── 宿 ──────
荷物を降ろして床に座る。
「外暑っちぃー」
「さすが火の街」
「…なぁジルコン気付いたか?」
「え?何を」
「この街…ほとんどが女だ」
「え...」
そういえばこの宿のオーナーは女性だった。
まぁ普通と言えば普通だが、この宿の通りには確かに女性が多かった。
うーんと唸る。
「ま、いいんじゃん?女性が多くて結構結構」
立ち上がって必要な物だけ持つ。
「この街には情報屋みたいなのいないのかな」
「訊いてみるか」
オーナーに尋ねると街の真ん中にある聖院に情報通の女の子がいるらしい。
また女性...。
「ありがとうございます。行ってみます」
トパーズと頭を下げてから歩き出した。
祭りの音楽から聞こえてくる歌声も女性のものだった。
よく見ると、ほとんど祭りに参加している者は女性だった。
「なんだこれ...」
「あの!!」
祭りの音にかき消されないように大声を張り上げる。
「誰か男性の方いらっしゃいませんか!!」
ピタッと音が止まる。
周りの人達も動かなくなって全員が俺達を見た。
「...?なんだ...?」
「男...」 「男よ...」 「連れて行かなくては...」 「男...」
「───え?」
ガシッと腕を掴まれる。
「っ?何をっ...」
「連れて行かないと...」 「早く...」
「離せっ」
トパーズも掴まれている。
魔力を使うわけにも…っ!!
上に乗っかられて足が崩れる。
「早く…しないと。」
ヒュッと木槌が飛んできた。
「殺される」
「!!」
結界をはって守る。
「悪いけどっ」
地面に手を置いて迷路のように道を作る。
壁を作るとその道の中には俺とトパーズだけになった。
「こっちだトパーズ!!」
道の中を走ると外で俺達を追いかけている音が聞こえた。
地味に背中が寒くなる。
「こっち曲がればいいのか!?」
「わからない!!」
右に曲がったところで道が急に途絶えた。
「え...」
「なんで...」
壁が崩れて後ろに街の女性が追いかけてきていた。
全員生気のない目をしている。
「とっとりあえず走れ!!」
「あぁ!!」
俺達が逃げ込んだところは小さな路地だった。
慌てて前に走る。
「ちょっと待て。声が聞こえる」
「え」
トパーズが俺を引き止めて言った。
耳を澄ますと前から女の声が聞こえた。
挟まれた───!!
「どうする?ジルコン!!」
「とりあえずどっかに逃げ込むしか...!!」
1本の横道を通り過ぎたところで誰かに腕を掴まれ引き込まれる。
「来い」
耳元で女の声がした。
「はっ離せっ」
「死にたくなければ付いて来い」
トパーズが俺の顔を見ると口を結んだ。
───行こう。
走り出した女の後を付いて行く。
女だけどかなり足が速い。
身軽なんだろうと思った。
しばらく走ると風見鶏が屋根に乗っている建物が見えてきた。
息苦しさか心臓が痛くなってきた。
胸を掴むような仕草をする。
女がその建物の中に駆け込んだ。
俺達も中に入ろうとする。
───足が止まった。
「ジルコン?」
縛られていく。物凄い力で。
「なんでもない」
無理矢理足を動かして中に入る。
中の広間に聖母マリアの像があった。
「ここ…は…?」
「聖院だ」
柱の影からさっきの女が出てきた。
短く切りそろわれた髪と静かで落ち着いた目をした女の子だった。
「~~っ」
苦しい。叫びだしそうだ。
「お前ら外から来たんだろう。何も、この街について知らないのか」
「そうなんだ」
トパーズが頷く。
痛い。痛い。
「この街は───」
女の子が話しかけたとき、とうとう膝をついてしまった。
「ジルコン?…!!」
「なんだ、ばてたのか?」
トパーズの袖を掴む。
「しっかりしろ!!ジルコン!!」
女の子の顔が急変して寄ってきた。
───そこで意識が途絶えた。
よろしくお願いします!