番外編 情報屋’s history 2
「───で、そこからはお前達の知っている通りだ」
「…情報屋…じょ、冗談聞きたかったわけじゃないんだぞ?」
「冗談?どうして?全部本当のことだ」
「マジで!?」
トパーズとジルコンが目を丸くした。
「ハハッ」
「ヘビーだな…」
フローが頭を掻いて言った。
「で?結局捕まえたのかよ」
ラリマーが手首を解す。
「これ、母上の髪紐」
「?あ、あぁ」
「健気な俺は犯人を捕まえるまでは髪を切らないと決意したわけです」
髪紐をほどいて全員に見せる。
「へぇ~~」
「さて、お客人。ご満足いただけたかな?」
肩より長く伸びた髪が風で揺れた。
風?どこから───。
ドアが開いて新しい風が吹いていた。
「誰が…」
取っ手を握って閉めようとすると目の端で金髪が揺れた。閉めかけていたドアを勢いよく開け放す。
「情報屋?どうし…」
ドアの前の金髪の男を凝視する。
「…あ、あの…何か御用ですか…」
目の前の男が弱々しく笑った。
「お久しぶりです」
ピクリと反応する。
忘れもしない。この声は───。
「オニキス・モスアゲート殿」
「…お前…」
「情報屋?出ていようか?」
トパーズが恐る恐るといったように聞いてきた。
「いや、俺が行く。ここにいてくれて構わないよ」
微笑んで廊下に出た。
────客室。
「…で?お前は誰だ?」
無闇に情報を与えないよう無表情で接する。
「覚えておいででないですか。私は7年前───」
必死で顔色が変わるのを堪える。
「あなたの両親を殺した者ですよ」
「…ふぅん?信用できないな」
「では証拠を」
「証拠?」
「お見苦しいですが…」
上の服を脱いでみせた。
僅かに瞳が揺れる。
「この傷、貴方につけられたらものですよ。貴方にも私がつけた傷があるはずですよ。肩に───」
思わず椅子から立ち上がった。
「貴様…!!」
「今日参りましたのは他でもない貴方にお詫びを申し上げに参りました」
「お詫び?お詫びだって!?」
命を奪ったことをただ詫びる。
そんな風に扱えるほどあの2人の命は、俺の中で軽くない。
「お詫びなんていい。さっさと刑場へ行け!!」
「警吏から手紙がきたでしょう?会いたいと言っている奴がいるって」
「それで?言い訳でもしに来たか。そんなもの聞きたくもない」
吐き捨てるように言うと男が目の前に膝をついた。
「でも聞いてください。私はあの時かなり生活がきつかったんです。当時のDマスターの土地税が高くてとても払えなくて…そんな時、貴方の家の話を聞いたんです」
「そんなの聞きたくないと言ったろう!!帰れ!!」
「私は死ぬ覚悟で行ったんです!!家族を守るためにはこれしかないと自分に言い聞かせて!!」
「正当化するつもりか!?」
「剣を片手に入った私にご両親は何と仰ったと思いますか!?」
その言葉に吐き出しかけていた詰り言葉を呑んだ。
よろしくお願いしますm(_ _)m