番外編 優しさと強さは一重に 4
泣きじゃくっていたので途中がどうだったかは覚えていない。
だけど、気がつくとコスモス畑の中に立っていた。
ふわりと咲いた花が揺れる。
「…コスモス…」
「ロードはコスモス好きだったろ?これ、今日咲いたんだ」
「…え…?」
「きっとロードがルビーを残していくのが悲しくて、だから代わりにコスモスを咲かせたんじゃない?」
1本の薄紅のコスモスが頭を垂れてきた。
「ロ、ロードが?」
「多分、そうだよ。泣かないでって。ね?」
「………っ」
「だからルビー、泣き止んで」
ふわりふわりと揺れるコスモスを見て、そうかもしれないと思った。
「うん…っ」
空を仰ぐ。大きく手を振った。
「バイバイ…ッロード…ッ」
強い風が吹いて花びらが舞う。
────この時に私はジルコンを好きになった。
立ち直れていないのに、なんとか私を慰めようとしてくれたことが素直に嬉しかった。
優しさをそっとくれた気がした。
悲しい中で誰かを慰める強さに、純粋に憧れたのかもしれない。
この後、ジルコンは武術と魔術をトパーズと共にターコイズさんのもとで習い始めた。
後から、トパーズが誘ってくれたとこっそり教えてくれた。
───開いていた窓を閉めて椅子を戻す。
テーブルの上のコスモスの花びらに微笑んだ。
「ね、祈ってようね。ジルコンはきっと無事に帰ってくるよね」
馬車が遠ざかっていく。
ジルコンが掛けてくれたお母さんの形見のペンダントを握りしめた。
待ってるよ。
「頑張ってね、ジルコン。大好きよ」
強く優しい貴方と手の甲に刻んだ約束に誓って───。
よろしくお願いしますm(_ _)m