1人目 3
「逃げろ...?」
「来る...早く...2人は...。だめだ...逃げろ...」
「はぁ!?よくわかんねぇ!!」
「ジルコン!!とりあえずここから出るぞ!!」
「お、おぅ!!」
情報屋を担いで窓から出ようとした。
「!!」
ひゅっと風の動いた気配に右に避ける。
矢の形をした物が壁に刺さった。
あれ。この魔力...は...。
「逃がさない。君達は」
バッと後ろを振り返った。
「なん...で...」
カツとブーツの音を鳴らして男が出てきた。
「スピネル...ッ」
「よかったよ、うまい具合に引っかかってくれて。君達をここに呼ばないと僕は君達を殺せない」
そうか。スピネルがDマスター。
気付かないわけだ。皆に同じ魔力がかかっているから、しかも強大な。もちろん情報屋にも。
魔力を人々にかけてそれで街に溶け込んでいた。
「なんで...情報屋を...っ」
「君達を殺した時、こいつがここに連れてきたことを誰かに話されたら困るからだよ。あと、気分?」
「............っなんだよそれっ...」
「じゃあ改めて自己紹介をしよう。僕の名前はサファイヤ。」
ガラス片がスピネル───サファイヤに集まりだす。
「サファイヤ・スピネル。鬼才の子だ」
ガラス片が飛んできた。
「っ!!」
結界を強くする。
ガラス片は結界で弾かせたが、結界にひびが入った。
「第1ステージクリア。じゃあ第2ステージ」
ガラス片が1つになって先が尖る。
「!!」
あれは結界じゃ防げない...!!
「これをクリアすればあとは第3ステージだけだ。健闘を祈る」
ガラス片の先がかなり細くなった。
あれで突かれたらどんなことになるか。
想像しただけで心臓が痛くなってきた。
ヒュッと速度をあげて飛んできた。
「うわっ」
慌てて避ける。
あれ、この動き...。まるで人が持って動かしているみたいだ。
ガチャンと棚の上の置物に肘があたった。
これ、鉄か!!
触れて魔力を流す。
剣にして構える。
再び飛んできた。
それに剣を押し当てて止める。
向こうが力を弱めて俺はバランスを崩した。
ガラス片が肩を切った。
血が垂れる。
「~~っ」
「あぁ、大変な所を切ってしまった」
サファイヤは楽しそうに笑った。
「くそ...」
たった少ししか戦ってないのにすげぇ疲れた。
サファイヤは左手を動かしている。
なんだ...?
血の出ている部分を押さえて荒い息をする。
「...っハッハァッ...」
周りを見るとガラス片が溶けている。
「!?」
ドロドロになった物を空中に浮かせるとサファイヤは俺に向かって投げた。
ぎりぎりでかわす。
それが幾つも幾つも飛んできた。
当たったらどうなるか、それはよくわからないけど...。
「チッちょこまかと」
小さく固まったガラス片が固まって足元に飛んできた。
「!!やっべ...」
後ろに飛ぶと服が(マント)ガラス片で壁に固定されてしまった。
「しまっ...!!」
怪我をしている方の肩に溶けたガラス片がどろりとかかった。
じゅうと焼ける音がする。
「熱っ...!!」
ズキンズキンと響くような痛みを感じ始めた。
パキンと音を立ててガラス片が固まる。
「これはいいところにあたった。早くそれ(・・)、取らないと心臓が動かなくなるぞ」
「くっそ...!!」
マントを引っ張ってガラス片から外す。
そのまま柱の裏に隠れた。
柱にガラス片があたって柱が崩れる。
「うおおい...」
走ろうとして固まった。
肩が...動かない...!!
ハッと我に返ってガラス片を避ける。
そのたんびに肩がギシギシと音を立てた。
その肩に触れると少し冷たくなっていた。
「............」
どうする。どうすればいい。
体の中で血が巡らない。
心臓に血がいかない。
苦しくなってきた。
「ハッ......ハッ......」
そうか。
逃げてばっかりいるからこっちが疲れるんだ。
周りを見る。
......蝋燭の火があった。
そこに向けて魔力を流す。
チラチラと火が揺れて天井をつたって俺の方へ動いた。
それを剣に巻きつける。
「............」
サファイヤは俺の方を見ているが、火に気付いていないのだろうか。
何も動かない。
パキンと瓦礫を踏んでサファイヤの前に出た。
「...やぁ。逃げるのはやめたのかい?」
「あぁ...」
「それじゃ、殺される覚悟ができたんだ。それはよかった」
サファイヤの前にガラス片が集まる。
また1つになるとピタリと動きが止まった。
「大人しく殺されろ」
風を切って飛んでくる。
パンと剣で弾く。
ガラス片が火で溶けた。
よし!!
剣の火をガラス片に纏わせてサファイヤに向かう。
サファイヤの表情が変わった。
「少しは...っ」
大きく振りかぶる。
「痛みってものを知れっ...!!」
ドンと背中に何かが刺さった。
よろしくお願いします!