Final life 5
「やれやれトパーズ、お前までもがそちらにつくとはな」
「うるさい、黙れ。自分の子供までもを己の復讐に利用するなんて最悪だな」
「仕方ないだろう。お前に最高最悪の死をプレゼントするとしたら、これが一番いいと思ったんだ」
トパーズが唇を噛んでガーネットを睨んだ。
「トパーズ、石を返しなさい」
トパーズの手の中でダイヤモンドが光った。
「あなたには、渡さない」
「…何?」
「俺は確かに一度友人を裏切ったが、再びあなたに手を貸そうとするほど」
トパーズがダイヤモンドを強く掴むと風が吹いた。
深く息を吸う。
「落ちぶれてはいない!!」
同じだと思った。
トパーズが俺に“俺を侮るなよ”と言った、あの時と。
猛々しい怒りを背に抱え、一点に注いでいる。
人が怒るということはこういうことなのだと改めて思う。
「そうか、ならば仕方がない」
言葉に反応して身構える。
俺の横を魔力が通り過ぎていった。
「うぁあ…っ!!」
「!?」
トパーズを振り返ると腕を押さえて痛みに耐えていた。
悲鳴をあげないように唇を固く閉じている。
「トパーズ!!」
「力ずくで奪うまでだ」
トパーズの腕が音をたてた。
ありえない方向に曲がる。
「ぐぁ…っ!!」
トパーズの手からダイヤモンドが落ちた。
ガーネットが石を引き寄せたのか、石がガーネットに向かう。
「…………っ」
石まで走って蹴りあげた。
空に向かって飛んでいくのを掴む。
降り立つとガーネットと目が合った。
冷たい、物を見るような目───。
背中に悪寒が走る。
「…………」
フワリとガーネットが笑った。
「何を…なさっているのです…。ジルコン・カーヴィン殿…。私があなたにかけた呪いをとくにはそれが必要不可欠なんですよ…。さぁ、石をこちらへお渡しなさい」
トクットクッと血が指先まで流れてくるのをようやく感じた。
そこで気がつく。
恐れている。あの目に怯えていたことに───。
「別に、ダイヤモンドを使ってお前に呪いをとかせればいいだけのことだ。みすみすお前に近付いて石を取られ寿命を縮めることはない」
「あぁ、あと10日でしたからねぇ。今日は残り5日ってところか」
「…………」
突然後ろからトパーズの声が聞こえた。
「ジルコン!!後ろ…!!」
「え?」
振り返ると土槍で体を貫かれた。
「あまりなめた事を言うなよ ジルコン・カーヴィン。 セントラルのDマスターが他4つの街のDマスターを統べているのは知っているだろう? あれらを統べるにはそれに伴う実力がな
>ければならないんだよ」
「……っ……っ」
いつの間にか後ろにいた?ついさっきまで俺の前に───。
「あぁ疑問に思ってらっしゃるのか。“俺の後ろになぜいるのか”と」
ガーネットが俺の顎を掴んだ。
「…………っ」
「セントラルの壁画が太陽を表しているのはこの街が光を司るからということはご存じでしょう? 光は目に映る物体を形作るという事もおわかりですね。 私はその光を捻じ曲げていただけのこと」
地面に血がしたたる。
「これを上に動かしたらどうなるか…あなたならわかりますね?」
土槍にガーネットが力を込めた。
やばい!!動かされたら…!!
ドンと音がして土槍で繋がれていた俺とガーネットが離された。
「っ!?」
「殺させない」
トパーズに体を引っ張られる。
「ジルコンをあなたに殺させはしない!!」
「トパーズ…腕は…」
「少し治癒使ったから複雑骨折から単純骨折ぐらいにはなったんじゃねぇか?」
「ルビー…は…」
「…巻き込みたくないから…家に入れた…」
「そっか…よかった…」
「大分抵抗されたけどな」
「だろうね…」
腹に刺さったままの土槍をぬく。
「…やばくなったら…じいさんが守ってくれるといいな…」
「バカ言うな。お前が守ってやれ」
「そうしたい」
息をつく。
ガーネットが無表情で俺達を見ていた。
何の感情も、うかがえない。
「…愛に狂った男ってやつ?」
トパーズが汗を浮かべて言った。
「あんな奴の血が流れるなんて信じたくねぇな」
ダイヤモンドをポケットに押し込む。
ガーネットが一歩踏み出してきてバリアをはった。
光が降ってきて煙がたつ。
バリアをといて飛び退くと地面から光の棘が突き出てきた。
光が弱まるのは闇に勝れない時だけだ。
でも魔力がある限り光は作れるし…。
「トパーズ、お前も中入っとけよ。その腕じゃ戦えないだろ」
「ご心配なくだんな様!!戦えますよ!!」
「誰だよ だんなって」
「お前に決まってんじゃん。カーヴィン家の当主!!」
「うち貴族じゃないんで!!」
光が飛んできてトパーズと離れた。
塀にぶつかってこげ臭い匂いをたてる。
トパーズがガーネットに光を投げたのが見えた。
鎖がガーネットの腕に巻きついて動けないようにするとトパーズが火花を散らした。
火花が届く前にガーネットが鎖を断った。
と思ったら消えた。
よろしくお願いします!