Final life 4
───── トパーズ ─────
剣を抜いて振りおろした。
「ジルコン!!」
剣の切っ先に誰か飛び込んでくる。
寸でのところで剣を止めた。
「ルビー」
「やめて!!やめてよ!!」
「どいて」
「やめてってば!!どうしてよ…っどうしてトパーズがジルコンを殺そうとするの!?なんでよりによってトパーズなの!?」
「ルビーどいて」
ルビーはどこうとしなかった。
ジルコンの上に覆いかぶさっている。
「私はジルコンが好きよ!!これしかないの!!他に変わることなんてない!!それじゃ駄目なの!?」
胸が小さく音をたてる。
「どうして…」
剣を持ち直すと音が鳴った。
「俺はお前の旅に一緒に行ってやったろう!!」
違う。行ってやったつもりなんてない。行きたかった。
「絶対に見捨てたりしなかっただろう!!」
これも違う。恩着せがましく言えるようなことではない。
当たり前のことだ。
じゃあ───俺は何が言いたい。
「トパーズ、何をしてる」
頭の片隅で光を受けて輝くダイヤモンドが見えた。
つい少し前までそれが欲しくて欲しくてたまらなかった。
「早く止めを刺…」
「黙れ」
父さん───ガーネットを睨む。
ポケットに入っているダイヤモンドを掴む。
「この下種が」
ポケットの中のダイヤモンドから光がほとばしるようにガーネットへ伸びた。
ガーネットが防ごうとして手を出すと、それより先に光が達してガーネットを吹っ飛ばした。
体のどこかで何かが外れた音がする。
その音を聞いてからフッと心身が軽くなった。
軽すぎてよろめいたほどだ。
「───…」
「…トパーズ…?」
ルビーが恐る恐るというように体を起こした。
「…………」
ジルコンの肩から降りて立ち上がる。
ジルコンは茫然とした顔で俺を見ていた。
その顔を見てニヤリと笑う。
「ジルコンちゃんったら、なんて顔してるの」
───── ジルコン ─────
一瞬目眩に襲われた。
あいつのすっとぼけた言葉による脱力感からだった。
「トパーズ、おま…」
「ルビーゴメンな剣の刃なんか向けて。怪我しなかった?あと、さっき俺が言った言葉無視してくれていいからさ」
「う、ううん」
「お前な…!!」
「はーいはいいつまで寝転んでんですかジルコンちゃんよ。ばっちいぜ、また師匠に怒られるぞ」
「うっせぁー!!トパーズちゃんは黙ってろ!!ほんと…」
視界が滲んで慌てて顔を隠す。
「まじ…っうっせぇ…っ」
トパーズの溜息をついた音が聞こえた。
「おら」
手をどかすとトパーズが手を差し出しているのが見えた。
涙が出たのはきっといつも通りのトパーズだったからで、決して心細かったのとか寂しかったのとかそういうのが埋まったからではない。
手を掴んで起き上がらせてもらう。
「ん」
パンパンとトパーズが体についた砂を払ってくれた。
「トパーズ」
「んー?」
肩を掴んでこっちを向かせる。
「一発殴らせろ」
「えっ…」
胸ぐらを掴んで腕を振り上げる。
「ちょっ…ジルコンそんなことしてる場合じゃ…!!」
「…………っ」
抱きつく。
「…ジルコン?」
「バ…カ野郎…っ俺がどんだけ…っどんだけ怖かったと思って…っ」
腕が震える。
怖かった。このままトパーズを失うんじゃないかと───。
「いなくならないって…っ言ったじゃないかよ…っ」
「…ゴメン…」
「絶っっっ対許さない。一生言ってやる」
「それはご勘弁を」
「───ジルコン、トパーズ…」
ルビーが袖を引っ張って言った。
「え?」
「…あいつ…」
ルビーの指した方を見るとしっかりした足取りでガーネットが歩いてきた。
よろしくお願いします!