運命の導く先は 3
そのまま家を出て人気のない場所まで走った。
その場にしゃがみこむ。
どうして どうして どうして どうして どうして
「やめろ!!出てくるな!!」
頭を抱え込んだ。
怖い。今までなんて比じゃない。
どうして どうして どうして どうして どうして
「違う!!消えろ!!」
どうすればこいつが俺の中からいなくなる。
以前はジルコンが俺の名を呼べば消えていた。
でも今は───。
体が震える。
一体俺はどうなってしまっているのだろう。
「トパーズ」
フッと瞬間黒い感情が消えた。
「ジ…」
声の主を見て顔が強張った。
───あいつだ。
さっきは顔は見えなかったけど直感でそう思った。
今は、見える。
笑ってはいるが、目の奥に何か冷たいものを持っているようだ。
少しずつ後ずさる。
一歩向こうが踏み出してきて身構えた。
「あぁ大丈夫、戦う気はないのでね。御身を傷つけるわけにはいくまい」
「は…?」
また黒い感情が渦巻いてきた。
唇を噛む。
「あんた…崖で…殺そうとしていたくせに…。落ちたとき、助けたよな…」
「そうだね」
ニコニコして言った。
手が震えている。
怯えているのか?
心の中で自分を嘲笑う。
「なんでだ…」
男と目が合う。思わず身を引いた。
「別にジルコン・カーヴィンがどうでもよかったんですがね」
フッと男が消える。
「っ!?」
男の手が後ろから伸びて俺の顎を掴んで持ち上げた。
男の顔が真横にくる。
「お前は生きて欲しいからね」
「~~っ」
手を払って男から離れる。
フゥとわざとらしく男が溜息をついた。
「それで仕方なく助けたんだ」
「なんで…俺に…」
男がその言葉にフフッと笑った。
「あぁ随分逞しくなった。もう十分だね」
「は…?」
「会いたかったよトパーズ。この瞬間を待ってたんだ」
男が俺に手を伸ばした。
───── ルビー ─────
ジルコンの顔を見つめていた。
生きてはいるがどこかこの夜の闇に消えてしまいそうだ。
「…生きてって…言ったじゃない…」
約束したでしょう?死にそうになったら逃げるって。
どうして逃げなかったの。
どうして逃げられなかったの。
どうしてこんなことになっちゃったの。
ポトリと涙が落ちた。
慌てて涙を拭う。
泣きたくない。まだ死んだわけじゃない。
「…ズ…」
「え?」
「ルビー…トパーズはどこ…」
「ジルコン」
「何!?ジルコン!?」
ターコイズさんが私の肩越しにジルコンを見る。
ジルコンが体を起こそうとするのを支える。
そのままジルコンがもたれてきた。
まだ完全に体に力が入るわけではないらしい。
「トパーズは…?」
「わ、わかんない。さっき出て行って…」
「…そっか…」
「…ジル。何があった」
ジルコンがターコイズさんの顔を見た。
ゆっくりジルコンが喋り始めた。
それが終わるとターコイズさんはフムと黙り込んだ。
「ジルに…言った方がええじゃろう…」
「…はい」
ジルコンに服をめくらせて“X”を見せる。
「これが…何を意味するかわかる…?」
そう言った時に声が震えてしまった。
ジルコンを見るとどうやら気付いてないふりをしてくれたようだ。
「あぁ…わかるよ…」
時計の秒針が“ⅩⅡ”をさしてボーンボーンと音をたてた。
刻印の数字が“ⅠⅩ”に変わった。
「俺があと生きられる日数だ」
ジルコンが静かに目を閉じた。
───── トパーズ ─────
「触るなっ」
男の手を振り払う。
「…なんだかお呼びでないみたいだな」
「そうだ!!この街から立ち去れ!!」
「───何故?私は職務を放棄するつもりはないよ」
───そうだ。こいつはセントラルのDマスターだった。
「それにね、お前が私をお呼びじゃなくとも私がお前をお呼びなんだよ」
「っ!?何…」
「どうしてルビーさんはお前に振り向かないんだろうねぇ。ジルコン・カーヴィンなんかよりずっといい男なのに」
ギクッとなる。
俺がルビーを好きだということがばれている。
「別に…」
「本当にそう思うか?」
ズイット顔を近づけてきた。
「な…」
「手に入れたいと思ったことはないか?狂おしいと感じるほど───」
「────…」
ある。ないなんて嘘でも言えなかった。
何度も何度もそう願って
「あるだろう?それで正しいんだよ」
「ち…がう…正しくは…」
「俺はお前の望みを叶えられる力を持ってるよ」
耳を塞ぎたい衝動に駆られる。
手を動かすとそれを掴まれた。
「叶えてあげようか。ジルコン・カーヴィンより強い力をお前に与えてあげる」
手を振りほどく。
「…あんた…誰…」
どうして俺にそんなことをしようとする。
何故、一体何の為に。
「私はセントラルのDマスター ガーネット・カルサイト」
その名を聞いて反応する。
「トパーズ・カルサイトの父親だ」
全身に雷が落ちたようだった。
「父…さん…」
ガーネット───父さんが手を伸ばす。
どうして今更、とか思うことはたくさんあった。
だけど訊くことができない。
「おいで、愛しい子よ」
腕の中に、ゆっくりと捕らえられた───。
よろしくお願いします!




