運命の導く先は 1
馬車が停まった。
「なんだ?」
まだセントラルには着いていない。
「すみませんお客様この先崖になってまして…。馬を休ませるのでその間に飯でも───」
「あ、わかりました」
馬車を降りて店に向かう。
「なんか前にもこんなことあったよな」
「あーあった。確かそこでアンバーに会ったんだよな」
「…あーそうだったそうだった。超怖かったよな」
「そうそう。まさかDマスターだったとは」
店に入った。
「───すみません」
男が馬を休ませている御者に声をかけた。
「はい、なんで…」
目の前にダイヤモンドがぶら下がった。
「お願いがあるんですが───」
店に入って少し早い昼食をゆっくりしていたころ、御者の人が呼びにきた。
「お待たせしましたー」
「はい」
金を払って外に出る。
「あ」
トパーズが下を向いて言った。
「どうした?」
「靴紐解けた。先行っといて」
「了解~」
中に乗り込んで深く背もたれにもたれる。
───と馬車が揺れて動き始めた。
「わっちょっ…」
トパーズがまだ乗ってない…っ!!
「あのっ止めてください!!」
御者からの返事がない。
聞こえないのか?
「止めてください!!」
ガクンと馬車が揺れて窓から外を見た。
崖が見えた。
少しでも馬車がずれれば落ちてしまうだろう。
コクリと喉が鳴った。
「すみません、止めてください!!」
崖の道が中間あたりにきた時に言った言葉だった。
不意に馬車のスピードが落ちて止まる。
安堵の溜息をついてから御者に文句を言おうと口を開いたらドアが開いた。
「え…」
御者の人に胸ぐらを掴まれる。
「え?」
馬車から引きずり降ろされた。
「離せ…何す…」
ドンと押される。
「え?」
ガクンと足場がなくなって落ち始めた。
「うわぁぁあ!!」
必死に蔓を伸ばしてなんとかぶら下がる。
崖に手をついて足場を作った。
肩で息をする。
上を見ると馬車が走っていくところだった。
何なんだ…新手の賊か?
「と…とにかくここを登らないと…」
崖に手をかける。
「本当になかなか死なないですね」
ゾクッと背中が冷えた。
この…声…は…。
後ろを振り返ると強く首を掴まれ岩壁に押し付けられる。
「うぁ…っ」
全然気付かなかった。声の主を見るとあの時と同じように顔が見えなかった。
「親に似て子までも私を苛立たせるのか」
「………っ!?」
「さっきのが最後のチャンスだったのに───。まぁいい苦しんで死ぬのがお好みらしい」
声が出ない。体が動かない。
「私が殺してあげるよ」
胸のあたりに手を置かれる。刻印の上───。
縛られる───。
「うぁぁぁぁあ…っ!!」
今までと違う苦しみだ。
1本ずつ棘が増えていくような───。
駄目だ、逃げなきゃ。
本当に殺される───。
「せめてもの情けで15年間あたえてやったのに…お前は自分で墓穴を掘ったんだよ」
だけど体が動かない。
立つことさえできなくなりそうだ。
「ジルコン!!」
トパーズの声が聞こえて目の端にトパーズが映る。
男の舌打ちをする音が聞こえた。
「意外と早くついたな…」
馬車が停まってトパーズが俺のところに滑り降りてきた。
「…な…」
来るな!!来ないでくれ!!
トパーズが蔓を離して降り立つ。
「ジルコン!!」
「あーあー…後少しなのに…」
男が俺を離した。
「お前…!!」
トパーズが男に近づく。
白く視界が閉ざされていく。
あぁ死ぬかな、俺。
もっと皆と一緒に生きたかったのに。
体が宙に浮いた。
よろしくお願いします!