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STONE LIFE  作者: 緋絽
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1人目 1

 

俺達は今、街の外れのもっともっと外れにある宿にいた。

本当は街中のいい宿に泊まっていたのだが、あいつが帰ってきて、しかもキャッツを殺したとなると───。

街の人間はあいつがキャッツを殺したなんて思いもしないだろう。

でも俺にはわかる。

あれは、あの魔力は間違いなくあいつの物だ。

情報屋から何も聞かれてなければ少なくとも今は安全だ。

もしかしたらキャッツに関わったということで何かされるかも───。

それは避けたい。

俺は俺の呪いを解ける奴を捜してるんだ。

むやみやたらと戦いたいわけじゃない。

「どうする?どうやって確かめる?」

「どうって...周りを探っていくしかないだろう」

「やっぱりか...」

トパーズが隣でがっくり肩を落とした。

結局いつかは接触しなきゃならない。

でももしかしたらそうならずに済む方法があるかもしれない。

できればそっちを選びたい...。

ギュッと拳を握った。

「ここにいても仕方ない、情報屋のところへ行こう」

「そうだな」


───── 礼拝堂 ─────

「あ」

情報屋を見つけた。

「情報屋!!お前に聞きたいことが...あ」

情報屋の傍に割と長い髪の青年がいて、俺達に気付くと笑って向こうへ行ってしまった。

「すまん、邪魔してしまったか」

「いや、大丈夫だ。他愛もない話をしていただけだから」

「そうか、あいつ、なんて名前だ?」

「...スピネル。元々この街に住んでいたんだが成人してか

ら国中を行ったり来たりしているんだ」

「へぇ。なかなかの色男だな」

「古いぞ」

「黙れ」

ペシッと頭を叩く。

「いってぇ!!」

情報屋の帽子が取れた。

パサッと髪が落ちてくる。といっても1つにくくっていたのを帽子の中に入れていたみたいだ。

「なっ髪長かったわけ!?」

「なんだよ、意外か?別に変じゃないだろ」

「切らないのか?」

「切ってもいいんだが...。今は長いほうが好きだな」

「ふーん」

「で?聞きたいこととは?」

「あぁ。...10年前、この街のDマスターってどこにいたか

わかるか?」

「あぁ、あの方なら...」

あの方!?

思わず情報屋を見つめる。

「なんだ?」

「いや...」

キャッツの時は“あいつ”だったのに。

ダイヤモンドと他の石の違いか...。

「いなかったと聞いた。ただその時は俺も小さかったからね、本当の事はわからない」

「...そうか...」

「気になるなら図書館のほうに行ってみるといい。あそこにはDマスターの歴史が記されている本があるはずだ。毎年書かれているから間違いないよ」

「10年も前のものが、残ってるだろうか」

「それはわからないな。抜けているかもしれない」

カラカラと笑いながら言った。

「それでも行ってみない価値はないと思うぞ」

「そうか、ありがとう」

「礼には及ばん。そうだな、確かなことを教えていないからな、30クロスでいいぞ」

「高いな」

「なんなら100クロスで」

「いや、30クロスでいいよ」

「そうか?」

払ってから情報屋と別れた。


───── 図書館 ─────

バサーと本が落ちてきた。

「うわーーー!!」

「ちょっと!!うるさいですよ!!」

「すみません...」

俺が今立っているのは図書館の中のDの棚の前。

意外に百何冊とあっていくつも棚が並んでいる。

そういえばDマスター制度は150年前に作られたんだっけ。

それから毎年ってことはもう150年は続いてるわけか。

「...気分が重くなってきた...」

もともとDマスターはそれぞれの地方に派遣された王の使いのはずだ。

その地方同士がいい具合に均等になるように。

それがいつの間にかDマスターが王を使いにしちゃってるんだからな。

フーと鼻で溜息を吐く。

この国はいつか終わるだろうな。

「あ」

これか。

かなり分厚い本を拾う。表面を払って表紙の文字を読んだ。

『13XX年 ストーンキングダム Dマスターの経過』

パラッとめくる。

「この年のあの日は...っと」

ピタッと手を止めた。

「ここだ...」

『13XX年 ○月○日   

Dマスター ハマーストーンウォールズ不在 

行先 セントラルストーンウォールズ 概要 ____』

“セントラルストーンウォールズ”

ドキンと鼓動が早鐘を打ち始める。

もしかしたら...。

概要の部分が空白だ。

何をしに行ったのか...。

「おいっジルコンッ早くしまえっ」

「あ、あぁ、ゴメン」

「............見つけたのか?」

「あぁ」

「なんて書いてあった」

カビ臭い本を数冊持って棚に押し込める。

ただ、あの本は机に置いた。

「...この街にはいなかった。行先はセントラルだ」

「!!それって...」

「可能性はかなりある。ただ、それを確かめる方法は1つしかない」

「...そうかぁ~...」

カタッと反対側で音がした。

「!?」

ひょいと向こう側を覗くとあの青年───スピネルが立っていた。

「───あ...」

「あ、どうも。よく会いますね」

「え~~っとスピネル...さん?」

「スピネルでいいです。あれでもどうして僕の名前を知ってるんですか?」

「あ...情報屋に聞いて...」

「あぁ、ペリドットに。あいつに個人情報を教えるのは少し控えようか」

くすくすと笑って言った。

「ペリドット?」

あいつ、名前は誰にも教えてないはずじゃ...。

まさか嘘か?

「あ、ペリドットというのは僕が勝手につけた彼の“名前”です。どうしたって教えてくれないし、“情報屋”は少し寂しいでしょう」

「あぁ!!」

ポンと手の平を叩く。

彼は机の上に載っている本にちらりと目をやると俺に視線を戻した。

「何か調べ物ですか?」

「あ...は、はい...」

話しても大丈夫だろうか。そっと本を後ろに隠す。

スピネルもいつか狙われてしまうかな。

「...街の歴史を調べるのが好きなんです...」

「へぇ。何か面白いことありました?」

「いや、本を見つけただけですから...」

「あぁ、“ダイヤモンド使い”?」

「!!」

「あの方達は、この国の歴史に大きく関わっていますからね。第一に調べだすのは素晴らしい考えだと思います」

「ありがとう」

「13XX年っていうと...約10年前か...」

「!!」

み...見られてるし...。まったく隠した意味がない。

溜息をついて本を前に持ち帰る。

「そうだ、10年前からDマスターになった人、当時の彼の年齢知ってますか?」

「いいえ...」

「13歳です」

「じゅうさ...っ!?」

「神の子だ、天才だと(はや)され、その通りその若さで前ハマーのDマスターを倒し見事現Dマスターになられました」

「...じゃあこの不在って今のDマスターではない...?」

「いえ、Dマスターになったのはこの日よりもう少し前なのでこの時、この不在はその天才の子で間違いありません」

「その...人の名前は...?」

スピネルはニッコリ笑った。

「サファイヤ、です」

「サファイヤ────」

「僕、彼と話したことありますよ」

「えっ」

「君もある」

どくんと心臓がなる。

「───え...」

「彼は素晴らしいよ、自分の身分を明かさずに街のことを把握してるんだ」

『───いた』

「まさか...!!」

トパーズが腕を掴んできた。

きっとトパーズも同じことを考えてる。

「おかげで街は、休むことなく起動している。失業者が少ないわけだよ」

『いなかったと聞いた』

情報屋───!!



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