3人目 14
───── ジルコン ─────
「ま、まだか?」
「多分…あと少し…っ」
「くそ……」
魔力を感じるから生きてはいる。
だけど弱い。
さっきの方がまだよかった。
トパーズらしからぬ重さでも、確かな生命力を感じられる方がいい。
氷の逆流が終わった。
「!!」
「おっ終わったぞジルコン」
壁を所構わず破壊して栓を作る。
「これで栓してくれ!!俺は先に行く!!」
「あっおい!!」
通路を戻って来た道を走る。
あの廊下につくと2人の姿はなかった。
どこに…。
落ち着け。耳を澄ませろ。
体の中に激しい鼓動の音が響く。
焦る。
怖いのだ。もし、親だけじゃなくトパーズまで失ったらどうすればいい。
俺のせいでトパーズが死んだら、俺は…。
気持ち悪い。一歩一歩が遅く感じる。
ドンと音がした。
ためらわずにそこに向かって走る。
道順はほとんど覚えてない。無我夢中で音に向かって走ると一番端にある部屋だとわかった。
駆け込むと氷に体を貫かれたトパーズと腹に風穴を開けた『俺』の顔をした奴がいた。
アンバーのいないことに違和感を感じたがそれよりトパーズのことが大事だった。
「トパーズ!!」
俺の声を聞いてトパーズが振り返って微笑んだ。
安堵しかけて息を飲む。
まだ終わってない。
トパーズと『俺』が何か喋るとバチッと音がして『俺』が倒れた。
ジジッと火花が走る。
トパーズが氷から体を抜くとよろめいた。
這うようにして『俺』に近付く。
さっきまで聞こえなかった声が、今は鮮明に聞こえた。
「…今から…お前を殺すぞ…」
どこか深い胸の奥が小さく鳴った。
「トパーズ!!やめろ!!」
トパーズと目が合う。
───それ以上何も言えなかった。
さっきまでの強さは感じないのに、どこかに相手を威圧するような雰囲気があった。
俺は初めてトパーズのことをわからないと思った。
初めてあいつを掴みあぐねた。
「さよなら、『ジルコン』」
ビクッと反応してトパーズの顔を見る。
『俺』が火に包まれた。
俺は動けずにただそれを見ていた。
火が消えると『俺』が倒れていた場所にアンバーが倒れていた。
「───え…?」
「…殺したからな、俺の勝ちだ」
「お…前…一体…何者…」
「別に…ただの…一市民だ……」
トパーズがアンバーの耳からダイヤモンドのピアスを取った。
それを持って俺の方に歩いてきた。
「───トパーズ…」
俺の声にトパーズが顔をあげた。
さらに一歩踏み出して崩れるようにして倒れた。
「!!トパーズ!!」
駆け寄って抱き起こすとダイヤモンドを渡された。
「…………」
「何?」
声が小さくて聞こえなかったから耳を近づける。
「うわ…お前ってまじ嫌な奴だな…」
「は?」
拍子抜けした。
「お前いつもこれぐらい怪我しても平気で突っ立ってんじゃん…っなのに俺は倒れるとか…まじ最悪」
「バッカお前俺とお前を一緒にすんなよ。俺には才能があんだよ」
「…あっそ…」
「ちょっと待ってろ、今医者呼んでくるから」
「いや医者に連れていこうぜ、そこは」
「え、だって…」
「俺は歩けるから。行こう」
「…………」
手をあげて傷口を叩くふりをする。
「馬鹿。やめろお前っ…ってぇ…」
身を捩ったトパーズが顔をしかめた。
「ほら見ろ!!ちょっと動いただけで痛ぇくせに!!」
「…わかった。言い方を変えよう。…俺…早く治療うけたい」
「OK。了解」
トパーズの肩に腕を回して立ち上がらせる。
腰にも手をかけた。
「もうちょっともたれてもいいから、楽な格好しろ」
トパーズが両手を伸ばした。
「ジルコン~俺抱っこがいい~」
「よ~しちょっと待ってな」
一度指を鳴らしてからトパーズの足の裏に手を入れる。
「うわっ本気にとんなよっ」
「こ~んな時に冗談言えるはずないもんね。トパーズちゃんはそんな子じゃないもんね」
「嫌だー!!」
「大丈夫よきっと運んであげる」
「………何してんの」
声のした方を見るとラリマーが息をきらして呆れた顔をしながら見ていた。
よろしくお願いします!