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STONE LIFE  作者: 緋絽
32/65

3人目 11

───── トパーズ ─────

床に手を置き魔力を流す。

地が揺れて床がひび割れる。

残骸を集めて一気に『俺』に飛ばした。

『俺』の皮膚を裂き白に目に沁みるような赤が浮く。

血の色でさえ鮮やかだ。

『俺』は避けようとしない。

何か策でもあるのか?

バキッと大きな音がして周りを見ると床が『俺』を中心に凍っていた。

瞬時に体を浮かせる。

けれど氷が足に絡みついてきた。

「!!」

『俺』が残骸を集めて俺に飛ばした。

逃げられない───。

バリアをはるとそれを突き破って残骸が飛んできた。

くそ…力の差か…!!

炎の矢を飛ばす。

『俺』がそれを肩に受けた。

気味が悪い。

何故避けようとしない?

血で服を染めながら何故笑っていられる?

苛々する。

まるで───。

そこまで考えて我に返る。

まるでジルコンのようだ。

氷の矢が飛んできて肩に受ける。

「う…っ」

血が滴り落ちた。

そうだ。

こいつはジルコンに似てるんだ。

両親を殺され本来なら避けてもいいはずの苦しい道を選んだ。

それは険しく必ず血を流さずにはいられないのに。

ズキッと肩が痛む。

その強さはどこからくるのか。

もし俺がその立場なら自分の不運さを嘆くしかできなかったかもしれない。

つくづく驚かされる。

───だからこそ惹かれた。

その強さに憧れた。

“俺が何かの罪を償うための罰じゃないなら…っこれは一体…っなんなんだよ…!!”

強さの裏側で垣間見る脆さに気付いてからもその気持ちは変わらなかった。

その者の幸せを願うほど

「…くっ…」

矢を引き抜く。

光を降らせる。

地面に光が落ちるとそこが凹んで焦げ臭い匂いをたてた。

───変わらないのに…

変わってはいないのに時々黒い感情が頭をもたげる。

それが何故なのかどういうものなのかわからない。

抑え込めずにどうすればいいのかわからずに立ち竦んでいたこともある。

───けれどジルコンが振り返って俺の名を呼べばいつの間にか

そのとぐろを巻いていた感情は消えていた。

決めたんだ。

お前の傍でお前が幸せになるのを見届けることを。

決めたんだ。

幸せへの道を俺も共に登ることを。

1人で立ち向かわせることなんてしない。

俺が標を見つけてやる。

氷が降ってきて服が血で染まる。

「う…」

クラクラする。

この血だ。無理もない。しかも段々空気が冷えていっている。

これほど怖いものはないな。

体温を奪われると体力まで奪われる。

厄介だ。

何より向こうはいくら血を流しても平気ってところが厄介だ。

自分の魔法では自身の損失はほぼない。

てことは向こうは俺と違って凍えていかない。

俺の方が今の時点で死に近い。

じゃあ逆の場合では?

空気を爆発させて炎をあげると一気に温度が高くなった。

「!!」

「へっ氷のお前に相応しい死に場所だ」

氷が溶ければ奴は死ぬ。

その者の温もりが消え、体が動かなくなり、言葉も発せられなくなる。

死とはそういうものだ。

当たり前だが、怖いものだ。

パキッと炎が凍った。

「しまっ…」

そのまま氷がぶつかってきて軽く吹っ飛ばされる。

くっそ揺らいだ…!!

『俺』に灯っていた炎も凍って床に落ちた。

「う…」

俺は再び塵を集めて剣を作って斬りかかった。

今度は『俺』は避けて氷で剣を作ると同じように斬りかかってきた。

避けて剣をぶつけ合う。

気付いたことがある。

俺と『俺』の戦い方がまったく同じであること───。

つまり一番初めにしかけてこなかったのはこのためだったってことか。

俺があいつを壊そうとすれば、あいつも俺を壊そうとする。

俺が矢をうてばあいつも矢をうつ。

避けなかったのは同じ攻撃を俺にもくらわせるため。

避けようとしたら、避けられないようにして───。

唇を強く噛むと血の味がした。

視界が歪んで膝をつく。

かろうじて倒れるのは堪えた。

体中の鈍痛が響くように体中を巡った。

そんなに動いたわけじゃないのに目眩がするのは出血の量のせいか。

立ちあがって『俺』を見るとふらつくこともなく笑っていた。

力の差───。

まざまざと見せつけられた気がして奥歯を噛みしめる。

凍えて震えている指を握りしめ真っ直ぐ『俺』を見た。

笑っている『俺』から笑みが消える。

ざわりと血が蠢いた。

よろしくお願いします!

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