3人目 9
───── トパーズ ─────
「───さてあっちの坊ちゃんがいなくなったってことは俺の相手はお前さんかい?」
「そういうことだな」
「賢い選択だ。弱点を知っている俺とあの坊ちゃんではやりあえん」
「…まぁそういうことになる」
水をわざわざ館の傍で流しているってことは、必ずしも力が強いとは限らないわけだ。
てことは…ジルコンが水を止めてくれれば勝機はある!!
「あーはいはいそういうのやめようぜ」
「え?」
「俺、嫌いなんだよね。頭で考えて動くの」
「知らねぇよ」
ククッと含むようにアンバーが笑った。
「いいねぇ。巻き込まれないように虚勢をはるのがいいね。好きだぜ、そういうの」
「うるさい」
嘘を吐いた。
いくらこいつがジルコンの弱点を知ってても、きっとジルコンは戦えたろう。
痛みに耐え、体を血に染め戦っただろう。
でも。
それでは意味がない。
あいつは自分のことだけを考えればいい。
人を守るなんてことに囚われず、自分が生きることにだけ執着してくれればいい。
溜息をつく。
頼むからなるべく早く倒させてくれな。
あいつから俺を守るという概念を消すために。
「ゲームしようぜ」
「ゲーム?」
「これからある場所に行く。そこでゲームしようぜ」
「…何をするんだ?」
「それはそこへ行ってから説明する」
「…OK、のった」
「そうこなくちゃな」
───アンバーに付いて行くと1つの大きな広間に通された。
床も壁もすべてが白く、果てのない場所に立たされたような印象を受ける。
「俺はこれから氷であるものを作り上げる。それを倒せたらお前の勝ちだ」
キョトンとしてしまった。
「…それだけ?」
「それだけ」
あまりに簡単で拍子抜けてしまう。
まぁいい。
気を抜いたら戦えない。
束の間目を閉じる。
「じゃあ行くぜ」
アンバーの声で目を開けた。
───── アンバー ─────
「じゃあ行くぜ」
そう言ってトパーズの顔を見た。
瞬間驚いてしまった。
なんだこの目───。
まるで何者をも従える、そうこのDマスターでさえ従えそうな強い目だった。
「どうした?」
その目のまま俺を見る。
「あ、いや───」
舌打ちして氷で物を作る。
こいつの目は生まれながらにして人を従えることを知っている目だ。
さっきまでそんなもの微塵も感じなかったのに。
胸くそ悪い。
「嫌になるね」
「は?」
「いいや。さぁできた」
できあがった氷の形を見てトパーズが目を見開いた。
「…俺…?」
「その通り。こいつは喋るぜ自分の意思を持ってな」
「そんなこと、ありえない!!」
驚愕した顔で俺に食いかかってきた。
そうだ。ずっとその顔をしてろ。
許せない。
この俺が怯むなんて許さない。
「なんだよ。惑わされないように気をつければいいだろ」
「…っ最後に聞く」
「何だ?」
「王宮から俺達を捕まえるように命令が下ってるんだろう。───何故氷に閉ざしたまま連れていかなかった?」
「そりゃ愚問だな。2人もDマスターを倒した奴を捕まえたんだぜ。お手並み拝見したいじゃねぇか」
この口調。やっぱり苛立つ。
まるで話し方が違うじゃねぇか。
「…ふーん。なるほどね」
トパーズが俺から目線を外した。
唇を舐める。
「もういいか?始めるぞ」
手の先に魔力を集める。
魔力を氷に向かって投げると爆発が起きた。
よろしくお願いします!