3人目 4
───── 金鉱 ─────
陰に隠れて中を窺う。
中で人が倒れた。
けどよろよろと立ちあがる。
「見たか?」
「え…何を…?」
「あいつもう限界きてるぞ」
再びその人を見るとまた倒れては立ち上がっていた。
「…………」
思わすゾッとして身を引いた。
その人は頬が痩せこけてまるで骸骨のようで、はっきり言って恐ろしかった。
傍には見張り役がいるがそいつが何も言わなくても立ち上がり、働こうとしている。
「…ダイヤモンド…」
「俺の親父もここで死んだ」
ラリマーを見ると色々と複雑な顔をしていた。
「俺だけじゃない、ジャスパーもアゲートもフェナもカイトの親だって皆、ここで死んでるんだ!!」
「…………あ…」
何も言えそうになくて、仕方なくまた中を覗くとあの人がまた倒れていた。
けれどもう二度と立ち上がることはなかった。
亡骸を見張りが抱えると外の堀に投げ入れた。
「行こう」
トパーズが俺とラリマーの肩を叩いて言った。
わりと金鉱から離れた頃、声をかけられた。
「セレスタインじゃねーか!!おっヘリオドールも!!」
ビクッとなってそっちを見ると向こうからトルコが手を振って走ってきた。
「…トルコ…」
今会いたくない奴に出会ってしまった…。
「丁度よかった!!今協会に行ったら宗教の勧誘のためか知んねぇけど十字架貰っちまってよぉ!!」
ギクッとなって思わず指を握りこむ。
両親の教会や聖院に入れないのだから十字架を身につけられるはずがない。
「そ、そうなんだ!!」
トパーズが俺とトパーズの間に立って慌てたように言った。
「そうなんだよ~!!3つあるからさ、2つ貰ってくんねぇ?」
「いや…俺達はいいよ…」
「そう言わずに!!ほい!!」
トパーズに1つ渡すとトパーズを押しのけて俺に押しつけた。
途端に苦しくなる。
顔が青ざめてるのがわかったのかトパーズが俺から十字架を取ると自分のポケットに入れた。
「ありがとう!!じゃあ…」
「俺今暇なんだよね。どっかで喋らねぇ?」
近くに清いものがある。
駄目だ。苦しむな。
今こいつの前で倒れたりしちゃ駄目だ。
「セレスタイン?どうした…」
ラリマーが俺の異変に気づいて俺の肩を掴んで言った。
「おっ俺っ腹痛い!!というわけでトイレ行ってくる!!」
「えっ…」
ラリマーの手を振り切って走りだす。
「セレスタイン!?」
少し離れるとすぐに楽になった。
それでも走り続けた。
少しでもあいつから離れたくて───。
「お兄ちゃんだ!!」
ビクッと体を竦ませる。
声のした方を見るとジャスパー達が食物の入った紙袋を持って走ってきていた。
「あぁ…」
「何してんだよ。隠れ家にいるんじゃねーの?」
「ちょっと…外に出たんだ」
「ふーん」
アゲートが訝しげに俺を見た。
「ラリマーともう1人は?ヘリオドールさん」
「さっきまで一緒にいたんだけど…はぐれたんだ」
「そりゃ大変だね。僕らも捜すよ」
ジャスパーが大きな紙袋を持ち直して言った。
「いや…いいよ」
指を鳴らすと指先から光が出て空へ伸びていった。
「すげぇ!!」
「光が使えるの!?」
フェナとカイトが声を揃えて言った。
「まぁ…。使えないのか?」
「この街に住む奴は全員ほぼ水しか使えないんだ。だからラリマーはすごいんだよ」
ジャスパーが誇らしげに胸を反らした。
「へぇ。あいつは火と水が使えるのか?」
「そう!!」
ごめんなさい。どの属性も使えます。
「ジ…セレスタイン!!」
「おーい!!」
向こうからトパーズとラリマーが走ってきた。
光を消す。
「なんなんだよ…トイレ終わったのか?」
「スッキリしました!!」
「子供か!!」
トパーズが俺を見て安堵の表情を見せた。
ポケットを叩いて捨てたことを俺に伝えると俺の傍まで歩いてきた。
「こいつ絶対罰あたるぜ」
ラリマーがトパーズを指さして言った。
「なんで?」
「お前追いかけてる途中にあった溝に十字架投げ捨てたんだぜ!?よくそんなことができるよな!!」
「仕方ないだろ、いらないんだから」
苦笑してトパーズも俺を見て舌を出した。
「じゃあ帰るか。お前ら隠れ家に泊まれば?宿とってないんだ
ろ?」
「ああ。そうさせてくれ」
歩きだす。
トパーズにしか聞こえないほどの小さい声で喋る。
「なぁ、ありがとうな」
「何が?」
「いや…さっきトパーズが十字架取ってくんなかったらどうなってたか…」
「あぁそれか。いつものことだろ」
「そうだけど、さ」
「…ジルコン…」
「んー?」
「帰ったらもう少しDマスターのこと聞こうぜ」
「あぁ」
「ていうかな?ラリマーもあの後トルコから十字架貰ったんだぜ」
「へぇ!!じゃあラリマーは大事にしまってんだ!!」
「そう。だからあんまりラリマーには近づくなよ」
「ヘーイ。了解しましたぁー!!」
「おーい2人共!!早く来い!!」
「ごめんごめん」
よろしくお願いします!