帰郷 5
───── トパーズ ──────
「ルビー?おーい」
変だなどこにもいない。
この家広いからなー。階段2つあるし、入れ違いになったかな。
「夕飯の仕度しないなら俺がしようと思ったのに…」
まぁいいや。部屋見ていなかったら下に戻ろう。
「ルビー?部屋にいるのか?」
ノックする。返事はない。寝てるとか?
「入るぞー」
ドアを開けて中に入った。
「いない…入れ違いになったか」
部屋を出ようとして目の隅にある物を捉えた。
そこまで歩いてある物を取る。
「これ…」
ジルコンがルビーに渡しそびれた…。
フッと笑う。
よかった渡せたんだ。ったくジルコンは奥手なんだから。
あいつには幸せになってほしい。…だから…早くくっつけ。
簪を握って額にあてる。
「…っルビー…」
搾り出した声は小さく揺れていた。
その頼りなさにゾッとする。
机に簪を置く。
馬鹿か俺は。拳で自分を軽く殴る。
情けないな。あいつには幸せになってほしいんだろ。想いは捨てるんだ。
溜息をついてルビーの部屋を出た。
───── 翌日 ─────
朝からインカローズがやって来てトパーズに纏わりついていた。
「あいつ、よっぽどお前のこと好きなんだな」
「さらっと言うなよ。どうすりゃいいんだ」
「さぁなぁ」
「トパーズッ帰ってきてたなら言ってくれればよかったのにー!!」
「わーかったって!!悪かったよ!!」
こいつら結構お似合いなのにな。
「せっかく来てくれて悪いけどな、インカローズ。俺達今日でまた旅に出るんだよ」
「えーー!!」
「またなインカローズ」
ヨレヨレになってトパーズが傍に来た。
「ナイスファイト」
「馬鹿ジルコン。奥手なシャイボーイめ」
「うっせ」
馬車に荷物を積んでから教会へ行った。
「…行ってくるよ父さん、母さん」
必ず呪いをといて生きて帰ってくるから。
教会から俺を包むような風が吹いた。
じいさんは俺に体に気をつけろと言った。
「できれば次の土産は酒以外でよろしく頼むぞ」
「了解」
ブハハと笑うと俺に指輪を渡した。
「お前の瞳と同じ色をした石で作った物じゃ。御守りとして大事にせい」
「ヘーイ」
「じゃあの」
「あぁ」
「ジルコン」
「うん?」
ルビーが笑って頭につけているのを見せた。
「可愛いね、ありがとう」
「いえいえ別に」
「次は照れずに渡してね」
「…頑張ります」
ルビーが俺に向かって手を伸ばして、手の甲を見せた。
「…?何?」
「もう一度誓って、ジルコン。お願い」
「…えぇ~~」
「生きて帰るって誓ってよ、お願いだから」
「…………」
頭を掻いてルビーの手を取る。少し躊躇ってから手の甲にキスをした。
「生きて帰ることを誓う、お前に懸けて」
「…うん。よしっ」
「ったく変なことさせるなよ。照れるだろ」
「だって…。次は私も医者免許取って待っとくから!!頑張ってね!!」
「おう!!…」
少し屈んでルビーの耳元で囁く。
「すべて終わったら、言いたいことがあるんだ」
「え…?」
「待ってて、ルビー」
「…うん」
インカローズに引っ付かれていたトパーズを助けて馬車に乗り込んだ。
外で笑っているルビーを見て笑う。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい!!」
トパーズが言った。
「アクアストーンウォールズまで」
馬車が動き出した。
───── 王宮 ─────
「サファイヤとラピスラズリが警備に捕まったそうですね」
「はい」
「ダイヤモンドはどこへ?」
「ただいま捜索中です…」
「そうですか…」
「はい」
「早く見つけてくださいね。Dマスターが2人も欠落していては大変ですから」
「はっ!!」
男が部屋から出ていった。
「しかし…彼らがやられるとは一体…」
空を仰いで男が笑った。
「彼らに訊いてみましょうかね」
───その手の甲に「D」と刻まれていた。
よろしくお願いします!