帰郷 4
───── ルビー ─────
私は小物を見て満足すると立ち上がってジルコンを探した。
どこにいるって言ったっけ…。
まぁいっか。ここにいれば来るだろうし。
その店の傍で立っているとその店の主人が声をかけてきた。
「お嬢さん、買ってくんない?」
「すいませんお金ないの」
ジルコンが持ってこなくていいって言ってたし。
特に欲しいのも見つからないし…。
「なんだよそれ。見るだけ見て帰るのかよ」
「え…」
「あんたが座ってたせいで帰っちゃった人もいるんだからさぁ」
「そんな事言われたって…」
どうしよう変ないちゃもんつけられてる。
ここから離れたほうが…、あ、でもこんな人ごみに混じったらジルコンとはぐれちゃう。
「損した分お嬢さんが払ってよー」
「む…無理です!!私、払えません!!」
「はぁー?」
店主が顔を近づけて睨んできた。
「何それ、営業妨害されたのさぁ。普通ここは金払うところじゃねーの?」
「そんな…」
うひー!!どうしよう店主の顔めちゃめちゃ怖い!!
「お…お金持ってないし…」
「なら連れいたじゃん。そいつに払わせろよ」
「むっ…無理で…っ」
「払わねぇとか言うんじゃねぇよなぁ!?」
体を竦ませる。
こ、怖い…!!
「は、らえませ…」
涙が出てきた。
やだ!!絶対泣きたくない!!
「泣いたって駄目だからー!!むしろ泣きたいのこっちなんですけどー?何、なめてんの?泣いたら許してもらえるとか思ってんの?」
「ち…が…」
駄目だ。泣き…そ…
後ろから手が伸びて私の顔を隠すように誰かが抱きしめた。
丁度その瞬間に涙が零れる。
「何?おっさん女泣かして楽しんでんの?」
「な…っ」
この声…ジルコンだ…。
「…ひっ…ぅ…っ」
ジルコンの胸にしがみつく。
「お前この女の連れだよなぁ!!ならさっさと金払ってくんねぇ!?こいつのせいで損したぶん…」
「いや大丈夫だから。おっさんの店で物買う人なんていないから。よかったね損なんかしてないよー」
「てめっおちょくってんのか…」
「おちょくってるわけないじゃん。本気だよ本気」
ジルコンが店主の胸ぐらを掴んで引っ張った。
「この店見てたのついでだからだしね。つーかまじで心配しなくていいよ、誰もあんたの店で物買おうとか思わないから」
「この…っ」
店主がジルコンが拳を振り上げた。
「何殴んの?いーよ殴って俺も殴るから100倍返しで」
「…………っ」
「てか魔術使うぞこら」
ジルコンが土を盛り上げて球体にするとぶつけるぞと言わんばかりに威嚇した。
「くそ…」
手を下ろすと店の奥に引っ込んでいった。
「…ひっ…ひぅ…っぅ…っ」
ジルコンが私を引っ張って歩き出した。
「ほら行こうぜルビー。せっかく楽しかったのに気分害したぜ
」
それから近くの海がよく見える丘に行った。
私はまだ泣き止むことができておらずずっとしゃくりあげていた。
「…悪かったよ…1人にして!!」
「ぅ…っひ…っ」
「な…泣くなよー!!そんなに怖かったのか」
ゆるく抱きしめられる。
「だって…っ」
「…………」
ジルコンが溜息をつくと私の耳の上に何か挿した。
シャランと音がしてそれを触る。
「…お土産!!綺麗な簪だよ!!」
「…あったの…?」
「…………うん」
「なんですぐくれなかったの?」
「だってなんか恥ずかしかったんだよ!!こんなの誰にもあげたことないから…」
「………ありがとう」
「ん…」
「と、とってみてもいい?」
「いいけど…やっぱ駄目帰ってからにして」
「え、なんで?」
「今見られるのすごい恥ずかしいから!!」
「見たいー!!」
「もういいじゃん!!別の店見に行こうぜ」
赤くなってジルコンが言った。
「あーいいや、もう」
「なんで?別にいいよ遠慮すんな」
「してないよ。これで十分だから、だからもういらないの」
「…そっか…」
ジルコンが私の顔を見て笑った。
「なぁルビー」
「何?」
私の髪を一房引き寄せて小さく呟く。
「似合ってるよ」
「え…」
「さて、帰るか!!」
「ま、待って!!もう1回!!」
「なんのことですかー何も覚えてませんー」
「もうっジルコン!!」
秋の風が2人の間を通り抜けていった。
───── 家 ─────
家に帰って部屋に戻ると簪を取って見てみた。
『綺麗な簪だよ!!』
赤いバラ。私の髪に似合うのを見つけてくれたんだ。
「ありがとうジルコン…」
机の上に置く。
「さてっ夕飯の仕度しようっと」
部屋から出てキッチンへ向かった。
あんな行動ができるんですね!!ジルコン!!