帰郷 1
馬車の窓から見える景色を眺めていた。
「もうすぐか…」
ファイヤーストーンウォールズを出発して2日、馬車に揺られ
セントラルに戻るのをどれだけ心待ちにしていたことだろう。
「約半年ぶりだな」
「あぁ」
「早くルビーに会いたいな、ルビーに。なぁジルコン?」
「二度も言うな二度も」
「でもそう思ってんだろ?」
「…まぁ…」
結局呪いをかけた奴の正体は教えてくれなかった。
ラピスラズリにはダイヤモンドで逃げ出したり暴走したりしないように魔法をかけてきたし大丈夫だろ。
礼拝堂の前を通りかかって心臓が苦しくなった。
「っ…」
早く、呪いをときたい。
「土産もあるしな───。じいさんにはハマーで情報屋に貰った酒で…」
『これ持っていけ。家の奥で見つけた物だが、多分、いいやつだから』
…まぁ平気だろ。
「ルビーにはお前が買ったんだもんなー」
ニヤニヤと笑って肩を抱いて言った。
「茶化すな!!」
ルビーにはファイヤーストーンウォールズで見つけた簪がある。
ファイヤーの街で有名な燃えるように赤い石で作られた、綺麗な簪だ。
白い羽の先に赤い石で作られたバラが付いていてそこから下に向かって石がつながっている。
きっとルビーの赤毛によく似合う。
綺麗な赤い髪に。
馬車が停まった。
「お客さんつきましたよ」
「ありがとう」
金を払ってトパーズと降りた。
「ジルコン!!トパーズ!!」
「ルビー」
ルビーが走ってきてトパーズに抱きついた。
「おかえりなさい!!」
「ただいまルビー」
ルビーがトパーズから離れて俺に手を伸ばした。
抱きつこうとしてためらうように止まった。
「なんだよ、俺は帰ってきたのに嬉しくないってか」
「違うわよ!!ただ…なんとなく止まっちゃっただけ」
「ふーん」
ルビーの胸にぶら下がっている母さんの形見のペンダントを見て微笑む。
ルビーの頭を撫でた。
「何よ」
「べっつにぃー」
「…おかえりなさいジルコン」
「おう、ただいま!!」
家に帰るとじいさんが椅子に座って茶を飲みながら待っていた。
「ただいまじいさん」
「おかえりジル。疲れたじゃろう」
「いやそんなでもないよ」
「そうか…」
じいさんが立ち上がって俺の傍まで来ると抱きしめた。
「っ!?何するんだよ気持ち悪いな!!」
「労わっとるんじゃ!!…痩せたの」
「………まぁね」
久々のじいさんの温もりに肩の力を抜く。
父さん達の眠る教会へ行った。
「ただいま…父さん、母さん…」
呪いはとけてないけど俺は生きてるよ。
「…………」
教会の中に一歩足を踏み入れる。
すぐに苦しくなって足を戻した。
「…ちぇ…やっぱ駄目か…」
顔をあげて教会に向かって拳を伸ばした。
「絶対呪いをといて、そこまで行くから!!待ってろ父さん、母さん」
「ジルコーン!!ご飯準備できたよー!!」
後ろからルビーの呼ぶ声がして振り向いた。
「今行く!!」
なんか…最終話みたい...!!違いますよー!!