2人目 5
「う...」
目が覚めた。
頭がずきずきする。
頭の中で何かが蠢いているような不快感───。
「ジルコンッ」
トパーズの声が聞こえてそっちに顔を向ける。
「よかった...目が覚めたんだな...。死んだかと思って...」
「え...なんで...」
周りに明かりがなく真っ暗でトパーズの顔がよく見えない。
「倒れた時目を開けて魂が抜けたみたいだったから...」
「あの時はなんか...」
体をトパーズの方に向けようと思って体が動かないことに気付いた。
「ん?」
「どうした?」
「体が動かない」
いや。正確には手足を何かで縛られてる。
腕を自分に寄せようとして何かで腕を擦った。
チクリと痛んでその痛みは腕に広がった。
手足を広げるように縛られている。
「お前は?動くか?」
少しトパーズの身動きをする音が聞こえた。
「駄目だ。手足を縛られてる」
「俺もだ」
腕から何かが滴る。
地面に落ちた音がした。
多分、俺の血だろう。
「~~っ」
急に目の前が明るくなって一瞬目を細める。
「目が覚めたのね、よかった」
ラピスラズリがフフと笑いながら戸を潜ってきた。
「魔力の小さい者はあれで死んでしまうから」
「...何がよかっただ。お前がしたくせに」
「そう、ね...」
手が伸びて俺の顎を持ち上げた。
思わず身震いする。
「...ットパーズにも...っ同じ事をしたのか...」
「そうよ」
手で触れられただけなのに刃物を突き付けられている気分だ。
「こうして生き残ったのだから、少しは私を楽しませてくれそうね」
顎に絡んだ指が頬に移動する。
「何を...っ」
「ラピスラズリッ!!」
聞き覚えのある声が聞こえた。
この声...フローか...!?
「出てこい!!ラピスラズリ!!」
フゥとラピスラズリが溜息をついてドアを開ける。
すぐ外にフローがいるのが見えた。
ドアが閉まる。
ハッとして腕を見た。
バラの茎で縛られている。
その棘で腕を擦ってそこから血が流れていた。
「2人を返せ!!」
「何故?」
「お前は子供達は返した。約束は守った。しかし、あいつらは街の外の住人!!この街には関係のない奴らだ!!」
「...どうやって中に入ってきたの?」
ドアの向こうの話し声に聞き耳をたてる。
「あんな女だけの警備なんて」
剣を地面に突き立てた音が聞こえた。
「瞬殺だ」
「...武道の達人だったわね。剣を操るのも長けているってこと...」
少しの間沈黙があって外が光った。
この光は...ダイヤモンド...!!
「フロー!!逃げろ!!」
強く光った後、その光が治まってから慌てて体を動かす。
首にも茎が巻き付いていて少し擦った。
「...何をした?」
「帰りなさい。フロー・ライト」
「何故お前の命令に従わねばならん!!」
「...やはり私の言葉が聞けないのね」
「何を言ってる!!」
剣が大気を揺らす。
フローが剣の切っ先をラピスラズリに向けた。
「うっ...」
ドクンと心臓が縛られる。
「うぁ…っ」
「ジルコン」
トパーズがこっちを向いて声をかけた。
「フ…ローが…何か…」
苦しい。
まるで聖地のど真ん中に立っているみたいだ。
鞭のしなる音がして無理矢理顔をあげる。
バキッと音をたててドアに何かがぶつかった。
ドアが外れて中に口から血を流したフローが倒れこんできた。
強かに肩をぶつける。
さらに心臓が縛られる。
心臓を掴もうともがいて体中が棘のせいで血だらけになった。
「ジルコン!!」
「う…」
フローが俺達に気付いて顔をあげる。
「2人共!!よかっ…」
そのフローの背に鞭が入った。
「ぐぁ…っ!!」
フローが激しく咳き込む。
フローの腕にバラの茎がまるで生きているかのように巻きついた。
「ジッジルコン!!この茎燃やせ!!お前なら出来るだろ…う…」
「............っ」
「ジルコン?どうしたんだ、おい!!」
どうしたって?何がだトパーズ。わからないぞ。
苦しい。心臓を掻き毟りたい。
あぁだけどどうしよう。体が動かない。
早く動いて2人を助けないと 俺はトパーズを危険な目に合わせられない
フローだって俺達のために来てくれたんだから
誰かの足音が聞こえる。
呼吸ができない。
フローそれ以上近づかないで そのままの状態で近づかないで
そうじゃないと俺は───。
「ジルコン!!」
狂ってしまう。
服が裂けて胸の刻印が露になる。
それを見て誰かが笑った。
誰かに刻印を触られる。
今刻印は熱を持ち心臓と同じように脈打っている。
頬に手が添えられ耳元でラピスラズリが囁いた。
「お前、呪われた(・・・・)子なんだね」
苦痛に耐えるのに必死な俺にその言葉は理解できない。
ただ───。
「痛みを取ってあげようか?すぐに楽になる」
この言葉だけは頭に響いた。
「楽...に...?」
トパーズが何か叫んでいる。
聞こえない。何だよトパーズ。
「そうよ。目を閉じて...」
言われるがままに目を閉じる。
「痛みが遠のいていく。時の流れに身を任せて...」
心臓の痛みが和らいでいく。
少しずつ体が軽くなる。
痛みはほぼ感じない───。
よろしくお願いします!




