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STONE LIFE  作者: 緋絽
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「Happybirthday ジルコン!!」 「15歳おめでとう!!」

「ありがとう!!」

今日、俺は成人年齢の15歳を迎えた。

俺達の国、ストーンキングダムは15歳になると親の許可なしで自由にいろんなところへ行き来出来る。今年は俺の誕生日が儀式の日だった。

「ジルコンもやっと15か~これでやっと一緒に酒が飲めるな。それに…旅にも出れる」

トパーズがグラスを置いて言った。

「遅いのよ!!向こうでお母さん達、待ちくたびれてるかもしれないじゃない!!」

ルビーが笑いながら言う。

「うっせ!!…いいんだよ…これからすぐに巻き返してやる」

絶対に捕まえてやるんだ。絶対に───!!

強く拳を握る。トパーズが悲しそうに笑って言った。

「じゃあ俺も一緒に行かないとな」

「あぁ、頼むぜ」

「出発は明日か?」

「え」

「あぁ」

「えっえっちょっと待ってよ!!いくらなんでも早すぎない!?せめてあと1日…」

「ルビー、時間が無いんだ」

「………っわかってるわよ…」

「ごめん、もう少し、俺たちも一緒にいたいけど…まだ、死ぬわけにはいかないからさ。あと5年しかない───」

「…うん」

「俺、シャワー浴びてくる」

「あ、じゃあ俺も部屋行っていいか?」

「あぁ」

「じゃ、私も片付けたら行くわね」

「わかった」

部屋を出てトパーズと俺の部屋へ向かう。

俺の名はジルコン・カーヴィン。で、隣にいるのがトパーズ・カルサイト。さっきの女の子がルビー・コーラル。

俺達は幼馴染だ。

「ソファにでも座っててくれ」

「あぁ」

シャワーを浴びるために服を脱いだ。

鏡に映った自分の姿を見る。

俺の心臓あたりの胸にはガラスのハートのようなものの中心に「D」と書かれ、その周りを茨が包んでいる刻印が彫ってある。

これは毎年俺の命を縮めている。

それはあの日───あいつの言った言葉───。


───── 10年前 ──────

俺は部屋で本を読んでいた。

その時はまだ父さんも母さんも生きていて、幸せだった。

ある日───。

ガシャーンと皿の割れる音がして母さんの悲鳴が聞こえた。

「…母さん?」

部屋を出てキッチンへ行く。

目に入ったのは赤い液体に染まった床と力なく空を見上げる両親の姿───。

「と…父さん…?母さん…?」

あまりのショックに悲鳴もあげられず、俺は父さんと母さんに近寄った。

2人に近づくたび赤い液体が波立つ。

「なんだよ…これ…」

生ぬるい液体で体が赤く染まる。

2人に触れようと膝を付いたとき誰かが傍に立っているのに気がついた。

振り返ると男が立っていた。

月明かりで顔が照らされているのに、俺はどうしてか顔を見ることが出来ない。

顔の部分にだけ(もや)がかかっているようだ。

「だ…れ…」

「おや、お前は憎きカーヴィン夫妻の1人息子じゃないか」

腕を掴まれ立たされる。俺は恐怖で声を出せない。

「そうだ、こいつも殺してしまおう。あぁでも子供か…」

俺は顔が見えないけど、目が合っているのはわかった。

「じゃあお前にチャンスをやろう。今すぐ殺しはしないよ。15年後、お前の心臓が茨で包まれるとき、それがお前の死ぬ時だ」

服をちぎられて床に放られ体中に赤い液体が飛ぶ。急いで起き上がろうとして床に押さえ付けられた。

「っ!!」

トンと心臓あたりの胸に手を当てられる。

その手が熱くてその熱いものは魔力だと本能で気がついた。

でもその頃は魔力の使い方を習ってなくて逃げようとしても逃げられなかった。

その手に“D”と紋章があるのが見えた。

「15の茨の棘が君の命を喰らい尽くすまで、どうぞ健やかに」

ドンと心臓に魔力が打ち込まれる。

男は笑いながら出て行った。

俺は追いかけるために立ち上がろうとした。

ドクンと心臓が鳴る。

急速に縛り上げられていく感覚。心臓を何かで締め付けられていく感覚。想像を絶する痛みに、思わず倒れた。

「っあっ…あぁぁぁぁっ!!」

呻き声にも似た叫びを聞いてトパーズとルビーが家から走ってきた。

「ジルコン!!」

2人の母親とターコイズ師匠(通称じいさん)も走ってきて呻いている俺と傍で血だらけの両親を見て絶句していた。

その後は次の日になると痛みは治まって周りは全てを知っていた。

「お前、犯人を見たか?」

「見た…けど顔は見えなかった…なんでかわかんないけど…あと手の甲に“D”って紋章があって…」

「“D”じゃと!?」

「う、うん…」

「…お前の両親を殺したのはDマスターである可能性が高い…」

「ディ…」

Dマスターとはダイヤモンド使いの事で、この国の5つの都市を統べている奴らのことだ。5人いて、そのうち1人が他の4人を統べている。

人々はDマスターの命令は厭でも従わねばならない。

彼らの持つ“ダイヤモンド”にはそういう力がある。“ダイヤモンド”を持っている事こそがDマスターである証だ。

「ジルコン、胸のとこどうしたの?」

「え?」

そしてこの刻印が刻まれていた───。

それ以来俺は“呪われた子”と呼ばれるようになった。

毎年誕生日にくるこの痛み、そして刻印に1本ずつ増えていく茨の棘…。

この呪いを解けるのはこの呪いをかけた本人だけ。

だから俺はそいつを捜し出すために今日を待っていた───。


───── 現実 ──────

キュッとシャワーを止めてタオルで体を拭く。

下を着て外に出た。

「お、出たな」

「あぁ」

ガチャッとドアが開いてそっちを向く。

「キャッ!!ちょっと!!上も着てよ!!」

ルビーが顔を赤くして言った。

「いいじゃん、別に」

「よくない!!年頃の娘になんて格好見せるのよ!!」

肩をすくめてから上を着る。

もうすぐ呪いの時間だ。2人は俺につきそうために、毎年部屋に来る。

何も言わないけど。

床へ横になると俺を挟むようにして2人も寝転がった。

「なんで…覚えてないんだろう」

「え?」

「あいつの顔、どうして見えなかったんだろう…」

「大丈夫だよ、きっと見つかる」

「そうよ、心配しないで」

ギュッと2人が手を握ってきた。

フッと体の力を抜く。目を閉じた。

少しずつ縛られていく体と心臓。痛みに慣れることはなく俺は体を硬くした。

ドクンと心臓が鳴る。

強く2人の手を握った。

「ジルコン!!」

「う゛…あ…あ…う゛…っ」

これで最後。最後にするんだ…。

この痛みから逃げられる。

やっと───。

翌朝目が覚めるとトパーズは手を握って、ルビーは俺を抱きしめて寝ていた。

いつの間にか気絶して、そのまま寝ていたらしい。

年を増すごとに痛みが激しくなっていく。

よほど暴れたらしいな。

ルビーの手をどかしてシャワーを浴びた。

今日、出発だ。1つ増えた棘を確認してシャワールームを出た。

朝食を食べているとじいさんがダイニングに出てきた。

「昨夜はどうじゃった」

「…いつも通り、気絶したよ。どうやら暴れてから」

「そうか」

じいさんは両親が死んでから俺を育ててくれた人だ。

そして俺とトパーズの魔術と武術の師匠だ。

俺達はまだ一度もじいさんに勝った事はない。武術で。

「ジル、頑張りなさい」

じいさんだけが俺をジルと呼ぶ。

「お前は素質に満ちている。必ず呪いを解かせられるよ」

「…うん」

「わっジルコンッゴメン朝ご飯準備してない…」

「腹減った~」

階段を降りてダイニングに入ってきた2人はピタッと止まるとクルッと玄関を向いた。

「俺達自分家で食うわ」

「えっいいって別に…」

「バーカ家族ならいろいろ話すことがあるだろっじゃまた後で~」

「おいっ」

バタンと出て行ってしまった。

「…もう10年か…早いのう…」

「そうかぁ?俺にとっちゃすんげぇ長かったぜ?」

ホッホッホと笑う。

「随分でかくなったしの」

「あぁ」

あれからずっと育ててくれた。ちゃんと叱ってくれる人だった。

「じいさん、ありがとな」

「何じゃ気色悪い」

「ハハハ気色悪いはないだろ。なんとなくだよ」

「……そうか」

「じゃあ、行くよ」

「あぁ、いつでも帰ってきなさい」

「うん。ありがとう」

上にあがって荷物を造って外に出た。

馬車をつかまえて荷物を載せる。

「トパーズ、俺父さん達のとこ行ってくるよ」

「わかった」

歩いて教会へ行く。そこに父さん達はいる。

───けど俺は教会の中に入らずに止まった。

いや、入らなかったんじゃない。入れなかったんだ。

中に入ろうとすると刻印で心臓が苦しくなる。

負の感情を入れすぎた呪いのせいで俺は聖地に入れない。

「───絶対また会いにくるよ…」

そうして俺はまた馬車の方へ戻った。

馬車に乗るとルビーがサンドイッチを持たせてくれた。

「元気でね、私もお医者さんになるために頑張るから!!」

「うん、頑張れ」

「…ジルコン?」

「ん?」

「ぜ、絶対帰ってきてよね!!」

ぎゅうと手を握られる。

フッと笑って形見のペンダントをルビーにかけた。

「これ…」

「誓うよルビー。お前にかけて」

チュッと手にキスをする。

ボッと赤くなった。

「なっなっ…」

ぽんぽんと頭を叩いて座り直す。

「ジルコ……!!」

ニヤリと笑う。

「!!か、からかったわね!!」

ヒラヒラと手を振った。

知らないだろ、ルビー。

からかってるフリをするのがどんなに難しいか。

「トパーズ!!」

向こうから女の子が走ってくる。

「げっ」

「ハハッまぁ今日ぐらいいいんじゃん?」

「トパーズ!!」

女の子が馬車の中にいるトパーズに飛びついた。

「うわっ」

「インカローズ!!危ないだろ!!」

「だって…行っちゃうんでしょ!!さみしいよ~トパーズ~!!」

「わーーかったから離れろ!!」

インカローズは孤児院の子で、昔遊び相手が少なくてトパーズが誘ったらトパーズに惚れたっていう女の子。

ポンとトパーズの肩を叩く。

「罪作りだよな、お前って」

「何言ってんだよ!!」

「インカローズ、そろそろだから離れてくれ、な?」

「おい!!無視か!!」

「...はーい」

「お前もなんで俺の言うことは聞かずにジルコンの言うことは聞くんだよ!!」

「ハハハ!!」

「なんか...もういいや...」

「トパーズ、いってらっしゃい!!」

インカローズがトパーズの頬にキスをした。

「なっ...」

「やったぁ!!ウフフフフ!!」

思わず吹き出す。

「ウッ...ウフフフフって!!アハハハハ!!ウッウフッ...」

赤くなっているトパーズに一言。

「油断したな、トパーズ」

「~~~~っ」

「お客さん、そろそろ行きますよ」

「あ、はい」

インカローズを下ろしてドアを閉める。

ルビー達を見た。

笑って言う。

「行ってくる」

馬車が走り出した。

「ハマーストーンウォールズまで」

「はい」

目を閉じる。

平和な日常は終わりだ。

次に目を開けたら───。

よろしくお願いします!!

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