EPISODE16 「お前たちも一緒に魔国に来るといいさ」
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「リリョウ!」
「ナツキ様!」
ティリウスとアイザックが駆けつけてくる。
「よう。終わったぜ」
そう言って笑おうとしたナツキだったが、顔をしかめて膝をついてしまう。
アイザックが悲鳴のような大きな声で自分を呼ぶのに内心、苦笑してしまう。腹を刺された程度じゃ死なないことは分かっている。何よりも、少女巫女ごと刺されたのだ。剣の勢いも大したことはなかった。
それでも痛いものはいたく、出血が多いせいか呼吸も荒い。
「待っていろ、父上の部隊から医術師を呼んできてやる!」
「ティリウス!」
駆け出そうとしたティリウスをナツキは腹部の痛みを堪えて止める。
「あの子の分も医術師を呼んでくれ……」
ナツキは地面に横たわっている少女を指差す。
「当たり前だ!」
ティリウスは心外だとばかりに大きな声を出すと、駆けていった。
「アイザック、こいつらを捕縛しろ。決して傷つけるなよ」
「分かりました」
アイザックはナツキに手を貸したい気持ちを抑え、大将を失って呆然としている人間たちすべてに聞こえるように風の魔術を使い声を伝える。
「私は魔族、アイザック・フレイヤード。この戦争は我々魔族の勝利です、直ちに武器を地面に捨てなさい」
その言葉に、一人、また一人と武器を捨てて行く。
少しくらいは抵抗されると思っていたので、少々怪訝に思いながらも味方の兵に武器の回収を命令していく。
「捕縛はしますが、それ以上のことをするつもりはありません、それはお約束しましょう。“勇者候補”は亡くなりました。ですので、現状で責任者となれるべく地位を持った方がいれば名乗り出てください」
威圧するのではなく、歩み寄るようにアイザックは話す。
あくまでも自分たちはこれ以上の争いは望まない。降伏するなら傷つけることはしないと、その思いを乗せて話し続ける。
「私だ」
一人の敵兵が名乗り出た。
鎧の上からでもわかる戦士として鍛えられたその体格は、勇猛な騎士と呼べるだろう。
そんな彼は兜を外すと、意外にも白髪交じりの温和そうな男性であった。
「私はアイザック・フレイヤードと申します。現在は所属はありませんが、同じ魔族の危機と知り今回の戦に参戦させていただきました」
そう名乗り、丁寧に礼をする。
「私の名はマックス・キーナム。ノルン王国第三騎士団団長を務めている」
「貴方がマックス・キーナムですか。お初にお目にかかります。ノルン王国の良心と呼ばれる方の一人とお会いできて光栄です」
その言葉を聞いて、マックスは苦笑いをして首を横に振るうだけだった。
ノルン王国の良心。それはある者からは皮肉の意味を込めて、ある者からは敬意を込められて呼ばれる愛称のようなものである。
それを説明する前に、簡単にノルン王国についての説明をした方がよいだろう。
ノルン王国。その国は人間の国でも歴史がある国の一つと考えられている。だが、長い歴史が続くゆえに、少しずつ、少しずつと王家が腐敗してしまった哀れな国でもあった。
現在、女王が国を治めているが、欲望に身を任せ、残虐の限りを尽くす悪王である。その娘である王女も、母親ほどではないが近いものがある。
女王の行動を指摘する貴族はもちろん、甘い汁を啜ろうとする貴族までもが関係なく気分次第で殺されてしまうことが珍しくない国、それがノルン王国であった。
そんな悪王が統治する国で、ノルン王国の良心と呼ばれる者が何人かいる。それの一人がマックス・キーナムであった。
いくら悪王であっても、国を守る騎士団の団長までは殺せない。殺してしまえば、ノルン王国の戦力が下がってしまう。戦力が下がってしまえば、敵国に攻められる。それを恐れている。
だからこそ、騎士団長であるマックスは自分の立場を利用し、少しでも国を良くしようと考えている一人であった。
「しかし、驚きました。騎士団長である方が“勇者候補”と共に戦場に出ていながら、守ることもしなかったとは……」
ノルン王国における“勇者候補”と巫女は国の財産である。それを騎士団長が守ろうとしなかったので、アイザックは驚いているのだった。
「この“勇者候補”がもう一人の“勇者候補”であれば私は喜んで命を掛けて守っただろう。だが……死者を悪くは言いたくないが、世の中には死んだほうが良い者もいる」
一人の“勇者候補”という言葉に、アイザックはマックスが小林大和と面識があるということが分かったが、この場でそのことを追求するつもりはなかった。
「彼を丁重に」
「はッ!」
近くにいた兵に頼むと、マックスは捕縛されおとなしく兵に引いていかれた。
「さて、問題は“勇者候補”の腹心たちと、巫女たちですね」
どうしてよいものかと、アイザックは頭を悩ませたがとりあえず捕縛し、一人一人尋問をするということに決めたのだった。
*
「俺はいいから、最初にあの子を……!」
「心配するな、あの巫女にも同じように手当てをしている」
「そうか……」
ホッとすると、体から力を抜いて地面に仰向けとなる。
「頼む、始めてくれ」
「わかりました」
ナツキがようやくおとなしくなったので、ティリウスは医術師に処置を頼んだ。
刺された腹部だが、出血は酷いが、そこまで重症な傷ではなかった。
どちらかというと、腕や顔の火傷の方が酷い。それでも、火傷の痕などは残らないという。
「父上が礼を言っていた。僕たち、いや……貴様がいなければきっとこの戦争は泥沼になっていただろうと。後で改めて礼をしたいそうだ。今回の活躍も、すでに母上――魔王にも伝わっている」
ナツキは返事をしない。というよりもできないに近い。
顔の火傷を治しているので、喋ってはいけないのだ。
「多くいる現“魔王候補”の中で“勇者候補”を討ち取ったのは貴様が初めてだ。もっとも、貴様は喜びはしないだろうがな」
そんなことを言っているティリウスはふと気づく。数人の人間の巫女が近くに来ていたのだった。
もちろん、腕には拘束するための枷が嵌められている。
「なんのようだ?」
「あの、もしよろしければ、治療をお手伝いできないでしょうか……」
六人いる巫女の中で最年長であろう巫女が、若干の緊張と恐怖が混ざる声でそう呟いた。
「なんだと? それで近づいて殺すつもりか!」
「ヒッ……い、いいえ、私たち巫女の術の中に、血液を増やす術がありますので……そちらの方と、ユーリに」
「ユーリ?」
「あの子のことだよ。俺と一緒に刺された巫女だ。確か、刺された時に、誰かがユーリと言っていたのを覚えるよ」
顔の火傷が綺麗になったナツキが横たわったまま声を出す。
「……どうするかはお前が決めろ。ついでに言っておくが、我ら魔族に血を増やす術はない」
「じゃあお願いするよ。正直、血液が足りなくて辛い……もちろん、あの子にも同じように」
「フン、貴様は本当に甘いな、僕だったら敵を信じないぞ」
「別に甘いだとかじゃなくて、巫女たちが仲間を助けたい気持ちはあるだろう。だけど、あの子だけがそれを受けると、色々と問題が置きそうだ。だから、俺もついでにな」
「勝手にしろ! 良いか、貴様らの枷は外してやる。だが、一度でも僕が危険だと判断したら、それが間違いであっても関係ない。殺してやる」
ティリウスの本気の殺気に巫女たちは、怯えるように声を上げたが、枷が外されるとすぐにナツキと少女の巫女ユーリに駆け寄り、詠唱を始めた。
ナツキは体が熱くなっていくのが分かる。だが、危険は感じない。
もしかしたら、感じないだけで危険に晒されているのかもしれないが、まぁいいかと思うことにして目を瞑った。
「あの、ありがとうございます」
「何が?」
先ほどティリウスに申し出た少女の声だった。ナツキは目を開けずに、返事をする。
「私たちの申し出を受け入れてくださったことです」
ナツキは答えない。
礼を言われる覚えがないからだ。
「ユーリがレイド様に刺された時、私たちは恐れていたことが本当に起きてしまったと恐怖しました」
レイドという名前には心当たりはないが、話からすると“勇者候補”のことだろう。
「ノルン王国での巫女は身分も高く、大事にされていますが、それはあくまでも使い捨ての駒として大事にされているのです。そして代々、貴族や“勇者候補”が戦場に出るときに連れ出され、多くの巫女が亡くなっています。異世界から“勇者候補”を召喚する儀式ではその不安定な術式のせいで命を落とす者もいます。しかし、私たちに拒否権はありません、巫女としてノルン王国で暮らすのは絶望の日々でした」
ノルン王国の巫女事情など分からないナツキであったが、使い捨ての駒というのは穏やかじゃない。
だが、思い出す。たしか、“勇者候補”も巫女を奴隷だと言っていたことを思い出す。
「私たちは人間としてではなく、巫女という人形として教育されてきました。疑問を持たない者も時折いますが、ほとんどの巫女は毎日に怯え、戦いがあると聞くと絶望します。だからこそ、貴方がユーリのことで真剣に怒ってくれた時、私たちは本当に嬉しかったのです」
「そうか……」
「ユーリのことをお願いします。心優しい子です。巫女として絶望はしていましたが、それでも世の中のためにレイド様が役に立つならと信じようとしていました」
「だが、裏切られた……か」
巫女は頷く。
「まぁ、“勇者候補”もあの子は俺にくれるようなことを言ってたし、お前たちも一緒に魔国に来るといいさ」
「え?」
巫女は今、何を言われたのか分からなかった。
「あの、今なんて?」
しかし、ナツキからの返事はなかった。
「あの……」
再度声を掛けて、巫女は気づいた。ナツキが寝息を立てていることに。
同時に驚いてしまった。
先ほどまで敵対していた相手に、魔族にもっとも敵対している国であるノルン王国の巫女に囲まれていながら寝てしまう神経に。
巫女たちはナツキに向かって攻撃したことを覚えている。嫌ではあったが殺すつもりで攻撃をしたのだ。そうしないと、自分たちがどうなるかわからないからという恐怖もあって。
そんな相手に回復を任せ、無防備にも寝てしまうナツキが理解できなかった。
「……本当に、不思議な人」
巫女は久しぶりに優しく微笑むことができた。
*
時間は経ち、その日の夜。
ナツキはアイザック、ティリウス、サイザリス、ヴィヴァーチェを中心に、スウェルズ領を守る兵士の隊長たち、アイマトの長などを含め食事を取り、今後に関しての話し合いをしていた。
「改めて礼を言わせてもらうよ、リリョウ、ティリウス。君たちがいなければ、今もまだ戦場に立っていただろう。もちろん、ヴィヴァーチェ、アイザック殿、そして我がスウェルズ領兵士の皆、負傷者の手当てや物資の援助をしてくれたアイマトの民の一つでも欠けていたら戦争は続いていただろう。皆、ありがとう」
サイザリスはこの場にいる皆に改めて礼を述べた。
それぞれが、サイザリスの言葉に頷き、拍手を送る。
「アイザック殿」
「はい、現在捕虜となった兵士もおとなしいものです。もっとも彼等のほとんどがもう戦争をしたくないのが正直な気持ちでしょう。ですが、ノルン王国の女王がそれを許さないのです」
ノルン王国第三騎士団団長マックス・キーナムもこれ以上の戦争は望んでいないとアイザックは続ける。
マックスだけではなく、第一騎士団団長も、第二騎士団団長もである。
「あれも欲しい、これも欲しいで有名な女王だものね。その娘もだいぶ酷いみたいよ」
「あまり裕福な土地ではないノルン王国領土を広げることで少しでも民に楽をさせたいと、名目上は言っているが、それが違うということは誰でも知っていることだ」
ヴィヴァーチェの呆れるようなつぶやきに、サイザリスも同感だと頷く。
その後しばらくはノルン王国に関しての話――半分以上は文句に近い――が続く。
その話を聞いていて、ナツキはふと疑問に思った。
「それだけ酷い王家にどうして誰もが言うことを聞くんだ? 反乱とかがあっても良さそうなものだけどな……」
もっともな疑問。
その問いにアイザックが答えた。
「反乱を起こしたところであっという間に鎮圧されてお終いです。過去に何度か反乱はありましたが、その時代の“勇者候補”や巫女のよって、無残に無慈悲に反乱を起こしたもの全てが殺されるという結果で終わってしまっています」
「いつもいるのかよ、“勇者候補”は……」
「はい。ノルン王国王族には古い巫女の血が流れているそうです。ゆえに、成人の儀のごとく召喚の儀式を行い“勇者候補”を召喚します。王家にも力があり、さらには“勇者候補”という規格外の戦力までいるのです、従っていた方がマシという考えの民が多いのです」
最悪だ、と心底思う。
「それに、あまり言いたくはないのですが、現在ノルン王国は人間の国の中で一目置かれている国でもあります。召喚をやめないということから反感を買ってはいますが、それでもです。また民も、王家にさえ触れなければ国自体は豊かなので、現状には文句はないでしょう」
「そうね。ノルンは魔国との国境にある国の中では結構戦力を持っている国だし、ノルンが魔族に侵略されたら困るという国は多い。だからこそ、逆に侵略することにノルンを応援する国は結構いるし、物資はもちろん兵を貸したりすることもあるくらい。だからこそ、何度も侵略行為をしようとするのよね」
「まったくふざけた国だ!」
アイザックの言葉に、ヴィヴァーチェが付け足し、ティリウスが文句を言う。
いや、最後の文句はどうでもいいのだが、ナツキは顔には出さないが内心結構困っていた。
(そんな国に大和がいるのか……普通には会えない可能性が高い。下手をすると、それこそ戦場で……)
そこまで考えて、首を横に振るう。
「どうかしたのか?」
「なんでもないよ」
無意識に顔に出てしまったのか、ティリウスが尋ねてくるのを笑顔でかわす。
そして、話題を変えることに。
「アイザック」
「はい」
「俺の頼んでおいたことは問題ないか?」
「はい、あの巫女たちを引き取るということですね。魔王様からも承諾は得ています。とりあえずは私の孤児院で生活してもらいながら、働いていただく予定です。構いませんか?」
「ありがとう。助かるよ」
ナツキがアイザックに頼んでおいたこと、それは巫女の保護だった。
多くの兵はノルン王国へ返される。その後また攻めてくるかもしれないが、収容しておく場所も多くはない。だからといって、全員を処刑してしまうわけにもいかない。だからこそ国へ返すのだ。
――だが、巫女はどうなるのか?――
それが一番の問題だった。
「いいえ、魔族側も人間の巫女が使う魔術を提供していただけるというのは大きいです。今後、どうなるのか分からない不安定なご時勢ですので、今回のことに関しては文句は誰も言わないでしょう。それに、私たちは共存を願っています。その我々が彼女たちを見捨てるということは決してしません」
一度は寝てしまったナツキだが、しばらくして目を覚ますとアイザックの巫女たちを保護したいと申し出たのだった。
アイザックもそのつもりだったらしく、話はスムーズに進んだ。幸い、巫女たちはナツキとティリウス、アイザックに攻撃はしたものの、あくまでも回復要因として控えていたので魔族を誰一人として殺してはいない。
アイマトへ帰ってきたナツキはティリウスと共に、疲労で再び気絶するように寝てしまったが、その間にアイザックとヴィヴァーチェ、サイザリスが巫女たちに話を聞いてくれた。そして、どの巫女も怯えるように帰りたくないと言ったそうだ。そして、帰ったら殺されてしまうとも。
もともと戦争などを望んでいなかった彼女たちを見捨てることはありえなかったので、巫女が使う術などを教えてもらうことを条件に保護し、魔国の人間として迎えるという話になったのだった。
「ところでさ、アイザック」
「はい、なんでしょうか?」
「できたら俺も今後は孤児院で暮らしていいか? いつまでも魔王城で暮らしている訳にもいかないからさ」
アイザックが驚き、ワインを口に含んでいたティリウスが大きくむせた。
「ちょ、ちょっとお待ちください、ナツキ様! ナツキ様はウィンチェスター領があるのですよ! トレノ殿が一緒に暮らしたいと思っていらっしゃるというのに……」
「でも、俺はウィンチェスターさんちの娘さんには嫌われてるからねー。無駄な争いはしたくないんだよ」
それを言われてしまうと言葉を続けられないアイザックだった。
「貴様は魔王城の生活が気に入らないのか!」
「なんで怒ってんだよ! っていうか、いつまでも魔王城の客室を占領する訳にはいかないだろう! 俺は“魔王候補”なんだぞ。他の候補たちは魔王城にいるのか?」
「グ……」
「というわけで、アイザック世話になって良いか? ちなみに、俺は孤児院で暮らしていたことがあるから、子供の面倒は苦手じゃないぞ」
「……分かりました。ただし、トレノ殿の気持ちもいずれは汲んであげてください」
「努力はするよ」
そう言って笑うナツキにため息を吐くアイザックだった。
丁度、話が区切りをつけたタイミングで、隊長や町長と話していたサイザリスが声を掛けてくる。
「ところでリリョウ、君は“魔王候補”としてどのように今後を歩んでいくのか決めたかね?」
「そうですね……正直に言うと、イシュタリアに着てから一ヶ月以上は経ってますが、起きていたのは数日で、まだまだ世界のことがわかりません」
確かに、とサイザリスは頷く。
「ですが、今回の戦争を通じて、ある程度は決まってきました」
「良かったら聞かせてくれないかな? 本来なら魔王様が一番最初に聞くべきだとは思うが、君はとても興味深い」
サイザリスに同意するように、アイザックたちはもちろん、隊長たちや町長も興味を持っているようだ。
「まだ、詳しくは自分自身でも纏められていないので言えないのですが、まずは種族など関係なくお互いに手と手を取り合って平和に暮らせるようにしたいですね。やっぱり戦争は嫌です。誰かを殺すのは辛いですし、殺された相手にだって家族はいるかもしれません。その家族が悲しむんじゃないかと考えると、戦争なんかはなくなったほうが良いと――当たり前のことですが、そう思いました」
「そうだね。戦争ほどくだらなく、後味が悪いものはない。魔族だとか人間だとか、その程度のことで争ってしまうのは酷く愚かな行為だと私も思うよ。もっと残念なのは、多くの“魔王候補”は戦うことで武勲を立てて魔王として認められようとしている。人間たちは共存を望まない者もいるということだね」
「はい、そのことは分かっています。だから、戦争が起きれば嫌ですけど、敵を殺します。非情に聞こえるでしょうが、本当に共存を望まない者、平和を望まない者がいれば、容赦無く切り捨てます」
そうすれば、いずれは平和な世の中になるだろう。
自分の手は真っ赤に染まり、血塗られた道を歩くかもしれないが。
それでも良いと思う。
巫女の少女が仲間である“勇者候補”に後ろから刺されることがないような世界に、愚かな国が関係の無い者を誘拐のようにさらう召喚魔術などが必要のない世界になるなら。
「なるほど……険しい道になりそうだな。もし、私の力が必要な時は遠慮なく言って欲しい」
サイザリスは和平派である。ナツキの考えは和平だが、聞く者が聞けば強硬派と思える言葉だった。
だが、最終的に共存を目指すならば、倒さなければならない敵は多い。ノルン王国の王家などは一番の礼だ。
だからこそ、サイザリスはナツキに力を貸すと言ったのだ。彼だけが重みを背負わないように、皆で共に歩んでいく為に。
「ありがとうございます」
その言葉が伝わったのか、ナツキは深く頭を下げたのだった。
ノルン王国や巫女たちの今後も含めて書かせていただきました。少女巫女は次回に登場していただきます。
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