第69話「黄金の記憶、あるいは終宴のピロシキ」
「ほら、そこのゴミ拾い! パンの屑一つ残すなよ。あかり様に捧げた聖域なんだからな!」 「分かってるって。……ああ、でも終わっちゃったな。寂しいけど、最高だった……」
後片付けに奔走する教徒たちの前に、不意に、軽やかな足音が響きました。
「あら、そんなに湿っぽい顔をしていたら、せっかくの熱気が冷めてしまうわよ?」
そこには、動きやすい服装に着替えたあかり、ココ、そしてゆんの姿がありました。
「ええっ、あかり様!? どうしてここに!」 「ふふ、主催者を放っておいて帰るほど、私は薄情じゃないわ。さあ、ココ、ゆん。私たちも手伝うわよ!」
「あはは、あかりちゃん、やる気満々ですね! 私もこの『思い出の欠片』を拾い集めるの、嫌いじゃないですよ」 「……おれは重いものを運ぶ。お前たちは細かいところを頼むぞ」
驚きと喜びに震える教徒たちと共に、あかりたちは夜の広場を歩き、共に汗を流しました。かつてないほどの一体感が、そこにはありました。
片付けが一段落した頃、あかりは特大のバスケットを取り出しました。中には、熱々の**『ピロシキ』**がぎっしりと詰まっています。
「さあ、打ち上げよ! パンに祝福を!」
油でカラリと揚げられた生地の中には、肉や野菜の旨味がギュッと閉じ込められています。一口齧れば、教徒たちの心に染み渡るような、優しくて力強い味わい。
「……うめぇ。みんなで食べるパンって、こんなに温かいんだな」 「ピロシキみたいに、俺たちの気持ちが一つに詰まったイベントだったよな」
教徒たちが涙を堪えながら頬張る姿を見て、あかりは満足げに頷くと、凛とした声で告げました。
「約束通り、あなたたちの望みを叶えてあげましょう。……さあ、願いを言いなさい」
代表の教徒が、震える声で答えました。 「あかり様……! 私たちの願いは、あかり様公認の『パン教徒バッジ』を授与していただくことです。私たちが、あなたの教徒であることを誇れるように!」
あかりはその願いを聞くと、不敵に、けれど最高に優しい眼差しで微笑みました。
「いいわ。そのバッジ、私が最高に香ばしいデザインで認めてあげる! ……でも、それだけじゃ足りないわね」
あかりはココから手渡された一冊の厚いノートを掲げました。
「これから、ここにあなたたちの名前を記しなさい。『パン教徒名簿』……。これは私の宝物として、永遠にこの胸に刻んでおくわ。あなたたちの愛を、私は一滴も溢れさせない。……いいわね?」
「……あかり様!!」
夜空に、教徒たちの歓喜の声が響き渡りました。ピロシキの温もりと、あかりの言葉。それは、彼らが今日作り上げた絆が、一時の夢ではなく、永遠に続く証となった瞬間でした。




