表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/95

第55話「炊飯の轟音、あるいは白き刺客の凱旋」

「――やった! やったぞ! ついに、あの女の絶叫を引き出したぞ!!」


都内某所、高級和食店の地下にある「米派総本部」。モニターに映るあかりの絶叫と、砂嵐で終わった配信画面を前に、一人の幹部が拳を突き上げました。


その周りには、お揃いの白いハッピを着た男たちが集まり、お祭り騒ぎとなっています。


「見ましたか、あのあかりという女の顔! 最後に『おにぎり』を見た瞬間の、あの絶望と困惑! これこそ我が『ライス・オペレーション』の第一歩だ!」


「さすがです! 30種類のパンの中に、一箱だけ『究極の銀シャリ』を紛れ込ませる……。まさにパンの香りの海に一粒の真珠を投げ込むような、芸術的な嫌がらせでしたな!」


幹部の一人が、ホカホカの炊飯器を抱えながら、感極まった様子で叫びます。


「しかし、見てください。あかりの横にいた大司教の二人……彼ら、一瞬おにぎりを見て、鼻をひくつかせていませんでしたか? あの炊き立ての香りに、本能が揺らいでいたに違いありません!」


その指摘に、中心に座るリーダー格の男が不敵な笑みを浮かべました。


「ふふふ……気づいたか。それこそが狙いだ。パンは確かにもっちりしているが、日本人のDNAには『噛めば噛むほど甘い白米』の記憶が刻まれている。あかりのガードを崩す前に、まずは側近の胃袋を米の粘り気で絡め取る。これぞ『おむすび・トラップ』よ!」


「おおお! 策士、策士ですな!」


総本部では、さっそく「祝勝会」と称して、最高級のコシヒカリと明太子、塩シャケ、昆布が並べられました。


「いいか、お前たち! パン派が『発酵』だの『救済』だのと騒いでいる間に、我々は黙々と『炊飯』に励むのだ! 次の作戦は、あかりたちのゲーム実況サーバーへの『粘り気ハッキング』……あるいは、街中のパン屋にこっそり『米粉』を混ぜて、実質的に米派に引き込む『擬態パン計画』か……」


「次は『焼きおにぎり』で、パンの香ばしさに真っ向勝負を挑むのはどうでしょう!?」


「いいだろう! 我が米派の粒の結束は、パンの生地よりも固いのだ! 炊き上がれ! 日本の夜明け!」


地下の秘密基地には、炊飯器の一斉稼働による凄まじい熱気と蒸気が立ち込め、幹部たちの「ワッショイ! ワッショイ!」という不気味な掛け声が、深夜まで響き渡り続けました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ