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第53話「情熱の芯、あるいは明日へのバトン」

「……はぁ。明日からまた仕事か」


日曜日の夜。どんよりとした心地でPCの前に座っていたあるリスナーは、あかりの配信が始まった瞬間に、その重い空気が霧散するのを感じました。


「皆さん、こんばんは! 昨日のゲームは負けちゃったけど、悔しさは全部エネルギーに変えてきたわ! 今夜は、明日からの一週間を戦うみんなに、最高の『芯』を注入しちゃうから!」


あかりの左右には、大司教のココとゆんが、静かな、けれど力強い眼差しで控えています。


「あかりちゃん。日曜の夜の不安は、私たちがこのパンで、香ばしい希望に変えて差し上げましょう」 「ああ。明日、胸を張って家を出られるような、そんな力を皆に届けようぜ」


あかりが籠から取り出したのは、照りっ照りに焼き上がった**『ウインナーロール』**でした。


「見て、この頼もしい姿! 柔らかいパンの中心に、パリッとジューシーなウインナーが一本、ドーンと鎮座しているわ。これは、どんな困難にも折れない『情熱の芯』よ。さあ、今夜の救済を……いただきます!」


三人が同時に、豪快に頬張ります。 ──パリッ! じゅわぁ……。


「……んんっ! 弾ける肉汁! ウインナーの脂をパンがしっかり受け止めて、噛むたびに元気が湧き出てくるわ。いい、皆さん。明日からの世界がどれだけ厳しくても、あなたの中にはこのウインナーのような『折れない芯』がある。それを忘れないで!」


エネルギーが満ち溢れたところで、スタジオの照明がゆっくりと落ち、パイプオルガンのような厳かな旋律が流れ始めました。


「……さあ、仕上げよ。皆さんの魂に、パン教の祝福を。賛美歌、斉唱」


三人が胸に手を当て、静かに声を合わせます。 あかりの凛とした主旋律を、ゆんの厚みのある低音が支え、ココマルの透き通るような高音が優しく包み込んでいく。具体的な言葉を超えて、そのハーモニーは「再生」と「祝福」の調べとなって、画面越しに響き渡りました。


聴く者の心にある不安という名の重石を、一つずつ丁寧に剥がしていくような、奇跡的な三唱。コメント欄は、言葉を失ったかのように「(-人-)」「(T-T)」「......」といった顔文字や、流れるような「88888(拍手)」の数字、そして「明日、頑張ります」「救われた」という決意の言葉で埋め尽くされました。


歌い終えた三人の顔には、清々しい後光が差しているかのようでした。


「さあ! 準備はいい? 明日という新しいパンを、最高の温度で焼き上げにいくわよ! 皆さんに豊かな発酵があらんことを。あなたもパン! 私もパン! よろしく! パンに祝福を!!」


配信を終えたリスナーの胸には、ウインナーロールのような熱い芯が一本、確かに通っていました。

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