第24話「禁断の扉、黄金のスコーンサンド」
「全教徒の皆さん、こんばんは。今夜は、これまでの常識を覆す『新しい福音』を皆さんに授けます。……大司教ゆん、準備はいいですか?」
配信画面には、いつもの荘厳なスタジオ。あかりの隣で、ゆんが少し興奮した様子で頷きます。
「はい、あかりさん! 今日はみんなの固定観念を、この『オオカミの口』で噛み砕いちゃうからね!」
あかりが厳かに、半分に割ったスコーンへ「あるもの」を挟んで見せました。カメラがズームすると、そこにはバター香る生地に包まれた、スパイシーな揚げたてのフライドチキンが。
『えっ……チキン!?』 『嘘だろ、スコーンに揚げ物?』 『あかりさん、正気か……?』 『ジャムの間違いじゃなくて?』
コメント欄には困惑と疑念の声が滝のように流れます。しかし、あかりは動じることなく、優雅にそのサンドを一口、噛み締めました。
「……沈黙は、最大の賛美です。皆さんも、疑う前にまずは『体験』なさい。スコーンの甘やかな抱擁と、チキンの情熱的なスパイス。この相反する二つが、口の中で完璧な調和を奏でるのです」
「みんな、騙されたと思ってやってみて! 蜂蜜を少しかけるのがおれのおすすめだよ!」
配信を見ながら、半信半疑でキッチンへ向かう者、コンビニへ走る者が続出します。数分後、コメント欄の空気が一変しました。
『待って……うまいじゃん……!』 『嘘だろ、めちゃくちゃ合う……!』 『スコーンの粉っぽさが、チキンの肉汁を全部受け止めてる!』 『これ、悪魔の食べ物だろ。止まらないんだけど』
「ふふ、そうでしょう。常識という名の殻を破った先にこそ、真の発酵が待っているのです。甘いだけが救いではありません。この重厚な満足感こそが、明日を生きる糧となるのです」
あかりの言葉に、ゆんも嬉しそうに声を弾ませます。
「あかりさんと研究してよかった! ほら、みんな、どんどん『禁断の味』に染まっちゃえ!」
疑念は確信へ、そして熱狂的な支持へと変わっていきます。 画面の向こうで、数え切れないほどの「禁断のサンド」が作られ、食べられていく。その一体感こそが、パン教がまた一つ、人々の日常を黄金色に塗り替えた証でした。
「さあ、今夜は心ゆくまで、この新しい美味しさを噛み締めなさい。私たちの探求に、終わりはないのですから……」
あかりとゆんが並んで微笑む画面は、新たな食文化の誕生を祝うかのような、温かくも力強い光に包まれていました。




