第23話「午後の研究会、スコーンの「口」が語る秘密」
「ゆん、お疲れ様。今日は配信の準備もひと段落したし、二人でのんびりお茶にしましょうか。……ふふ、もちろんただの休憩じゃないわよ。今日はこのスコーンを使って、とびきり楽しい『研究会』をしましょう」
あかりの柔らかな呼びかけに、ゆんが焼きたてのスコーンを山盛りにしたプレートを、誇らしげにテーブルへと運びます。
「あかりさん、待ってました! 今日もおれ、気合を入れて焼いたんだ。見て、この側面の『オオカミの口』! パカッと綺麗に割れてるでしょ。配信でお披露目する前に、まずは二人で最高の食べ方を見つけなきゃね!」
「ええ、実に見事な腹割れだわ。この割れ目こそが、外はサクッと、中はしっとり焼き上がった美味しいスコーンの証拠。……さあ、パントークに花を咲かせながら、色々と試してみましょうか」
二人はまず、定番のクロテッドクリームとイチゴジャムから手を伸ばしました。あかりはスコーンの歴史や、本場でのジャムとクリームの順番にまつわる可愛い論争をゆんに語り聞かせ、ゆんは「おれは断然、こぼれるくらいのクリーム派!」とはしゃぎながら、ハチミツや色とりどりのジャムを組み合わせていきます。
「ハチミツも捨てがたいし、クリームチーズにナッツを混ぜるのも食感が変わって面白いね! でもあかりさん、もう主要な組み合わせはやり尽くしちゃった気がするよ。これ以上、何か驚くような食べ方なんてあるかな?」
満足げに紅茶をすするゆんに、あかりがいたずらっぽく、内緒話をするようなトーンで微笑みかけました。
「ふふ、ゆん。私の『とっておき』は、実はここからよ。……これを挟んでみて」
あかりがキッチンから持ってきたのは、なんと、スパイシーな香りを漂わせる揚げたての**『フライドチキン』**でした。
「えっ、フライドチキン!? スコーンに……揚げ物? あかりさん、それっておやつじゃなくて、もうご飯になっちゃうよ……?」
半信半疑のまま、ゆんはあかりに促され、半分に割ったスコーンでチキンを挟み、さらに少しのハニーマスタードを垂らして、思い切りよく一口齧りました。 ──ザクッ、ホロッ……!
「……! 何これ、めちゃくちゃ美味しい! スコーンのバターの甘みと、チキンの塩気とスパイスが……口の中で喧嘩しないで、むしろお互いを引き立て合ってる! スコーンの生地が、チキンの旨味をちょうどよく受け止めてくれるんだね!」
「そうでしょう? 甘いだけがスコーンの道ではないの。この重厚な満足感……これこそが、二人で見つけた新しい福音よ」
あかりの提案に、ゆんは目を輝かせながら勢いよく頷きました。
「これはすごいよ、あかりさん! 甘いのが苦手な人でも、これなら絶対びっくりすると思う。……ねぇ、これ、今度の配信でみんなに紹介しようよ! 『パン教流・禁断のスコーンサンド』って名前でさ!」
「ええ、そのつもりよ。……さあ、冷めないうちに研究を続けましょう。私たちの『とっておき』を、完璧なものにするためにね」
二人の笑い声と、スコーンを割る快音、そして香ばしいスパイスの香りが、夕暮れ時のスタジオを温かく包み込んでいきました。




