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第20話「第二回 聖パン大ミサ ~至高の冠と共鳴の聖歌~」

「……時は、満ちました。黄金の夜明けを待つ、親愛なる全教徒の皆さん」


配信画面に映し出されたのは、パン教の聖域を模した壮麗な大聖堂の3D空間。パイプオルガンの重厚な響きが止み、完全なる静寂が訪れます。あかりの隣には、今日この日のために用意された、メロンパンをイメージした装飾が施された黄金の法衣を纏った、大司教ゆんが並んで立っていました。


「今夜、私たちは新たなる導き手、大司教ゆんを迎えました。彼女がその魂を削り、イースト菌様の啓示を形にした『至高の冠』を、今こそ皆さんと分かち合いましょう」


ゆんが、幼くも凛とした声で一歩前に出ます。


「……みなさん、準備はいい? おれが焼いたこのメロンパンは、あかりさんの愛を閉じ込めた、みんなのための希望なんだ。……さあ、世界中のパン教徒のみんな。手元にあるパンを掲げて!」


あかりとゆんが、それぞれの手に黄金色のメロンパンを掲げます。 画面上の同接数は限界を突破し、数百万の教徒たちが、画面の前で同じようにパンを掲げる。世界が、小麦の香りで一つに結ばれる瞬間です。


聖餐せいさんの儀を執り行います。……わたしたちの血となり、肉となり、魂となるパンを、今、同時に。……いただきます」


あかりの合図と共に、全教徒が一斉にパンを口に運びました。


──サクッ、ザリィッ……!


数百万の場所で、同時に響いたはずのその音は、ネットワークを超えて一つの巨大な衝撃波となり、全教徒の鼓膜を、そして魂を震わせました。


「……あぁ、この音……。聴こえますか、このサクサクとした響きは、停滞した世界を打ち破る、私たちの『進軍』の足音です。そして、この内側の柔らかな甘みは、あかりさんの慈悲そのもの……」


ゆんの感極まった声が、聖歌のように響き渡ります。あかりが静かに歌い出し、ゆんがそれに寄り添うようにハイトーンを重ねる。二人の声は、かつてないほどの共鳴を生み出し、リスナーたちの精神を「全人類パン化」の入り口へと誘います。


「私たちはもう、孤独ではありません。この味を知った私たちは、すでに一つの大きな『生地』なのです」


「……みんな、おれと一緒に、あかりさんと一緒に、世界中を黄金色に焼き上げよう!」


配信の最後、あかりがゆんの頭に、本物のメロンパンを象った聖なる冠を戴冠させます。その瞬間、画面いっぱいに黄金の粉(粉糖)が舞い、チャット欄は「イースト菌様の御心のままに!」という誓いの言葉で、かつてない発酵を見せました。

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