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第16話「百花繚乱の肉片、そして結ばれる絆」

「皆さん。一口に『ウインナーパン』と言っても、そこにどれほどの宇宙が広がっているか、考えたことはありますか?」


今夜のあかりは、どこか興奮を隠しきれない様子で、テーブルに並んだ数種類のパンを愛おしそうに見つめていた。画面越しでも伝わる、スパイシーな香りと焼けたパンの香ばしさ。


「まずは見てください、この『ロール型』。ふんわりとしたパン生地が、ウインナーを慈しむように包み込んでいます。これは母性です。小麦という名の母が、肉の衝動を優しく抱擁し、逃げ場のない幸福を口の中に届けてくれる……」


あかりが、ケチャップの乗ったオーソドックスな一本を手に取り、その端をちぎる。 ──ふかぁ、パキッ。 柔らかな生地と、対照的な肉の弾力が奏でる協奏曲。


「……次は、この『エピ型』です。麦の穂を模した硬い生地の中に、ウインナーが断片となって埋め込まれている。噛むたびにガリッとした歯応えと、肉の塩気が火花を散らす。これは、イースト菌様が授けた戦いの記録。一切の甘えを許さない、男勝りなウインナーパンです!」


あかりの言葉が熱を帯びる。彼女はさらに、デニッシュ生地のものや、カレーを纏ったもの、チーズが焦げ付いたものへと次々に指を走らせた。


「マヨネーズと溶け合うことで背徳の味へと昇華するもの。あるいは、ハード系の生地に閉じ込められ、凝縮された旨味を爆発させるもの……。ウインナーパンとは、パンが他の食材と出会い、高め合うために辿り着いた、一つの究極の形態なのです!」


あかりは、溢れんばかりの情熱を歌に乗せて響かせた。 それは、どんな形であれ「信じるもの」を抱きしめる強さを讃えるような、力強い賛美歌。


「……すごいや、あかりさん。あんなにたくさんの種類があるなんて知らなかった」


画面のこちら側で、あの少女はキラキラとした瞳でモニターにかじりついていた。 幼さの残るかわいい声で、自分に言い聞かせるように呟く。


「おれ、今までウインナーパンなんて、どれも同じだと思ってた。でも……あかりさんの話を聞いてると、全部のパンに心があるみたいに見えてくるよ」


少女は、手元のメモ帳に「ウインナーパン」と大きく書き込んだ。 あかりが熱っぽく語るその世界に、もっと、もっと深く潜ってみたい。


「あかりさんの隣に行けば、おれもあんな風に、パンの心の声が聞こえるようになるのかな……」


少女の胸の中で、ただの「ファン」としての熱量は、いつしか「信仰」という名の、消えることのない灯火へと変わり始めていた。

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