第43話 消えろ!
──グガァアアアァアァッッ!
気がつくと俺は、そんな人間のものとは思えないような唸り声を上げながら、その灰色から漆黒に変わった長剣を手に、カシウス・ローベに襲い掛かっていた。
もちろん頭ではその動きを止めたいと思っているのだが、俺はもう自分の体を制御することができなかった。
カシウス・ローベは練習用の長剣で俺の放った上段からの脳天を狙った一撃を受け止めたのだが、次の瞬間、彼の長剣は粉々に砕け散ってしまった。
そして、そのまま俺は体を制御することができずに、カシウス・ローベの脳天へ、灰色から漆黒にその色を変えた闇長剣を振り下ろしてしまいそうになったのだが、その寸前に唯一自由に動かすことができた口でこう叫んだのだ。
「消えろぉぉおおぉっ!」
すると、俺のその叫びに反応して闇長剣はカシウス・ローベの脳天に届くよりコンマ数秒前に消えてなくなってしまったのだった。
「ベルベッチア様っ!」
そう叫ぶカシウス・ローベに体を抱き止められた時には、俺はもう意識が朦朧としていた。
駄目だ。
もう意識を保っていられない。
このまま気を失ったらどうなるんだ?
俺はこのまま魔眼の力に飲まれてしまうのか?
次に目覚めた時、もしかしたら俺が俺でなくなってしまっているんじゃないか?
自分自身が信じられない。
恐ろしい。
恐ろしい。
恐ろしい。
いやだ。
意識を失いたくない。
でも、もう限界だ。
「ベルベッチア様! ベルベッチア様! 大丈夫でございますか? 大丈夫でございますか!」
カシウス・ローベが無事でよかった。
本当に、よかった。
本当に……。
そんなふうなことを考えながら、すぐに俺は完全に意識を失ってしまったのだった。
◇
俺が自室のベッドの上で目を覚ますと、わが妹、サーシャン・ラーグの顔がすぐ近くにあった。
久しぶりに見る妹は、なぜか赤ら顔で目を閉じて口を尖らせていた。
それでも、薄目でこちらの様子をちゃんと見ていたのか、わが妹、サーシャン・ラーグはすぐに俺が目覚めたことに気がついてこう言ってきたのだった。
「ベッ、ベルベお兄様! お目覚めになられたのですね! よかった! 決闘場が謎の攻撃に遭ったと聞かされた時は肝を冷やしましたよ! ご無事でよかったですわ!」
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ご期待に添えるように全力で大長編目指して頑張ります!!




