第42話 闇長剣の本性!
俺が闇長剣を出現させ構えると、カシウス・ローベはすぐに両手で長剣を握り直した。
どうやら、現時点での俺の闇長剣は伝説の剣士に剣を両手で握らせるくらいの価値はあるらしい。
俺はノア皇子との決闘の時以来ずっとこの闇属性魔術の長剣を出現させることを自分に禁じていたのだが、久しぶりに見るその灰色の長剣は以前には感じなかった禍々《まがまが》しいオーラのようなものを纏っていた。
「それがかつては魔王が使用していたと噂されている、同時代に一人しか出現させることができない伝説の長剣ですか。なるほど、凄まじい代物ですね。……ですが、それを使用するのが魔王なら恐ろしいですが、ベルベッチア様ならなんの問題もありません」
もちろんそのカシウス・ローベの言葉はハッタリでも強がりでもなかった。
その証拠に、中段の構えで俺に相対しているカシウス・ローベには全く隙がないように見えた。
それでも、俺は先手必勝の言葉を信じて灰色の長剣を伝説の剣士に打ち込んだ。
──シュンッッ!
カシウス・ローベの素振りの音ほどではなかったが、明らかにノア皇子との決闘の時とは違う、そんな音が俺の耳にも聞こえてきた。
しかし、カシウス・ローベは、その俺の会心の一太刀を軽々と練習用の何の変哲もない長剣で受けるとこう言ったのだ。
「いいですよ! ベルベッチア様! 素振りの成果がはっきりと現れています! このカシウスの両の手がわずかに痺れるほどに!」
その言葉に反応して、俺は気がつくとこう叫んでいた。
「決闘中にごちゃごちゃと喋るな、カシウス! 不愉快だっ! 貴様は俺に殺されないように全力で俺の剣の相手をしていればいいんだっ! 無駄口を叩いていると本当に死ぬぞっ! ……それとも俺に殺されたいのかっ?」
自分で自分の声を聞いて俺は驚いていた。
そして、すぐに俺は自分が闇長剣に取り込まれかけていることに気がついたのだった。
ヤバい!
俺が俺じゃないみたいだ!
このままだと……きっと俺は自分を完全に見失って闇落ちしていまう!
くそっ!
母の死を回避して闇落ちルートから逃れたと思ったのに、この闇長剣が闇落ちアイテムだったってことか?
「……ベルベッチア様! その瞳は、その瞳はどうされたのですか? 両の瞳が金色に──」
両目が金色に?
両方とも魔眼になってしまったというのか?
マジでヤバいっ!
邪悪な禍々しい力がどんどん湧いてきて、制御できそうにない。
マジで闇落ちする!
その前に……伝えなくちゃ……。
「……カシウス……さん、俺から離れて! 今すぐに! こうやってどうにか抑えられているうちに……早く!」
そう言った直後、闇長剣から、どす黒い閃光のようなものが四方八方に吹き出し、決闘場の壁を突き破ってどこかへ消えていった。
見れば、闇長剣は灰色から漆黒へとその色を変えていた。
──グガァアアアァアァッッ!
気がつくと俺は、そんな人間のものとは思えないような唸り声を上げながら、その灰色から漆黒に変わった長剣を手に、カシウス・ローベに襲い掛かっていた。
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ご期待に添えるように全力で大長編目指して頑張ります!!




