第36話 筆頭執事のベルベッチア評!
ベルベお坊っちゃまが最近急に聡明になられたと皆が言っているが、それについては私も同じように感じている。
しかし、祝福者に選ばれてからベルべお坊っちゃまは急に変わられたのだと皆は考えているようだが、私の見解は少し違う。
ベルベお坊っちゃまはウサギの絵皿を若いメイドが割ってしまったあの日から、すでにお変わりになっていたのだと私は睨んでいる。
なにせ私は0歳からずっとあの方のことを見続けてきたのだ。
そんな私にとっては、ベルベお坊っちゃまのほんの少しの変化ですら大きな違いに見えてしまうのだ。
ベルベお坊っちゃまは、これまで通りあの若いメイドをこれでもかというほど言葉で脅していたが、結局はあの若いメイドの髪を刈ったり、地下の牢獄送りにしたりはしなかった。
つまり、ベルベお坊っちゃまはお気に入りの皿を割られたというのに、その犯人になんの罰も与えなかったのだ。
そんなことは今までのベルベお坊っちゃまなら考えられないことだ。
どうしてあの日、急にベルベお坊っちゃまは変わられたのだろうか?
まるで別人みたいに。
そうだ。全くの別人にベルべお坊っちゃまはなってしまわれたのだ。
もしかして、魔物か何かの仕業だろうか?
だとしたら、侯爵様にお知らせすべきだろうか?
いや、全ては私の推測にすぎないのだ。
そんな推測を侯爵様に知らせられるはずがないではないか!
そうだ。魔物といえば、10歳の誕生日パーティーの前日に、魔物と戦闘をして剣術の腕を磨きたいと突然ベルベお坊っちゃまは私におっしゃったのだ。
すぐに剣術の腕を磨きたいなんて嘘だと訂正され、弱い魔物をなぶり殺しにしてストレスを発散したいのだと無茶苦茶なことをおっしゃられていたが、あれはどう考えてもおかしかった。
やはりあの時、こっそり惑いの紫の草原に行って、ベルベお坊っちゃまの様子を見ておけばよかった。
そうすればベルベお坊っちゃまに何が起こっているのか少しはわかったかもしれないのに!
そして、今、ベルベお坊っちゃまは金色の瞳を閉じて、銀色の瞳だけで、セルスナお坊っちゃまのセルリアン・ブルーの服の切れ端をじっと見つめておられる。
まるで、その服の切れ端から必死に何かを読み取ろうとしているような真剣なお顔で!
その表情を見ていると、ベルベお坊っちゃまには私には見えない何かが見えているのではないかという気がどうしてもしてしまう。
金色と銀色のオッドアイは確かにとても珍しいが、ただそれだけでその瞳に何か特殊な力が宿っていると考えるのはあまりに愚かだ。
しかし、あの日、ベルベお坊っちゃまが瞳の力に目覚められたのだと考えれば、別人のように変わってしまったことも一応は説明がつく。
「……何が見えているのですか?」
今、そう質問したら、ベルべお坊っちゃまはなんとお答えになられるだろうか。
何も見えてなどいないとお答えになられるだろうか?
それとも……。
感想、評価、ブクマを付けてくださった方々本当にありがとうございますm(_ _)m
ご期待に添えるように全力で大長編目指して頑張ります!!