第33話 はじめてのレアドロップアイテム!
俺と赤ゴブリンとの戦いはすぐに勝負がついた。
セルスナ・ラーグに渡されたなんの変哲もない長剣を中段に構えている俺に向かって、赤ゴブリンが無防備に飛びかかってきたので、俺はその体を脳天から一刀両断にしてやったのだ。
うわっ! 弱っ!
あの日、闇長剣で植物学者に化けていた山賊オークを一刀両断にした経験を持つ俺にとっては、武器が変わったところで、最弱の魔物を倒すなど簡単なことだったのだ。
しかし、闇長剣で倒した時はすぐに灰色の粒になって消えてくれたのだが、このなんの変哲もない長剣で一刀両断にした赤ゴブリンの死体はいつまで経っても消えてくれなかった。
グロいな!
これを俺がやったのか?
なんか山賊オークを倒した時には全く感じなかった罪の意識が芽生えてくるんだけど!
そんなことを考えていた俺に、セルスナ・ラーグはこう言ったのだった。
「よくやったな、ベルベ! おおっ! 赤ゴブリンの死体のあの辺りが青く光ってるぞ! ドロッブアイテムなんじゃないか?」
えっ?
ドロップアイテムって魔物の体が消え去った後に出現するんじゃないの?
死体から直に取らなきゃいけないのかよ!
「どうした、ベルベ? もしかして死体に触れるのが怖いんじゃないだろうな?」
完全に図星だったが、そんなことを言ったら師匠を辞められてしまうかもしれないので、俺はこう答えたのだった。
「怖いわけないじゃないですか! 俺は将来冒険者になるんだから……このくらいのことなんでもないですよ!」
俺はそう言って、緑色の血まみれの赤ゴブリンの死体から、その青い宝石が嵌まった指輪のようなものを抜き取った。
グロ過ぎるって!
絶対に今日はまともにご飯食べられないよ!
俺がそんな情けないことを密かに思っていたら、セルスナ・ラーグがその青い宝石が嵌まった指輪を見てこう言ったのだった。
「すごいぞ! ベルベッチア! それはA級アイテムの《青い霧の指輪》だ! その指輪を嵌めていると戦闘中の相手にだけ所有者の体が青い濃い霧に覆われているように見えるんだ! そして、その青い濃い霧は相手の物理攻撃の命中度を下げ、さらには水属性と氷属性の魔術を2分の1の確率で相手に跳ね返すことができるんだよ!」
「すごいアイテムじゃないですか!」
「そうだな! ……ベルベ、ちょっと貸してくれるか?」
セルスナ・ラーグにそう言われて俺は一瞬 躊躇してしまったのだが、結局はその青い宝石が嵌まった指輪を彼に手渡した。
「そんな心配そうな顔をするなよ! 別にオレのものにしたいわけじゃないからさ! ……少しこの指輪にオレの力を付与しておこうと思ってね!」
力を付与?
わが兄、セルスナ・ラーグはそんなことができるのか?
「一体どんな力を付与してくれるのですか? セルスナ兄さん!」
「そんなの秘密に決まってるだろ? どうにもならないピンチの時にオレの顔を思い浮かべてみな! そしたら、その力がお前を守ってくれるかもしれないから!」
「守ってくれる……かもしれない?」
「そうだ! 実は、この力の付与に成功したことはほとんどないんだよ。だから、そんなに当てにするな! ……ああ、それから、確かこの指輪の力も、1日に行使できるのは1回の戦闘のみのはずだから、いつもはその指輪を嵌めずにここぞという戦闘の時にそっと指に嵌めるのがいいだろうな!」
セルスナ・ラーグはそう言って、その青い宝石が嵌まった指輪を俺に返してくれた。
「はい。そうします。……でも、こんなすごいA級アイテムをなんで最弱の赤ゴブリンがドロップしたんだろう?」
俺がその受け取った指輪をワインレッドのチョッキのポケットに入れてから、そう率直に疑問に思ったことを口にすると、セルスナ・ラーグはこう答えたのだった。
「それがドロップアイテムのおもしろいところなんだよ! Aランクの魔物がA級アイテムを落とすとは限らないし、最弱のFランクの魔物がA級アイテムを落とさないとも限らないんだ! ……でも、普通はAランクとかのランクの高い魔物がそういう価値のあるアイテムを落とすことの方が圧倒的に多いんだけどな!」
やはりそこは原作ゲームと同じなのかと、俺が納得していると、セルスナ・ラーグはさらにこう言ってきたのだった。
「じゃあ、ベルベ! 実戦訓練も終わったことだし、次は決闘場で剣術を基礎からみっちりと教えてやろう!」
スパルタなのかよっ!
感想、評価、ブクマを付けてくださった方々本当にありがとうございますm(_ _)m
ご期待に添えるように全力で大長編目指して頑張ります!!




