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第3話 闇長剣(ダーク・ロングソード)

 自室での現状把握を終えた俺は、すぐにラーグ侯爵城の地下にある書庫に向かった。


 そこにはこの世界に存在する魔術書、剣術書のほとんどすべてが保管されているのだと70歳を優に越えた超ベテランのラーグ侯爵家の筆頭執事のエドワー・ヤースに教えてもらったからだ。


 俺はその薄暗く肌寒い書庫で数時間粘って、やっとその()()()()()()にたどり着いたのだった。




「なになに……闇属性魔術、闇長剣ダーク・ロングソード


 この魔術は、1万以上ある魔術の中で唯一、同時代に一人だけしか使うことができない独占魔術である。


 ふむふむ。


 この闇属性の独占魔術によって出現させることのできる灰色の剣は最初から凄まじい切れ味を持つが、術者の努力、研鑽によってはこの世界に斬れぬものなどない程の最強の武器となる。


 ほほう。


 闇属性魔術に天敵となる属性はないから、この魔術さえ身に付けて努力を惜しまなければ世界最強になることも可能……。


 これだ! 


 闇属性魔術のランクがAなんだからそれを生かさない手はないだろう!


 それに、せっかく陰キャぼっちゲーム廃人の俺が大好きなゲームのやりたい放題の悪役貴族に転生したんだから、闇落ちは絶対しないけど、せめてダークヒーローっぽい感じの武器で世界最強を目指さないとな。


 いちいち持ち歩かなくても魔術で出現させることができるのも得点高いし、何より同時代に一人だけしか使えないから誰とも被らないのがヲタク心を震わせやがる! 


 目指すは世界最強の闇剣士ダーク・ソーズマンだ。


 もしも主人公達に断罪されても、彼らを倒せるほどの圧倒的な実力を身につけていれば返り討ちにすることも可能なはずだ!

 

 それにうまくすればヒロイン達も……。


 見てろよ、主人公ども!


 今回のベルベッチア・ラーグ様は一味も二味も違うぞ!


 いつかはこの物語をお前達ではなく、俺の物語にしてやる!


 圧倒的な実力でな!


 ……さて、さて、ええっと、闇長剣ダーク・ロングソードと唱えると、その剣に選ばれた者の手にその長剣は姿を現す。


 ただし、すでに誰かが使っている場合はその術者が死なない限り選ばれることはないし、いくら選ばれてもその長剣を出現させるには最低でも10年は掛かると言われている……か。


 まあ、試しに一度唱えてみるか。


 ……闇長剣ダーク・ロングソード! 


 おおっ! マジかよ! 


 いきなりめちゃ渋い灰色の長剣が出現したぞ! 


 誰も使ってなかったんだ! 


 ラッキー! 


 ってか、10年掛かるはずが瞬殺って、魔眼最高じゃねえか! 


 なんでこんなチートスキルに死ぬまで気づかねえんだよ! 


 マジで宝の持ち腐れ! 


 きっと死ぬまでこの書庫に一度も来なかったんだろうな。


 ここにある魔術書か剣術書を1冊、いや1ページ、いいや1行でも読めばすぐにこの眼の価値に気づけたのに! 


マジで怠惰すぎだろ!」




 とにかくこの闇長剣ダーク・ロングソードに賭けてみるしかない。 


 そう決意しながら、ラーグ侯爵城の地下にあるその書庫を出た興奮状態の俺の頭に、ある疑問がふっと浮かんだのだった。


 ところでこの剣どうやって消したらいいんだ?


 再び書庫に戻って同じ本を読み返してみたのだが、どこにも消し方なんて書いていない。


 でも、ずっと出現させたままだと、めちゃくちゃ魔力を無駄遣いしているような気がする。


 くそくそっ!


 なんで消し方だけ書いてないんだよ!


 明日は破滅フラグだらけの俺、ベルベッチア・ラーグの運命を変えるための()()()()()()()だってのに!


 そう思って、ほとんど半泣き状態で、誰にも見つからないように体で必死に剣を隠しながら自室に戻ると、俺はひどく疲れていたらしく、剣を出現させたまま眠ってしまったのだ。


 そして、その眠りに落ちる寸前に、俺はこんな声を確かに聞いたのである。 




『まさか()()が次の使用者に選ばれるとはな。ますます手を出しづらくなってしまったではないか』 


 


 それで翌朝目を覚ますと、闇長剣ダーク・ロングソードはいつの間にかすっかり消え去っていたのだ。



 ──ラーグ侯爵夫人殺人事件発生まで、あと35時間29分25秒。



感想、評価、ブクマを付けてくださった方々本当にありがとうございますm(_ _)m


ご期待に添えるように全力で大長編目指して頑張ります!!

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