第24話 サーシャン・ラーグの泣ける話!
サーシャン・ラーグは俺にとって推しキャラではない。
特に、その兄であるベルベッチア・ラーグに転生した今では、ただただ守ってやりたい対象なのだ。
原作ゲーム『サーザント英雄伝』では、ベルベッチア・ラーグが5人いる主人公の誰かに断罪されて殺されると、ベルベッチアとその家族の幸せだった頃の日々を殊更感傷的に描いた美麗なムービーが2分の1くらいの確率(ラーグ侯爵夫人殺人事件のムービーと半々)で流れて、謎にプレイヤー達を泣かせようとしてくるのだが、そこにベルベッチアの唯一の妹であるサーシャン・ラーグも毎回登場するのだ。
そして、そのムービーの中でプレイヤー達がうっかり涙を流してしまうのが、ベルベッチアとサーシャン・ラーグの幼い頃の他愛ない会話の場面なのである。
「ベルベお兄様の将来の夢はなんでございますか?」
「将来の夢……そうだなぁ、死ぬまで自分らしく楽しく生きることかなぁ、グヘヘヘヘ!」
「まあ、素敵! 素晴らしい夢でございますわ! ベルベお兄様、グフフフフ!」
なんでこんな場面を見て泣くのだと思うかもしれないが、ベルベッチアが断罪されて殺された直後に見るとなぜか泣けてくるのだ。
そして、その後の二人はといえば、ベルベッチアはラーグ侯爵夫人殺人事件のせいで闇落ちし殺人狂となり、サーシャン・ラーグはそんな兄のことを心配しつつも距離を置くようになっていくのである。
つまりあの他愛ない会話は、実は最後に兄と妹が笑い合った思い出の記録なのだ。
泣けるではないか!
さらに、5人いる主人公の誰かに断罪されて殺されたベルベッチアの敵を、ずっと距離を置いていたはずのサーシャン・ラーグが取ろうする展開がその後に用意されているので、そこでプレイヤー達はさらに胸を引き裂かれるような思いに駆られるのである。
しかし、サーシャン・ラーグは魔術の天才なので、その驚異的な威力を持つオリジナルの上位魔術によって主人公が殺されてしまうことも十分にあり得るので、彼女に感情移入してばかりはいられないのだが。
それでも、ゲーム終盤に用意されているサーシャン・ラーグとの一戦では、熱心なプレイヤーほど目に涙を溜めながら彼女と戦うことになるのだ。
「一瞬で殺して差し上げますわ! ベルベお兄様にあの世で土下座して謝りなさい!」
すっかり美しい女性へと成長したサーシャン・ラーグはそう叫んだ後、兄、ベルベッチア・ラーグが一番気に入っていたというオリジナルの上位魔術を放ってくる。
それは本当に物凄い代物で、俺も5人いる主人公の誰かでプレイしていた時に何度もそれで殺されかけた。
だからこそ、その時サーシャン・ラーグが流していた悲しい涙をこのリアルな世界で俺は絶対に彼女に流させたくないのだ。
俺は絶対に闇落ちしないし、主人公の誰にも殺されたりしない。
それは俺のためであると同時に、愛しい妹、サーシャン・ラーグのためでもあるのだ。
感想、評価、ブクマを付けてくださった方々本当にありがとうございますm(_ _)m
ご期待に添えるように全力で大長編目指して頑張ります!!




