第22話 サーシャン・ラーグはヤバい妹②
「やっと二人っきりになれましたわね! ベルベお兄様! 本当にこのサーシャを焦らすのがお上手なのですから!」
このサーザント王国一の魔術の天才である、わが妹、サーシャン・ラーグはドMなのではあるまいかと俺は密かに思い始めている。
やはり、この金髪、碧眼の超絶美少女の見た目でドM性癖は兄としては少々心配だ。
これ以上悪化させないためにもドS発言は慎まねばと思うのだが、そういう発言をした時の彼女の反応がいちいちかわいいのだから仕方ない。
「あらためて、運命の女神の祝福者に選ばれたこと、おめでとうございます! このサーシャも妹として誇らしかったですわ!」
「ああ……」
「サーシャは唯一運命の女神の祝福者になられたベルベお兄様が次期当主になられるべきだと思います! もしくはウルお姉様に……とにかく型破りな人間が次の当主にならなければラーグ家のこれ以上の発展は望めないとサーシャは思っておりますの!」
「ああ……うん」
「ベルベお兄様? どうされたのですか? クソメイドがいなくなったら急に大人しくなられて。……もしかして二人きりになって照れてらっしゃるのですか? かわいらしい!」
「だからなんでそんな発想になるんだ? 愚かな妹!」
「キャーッ! やっぱりやる気満々なんじゃないですか! サーシャがかわいすぎるから、今日こそはベルベお兄様に襲われちゃうのかしら! ドキドキ!」
「何をトチ狂ったことを……」
そんなわちゃわちゃしたやり取りを終えると、わが妹、サーシャン・ラーグは急に真剣な顔(これがまたかわいい!)になってこう言ったのである。
「……ベルベお兄様、今回の最新作は、雷属性魔術の、聖なる雷と風属性魔術の音のない風をブレンドしたものです! 名前はまだつけていませんので、もし気に入っていただけたら、ベルベお兄様がつけてくださいますか?」
「気に入ったらな」
「キャーッ! ……では、お見せします、自己最高を常に更新し続ける美少女、このサーシャの最新作を!」
そう言うと、わが妹、サーシャン・ラーグは右手に白く光る雷、聖なる雷を、左手に無音の小さなつむじ風、音のない風を出現させ、その両手をゆっくりと合わせた。
すると、わが妹の両手から白く光る雷と無音のつむじ風が螺旋状に混じり合ったものが、俺の部屋の天井に向かってゆっくりと立ち上っていった。
その螺旋状の合成物が天井に届きそうになる寸前に、おそらくは魔眼もしくは聖眼の危機察知能力で何かを感じ取った俺は、
「ヤバいっ!」
と叫んで自室の壁に生活魔術で観音開きの大きな窓を出現させて、それを全開にした。
その直後だった。
わが妹がその初めて見る合成魔術を窓の外に向かって撃ち放ったのは!
とんでもない速度で放たれたその雷と風の合成魔術は一瞬で見えなくなり、しばらくすると遥か遠くから爆発音のようなものが聞こえてきた。
「サーシャ! やりすぎだ! どこかですごい爆発が起こったぞ!」
俺がそう叫ぶと、わが妹、サーシャン・ラーグはこう言ったのである。
「大丈夫ですよ! あっちは山しかないクソ田舎貴族のミーゼンツ侯爵家の領地ですから!」
ああ、これはきっと明日の朝にはひどい騒ぎになるな。
俺は午前1時の窓の向こうの真っ暗な景色を見遣りながら、そう確信のだった。
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ご期待に添えるように全力で大長編目指して頑張ります!!




