第16話 元婚約者のクソ女からの魔術書簡①
キャロライン・ミンゼー。
それは言うまでもなく、一方的に向こうから婚約破棄をしてきた俺の元婚約者の名前だった。
俺はその魔術書簡の封を乱暴に破いて、中の手紙を取り出した。
『親愛なる
ベルベッチア・ラーグ様
ベルベッチア様、運命の女神の祝福を受けられたようで誠におめでとうございます!
わたしも婚約者として、今年全世界で10人目の祝福者に貴方が選ばれたことをとてもうれしく思います。
そんな貴方にどうしても直接お会いしたくてこの書簡を今書いております。
とにかく今すぐに会いたくて堪らないのです!
きっと貴方も同じ気持ちだと思います。
直接会ってお互いの顔を見れば、すぐに昔の気持ちに戻ることができるに違いありません。
昔のようにラーグ侯爵城で見つめ合って語り明かしましょう。
いいお返事をお待ちしております。
貴方の婚約者
キャロライン・ミンゼーより』
すげーな、こいつ。
自分から婚約破棄しといて、よくこんな書簡を送ってこられるよな。
どういう神経してんだ?
俺はそのイラつく気持ちをたっぷりと込めて、すぐに返事の魔術書簡を書き始めた。
『親愛なる元婚約者
キャロライン・ミンゼー様
あなたから婚約破棄されて運気が上がったのでしょうか?
お陰さまで、無事10歳の誕生日にあなたが受けられなかった運命の女神の祝福を受けることができました。
ありがとうございます。
さて、俺に直接会いたいとのことですが、丁重にお断りします。
俺は別にラーグ侯爵城であなたと見つめ合って語り明かしたくないです。
昔も語り明かしたりなんかしなかったと思いますし。
では、最後になりましたが、あなたによい出会いがあることを祈っております。
運命の女神の祝福を受けた祝福者に対して一方的に婚約破棄を突きつけたという噂が広まらないうちに、早く新しい相手を探してくださいね。
あなたの元婚約者
ベルベッチア・ラーグより』
そこまで書き終えて、その魔術書簡を送る(書簡を手に持って相手の名前か顔を頭に思い浮かべると送ることができる)と、ウルスナ・ラーグから届いた魔術書簡をデスクの引き出しに仕舞い(返事はアナシアのことが片付いてから書こうと思っていた)、キャロライン・ミンゼーから届いた魔術書簡をビリビリに破いてゴミ箱に捨ててから、俺はずっと外で待ってくれていたアナシア・ダッシェンウルフを再び部屋に招き入れた。
「長いこと待たせてしまってすまなかったな」
俺がそう言うと、アナシア・ダッシェンウルフは一瞬ゴミ箱の方を見てからこう答えた。
「……あまりうれしくない相手からの書簡だったみたいですね」
「いや、別にそういうわけでもないんだ。あの後また新たな魔術書簡が届いたんだが、最初の1通目は純粋にうれしい相手だったし、新たに届いた2通目もある意味ではうれしい相手だった。……でも、そんなことより、アナシア。お前は俺の返答を聞きたいと思ってずっと待っていたんだろう?」
俺がそう問うと、アナシア・ダッシェンウルフは初な女みたいに頬を赤く染めて、こくりと小さく頷いたのだった。
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ご期待に添えるように全力で大長編目指して頑張ります!!




