Day 3 友の為に エピローグ
「おはようラタ、今日こそ学校に連れて行きますわよ!」
「行かないって言ったでしょルサンチマン! あと騒がないで、お師匠様が起きたらどうするんですか」
「先輩ってこの時間まだ起きてないんですの? でしたらわたくしが起こしてきますわ」
「お師匠様がそんな簡単に寝室の扉を開けると思ったら大間違いなんだから」
私は今、ルサンチマンに起こされて思い瞼を何とか開いて朝食に齧りついている。
しかし何だこの朝飯は、味がないぞ。
「お師匠様、それバターもジャムも付けてませんよ! まったく、しょうがないお師匠様でs」
「先輩、ほらあーんして下さいな」
「んあ」
口の中が甘い、めちゃくちゃに甘い。
だけど味の無いパンと口の中で混ざって丁度いい。
「る、る、ルサンチマン! お師匠様の口の中にそんなヌメヌメしてドロッとした物を入れるなんて……変態!」
「……先輩、この人は何を言ってますの?」
「知らん」
「あ、お師匠様の口に運んだジャムスプーンが輝いてる。唾液と、ジャムが入り混じった艶が私を引き込む……お師匠様が悪いんですよ、そんなえっちな食べ方したのが悪いんです! 私は被害者なんですからね」
「ルサンチマン」
「わかってますわ、もう拭いてます」
使用済みスプーンを舐め回そうとしたラタよりも早くルサンチマンがそれを手に取り、タオルで綺麗に拭き取っていた。
「ぐぬぬ……ルサンチマン! 毎日毎日店にきて契約もせずお師匠様と喋って、何しにきてるの」
「わたくしとラタはお友達ですわ、お友達に会うのに理由なんて必要ありません」
「こっちは友達だと思ってない! あとお師匠様を先輩とか呼ぶのは止めなさい、お師匠様はあの大魔術師タリラ様ですよ」
「でも先輩とわたくしは同じ学校の卒業生と生徒、意識せずとも先輩後輩の関係になるのは致し方ありませんわよ? ですよね、先輩」
ルサンチマンに課した条件。
それは……。
『ラタさんと友達に、ですの?』
『ああ、そんでもってあいつを学校に行かせて欲しいんだ』
『それは構いませんが……どの学校ですの? 見た目から察するに不登校になった中等学生だと思いますが』
『年齢は私も知らん、だが一応ルサンチマン後輩の学校でも通用するレベルの魔術師には育てたつもりだ』
『……深い事は聞きません、命の恩人にして先輩の頼みは分かりました』
『やってくれるか』
『勿論です! それに初見だと嫌な人みたいに感じましたけど、もしかしたらいいお友達になれるかもしれませんし』
ルサンチマンとラタは仲良しになった。
よかった、ついにラタに友達が出来た。
あれおかしいな、攻撃された訳じゃないのに涙が出てくる。
「ほら今日こそ学校行きますわよ!」
「行くわけないでしょこのエセお嬢様!」
仲いい間柄ならではの軽い罵り合いもある。
ああ、青春だな。
「ちなみにですけど、わたくしと同じ学校に入れば貴女もタリラ先輩の後輩ですわ」
「それがどうしたんですか? 私はもうお師匠様の唯一の弟子としてほポジションが」
「でも制服を手に入れて正式に後輩になれば、タリラ先輩とそういうシチュもありえるかと」
……おいルサンチマン、何いってんだお前。
「つまり、不良のお師匠様に脅された私が無茶苦茶にされるシチュとか! 本で見たことしかないけど、制服デートとかもあり得るってこと!?」
ない。
いやお前、私が制服着てたらもうそれはキツイだろ。
……まて、まだいけるか?
一応まだ若いよな、うん、私は十分に若い。
だけどやっぱり制服は……。
「ありえますわ! タリラ先輩はラタが学校に通うのなら、制服を着て先輩後輩プレイをしてくれると言っているのを聞いた事がありますもの!」
「ルサンチマンおま」
「それをなぜ早く言わないの! ほら、さっさと学校に案内して!」
「入学試験がありますが、その格好で大丈夫ですの?」
「仕事の時はずっとこの格好だからこれでいい! ではお師匠様、いえ、先輩……フフッ、制服着てまってて下さいね」
ルサンチマンは私の怒りのこもった目線に気づかず、ウインクをした。
まるで、約束は守ったぞといわんばかりの表情だ。
「でも試験って受けた事ないけど、どんな物なの?」
「魔術の事を聞かれたり実戦を見てもらったり、あとは先生と戦ったりですわ」
「ちなみにそれって、先生とやらを殺したら合格?」
「やれる物ならやってみろ、ですわ」
ハァ……。
「制服、探すか」
探し出した制服を着ようとしたが、スカートのサイズが合わず、上着もピッチピチになっていた。
体重……増えたのか。
「おやタリラ様じゃねぇか! 服屋なんかにどうして」
「大至急これを仕立て直して欲しい、夕方までになんとかしてくれ!」
「え、これ学生服……あっ」
服屋の店長からは何か勘違いを受けたようだが、サイズを今の私に合わせてくれた。
……って、結局金使ってるじゃん!