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Day 6 夢の薬 上


 

 最近流行りだした薬物がある。

なんでも、使えば急激な睡魔に襲われるが夢の中で必ず一番会いたい人と会えるらしい。

しかも、この薬物を使って夢の中で体験した事は次薬物を使った時にも引き継がれ、楽しい夢の続きをずっとみられるらしい。

会いたい人、ねぇ。

 

「あの薬物、えーっとドリミンでしたっけ? 流行ってますよね」

 

「戦争が長いからな、需要はあるんだろ」


薬物は普通規制される。

だが、規制された頃にはまた別の薬物が現れるいたちごっこになるのは確実で、少し成分をいじって別物として流通させて……まぁ、めちゃくちゃになるんだ。

 

「夢の中で体験しても消えてしまう、いい事なんて無いのに何で使うんでしょうか」

 

「たとえ夢の中でも死んでしまった大切な人と話せたり、触れ合えるってんだから需要あるだろ」

 

「起きたら消える夢の内容にどんな意味があるんでしょう、それなら現実で努力すべきです。愛する人が殺されたなら敵を討つ為に、伝えたい事があるなら言うべきだと思います」

 

「努力でどうにもならない事もあるんだよ」

 

「それはそうですけど……」

 

この薬の存在を聞いた時、真っ先に思ったのはルサンチマンには絶対に使わせてはいけない物だという事だった。

自分の過去に囚われ、後悔している彼女に薬物を与えてしまえばハマるのは確実、夢の中からでてこなくなるかもしれない。

 

「お師匠様は会いたい人とかいますか?」

 

「うーん、そうだな」

 

「あ、やっぱり言わないで下さい! 思い出さないで!」

 

「そういやアイツ可愛かったよな……あの戦士もなかなかかっこよくて」

 

「聞きたくないです! お師匠様の思考が寝取られる、脳内寝取りで脳が破壊されます!」

 

最近のこいつの扱い分かってきたぞ。


ラタと雑談をしながら街を歩いていると、フードを被ったいかにも怪しそうな男が目に入った。

持っているあれは、多分薬だな。

 

「……チッ」

 

別に通報とかしないってのに、睨まなくていいだろ。

 

「しかし何もかも高いな、見てみろ先週に比べて肉が2割増じゃないか?」

 

「3割増ですよ」

 

「ほら洗剤だって1割増だ」

 

「あれは4割増です」

 

……くっそ、普段買い物とか来ないからラタがめちゃくちゃ得意気な顔で私を見てやがる。


「まったく、お師匠様はやっぱり私がいないとダメなんですから、1人じゃ破産しますよ」

 

「うるさい」

 

帰り道に人集りがあったのでそれを避けるように帰ってきたが、人々の見る先には一枚の注意喚起の張り紙があった。

 

『薬物使用厳禁! 夢の中から戻ってこられないケースが多発中!』

 

そこまでは読めたが、その先は細かすぎて読めたもんじゃない。


「お師匠様、店の前で誰か待ってますよ」

 

見ると1人の少年がそこにいた。

落ち着かない様子で、閉じた扉をノックしている。


「お客様でしょうか」

 

「とりあえず話聞いてみるか」

 


 「母ちゃんを助けて欲しい!」

 

少年の名前は……ガイアか。

救出対象は母親で、出発後契約。


「私達の救出率は100%ですから安心して任せてね、ガイア君」

 

「頼む、どうか、どうか母ちゃんを!」

 

「その為にもお母さんが何処に行ったかお姉さんに教えて欲しいな」

 

「え、同い年じゃ」

「お姉さん、だよね?」

 

ラタの奴あの少年に子供だと思われてやんの。

まぁ私もラタの正確な年齢は知らないけれど、少年よりは年上のはず。

まぁこればっかりは本人が年齢を覚えてないってんだから仕方ないけど。

 

「ヒッ……お、お姉さん、すいませんでした」

 

「力関係が分かってえらいね、それじゃあ早くお母さんが何処に行ったか書いてくれる?」

 

「母ちゃんなら家にいる!」

 

家?

なのに契約?


「……お姉さんをからかってるのかな?」

 

「ちがう! 母ちゃんは家にいるけど、戻ってこないんだ!」

 

「お師匠様、こいつ去勢して反省させますか? それかどこかの変態貴族に売りますか?」

 

「ヒィッ!」

 

家にいながら回収依頼か。

ふむ、つまりこれは。

 

「俺、そんなつもりなくて、その、よく眠れて疲れが取れるって言われたから母ちゃんにあげただけなんだ」

 

「お師匠様、これって」

 

「ああ、多分ドリミンの影響だろ」

 

「それだ! 優しいおじさんが配ってたんだよ、疲れが取れる、よく眠れる、いい夢が見られるって言われて……」

 

知らない人からもらったお菓子を食べるなとよく言うが、知らない人からもらった薬なんて絶対に飲んじゃダメだろ。

子供も子供だが母親も母親だぞこれ。

 

「どうしますか?」

 

「ガキ、お前の母親は何錠飲んだか覚えてるか」

 

「えっと……たしか4つ!」

 

成分を知らない事にはなんとも言えないが、普通こういう薬って1錠で効果があるんじゃないのか?

ダメだ、情報が足りなすぎる。

 

「そんなのぶん殴って起こせばいいのに」

 

「やったよ! 水をかけても、たたいても、針で指先を刺しても起きないんだよ!」

 

感覚が遮断されている、もしくは麻痺しているな。


「お師匠様、どうしますか? 焼いてみます?」

 

「焼く!?」


「うん、人間はね、焼かれるととっても痛いから起きるとおもうんだ」

 

「か、母ちゃんを殺す気か!」

 

「ラタ、あんまり脅すな」

 

とにかくまずは情報収集だ。

薬に詳しい奴から話を聞いて、成分の分析に解毒薬か覚醒薬を作って起こすかな。

 

「んでガキ、お前は何を支払うんだ?」

 

「俺の小遣い全部持ってくる! 足りなきゃ働いて払うから」

「あのね、それじゃ足りないってお姉さんのお師匠様は言ってるの」

 

ガキだからといって値引きはしない。

もし甘い対応をしたのが知られれば他の客も子供を使って依頼してくる、あれっきりだと言っても周囲からの評判は落ちるし、信頼も失う。


「そんな……」

 

「少し待ってろ……あ、先に聞いとくがお前は母親の為に全てを捨てられるか?」

 

「もちろんだ! 母ちゃんの為なら死んでもいい!」

 

「わかった、なら契約する。まずお前は母親に飲ませた薬をもう一度手に入れてこい、どんな手を使ってでもな」

 

「わかった! すぐとってくる!」

 

少年は店を飛び出していった。

どこかから盗むにしろ買うにしろ、きっと半日は帰ってこないだろうからその間に支度するか。


「お師匠様、どうするつもりですか? 契約の支払いも不安ですけど、それ以上に薬の影響からの回収なんてしたことありませんよ」

 

「大丈夫だ、支払いも回収も目処はついてる」

 

とりあえず薬の専門家に聞くとするか。

 

「出かける」

 

「私も生きます!」

 

「ガキが戻ってきた時に薬を受け取る役目があるからお前は残ってろ」

 

「うぅ、わかりました」

 

「ああそれと、ノクターンに連絡しとけ」

 

「……成る程、わかりました! お金は大丈夫そうですね」

 

「値段交渉もお前に任せる、しっかりやれよ」

 

「おまかせ下さい!」

 

私は店を出て、行きたくないがハンターギルドに行く事にした。

あそこの道具屋は割高だが何でも売ってる、つまり何にでも精通してるって事だ。

ゆーゆーなら何か知ってるに違いない。

 

「……あいつに支払う情報料も上乗せしないとな」

 




 


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