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囚われのエルフ

ゴブリンキング視点

 

 ゴブリンの巣の最奥にある広間。暗い空間に響くのは、ゴブリンたちの低いざわめきと、リリスを囲む冷たい鎖の音だけだ。


彼女の目は虚ろで、その美しい顔は疲れと屈辱に満ちていた。ゴブリンキングは玉座に座り、その光景を楽しむかのように見下ろしていた。


「お前がここにいるのは、自分の選択だ、リリス。」


 彼は冷たく笑みを浮かべ、声を低くして続ける。


「あの日、ゴブリンを倒しに来たお前たちハイエルフのお前と戦士たち、まさに英雄気取りだったな。だが……結果はどうだ?仲間は全員、我が軍によって殺され、そしてお前はその高貴な身を差し出さざるを得なかった。無様だな。」


 リリスはゴブリンキングの言葉に反応せず、ただ彼を冷ややかに睨み返した。しかし、あの悲劇的な日の記憶が鮮明に脳裏に蘇っていた。


 仲間たちと共に、彼女はゴブリンキングを討つためにこの巣に侵入した。彼女たちは強力なエルフの戦士たちであり、準備も整えていた。


戦いは激しかったが、エルフたちは次々とゴブリンの精鋭を倒していった。しかし、ゴブリンキングの策略により、彼らは徐々に追い詰められ、決定的な瞬間にゴブリンたちが人質を取り、リリスに選択を迫った。


「お前は、人質を取られて我々の前にひれ伏したのだ。高貴なエルフの誇りはどうした?結局、仲間たちを守るために自らの命を差し出したが、奴らも結局全員死んだ。」


 その言葉を聞いても、リリスは唇を噛みしめて黙っていた。彼女の仲間たちは、最後の瞬間まで彼女を守ろうと戦い、全員が命を落とした。彼女だけが、ゴブリンたちの要求に屈し、無力なまま捕まってしまったのだ。


「悲劇的だが、仕方がない。お前の選択が、今のお前をここに繋ぎ止めている。だが、その選択のおかげで、今や我々の軍はさらに強大なものになるのだ。」


 ゴブリンキングは立ち上がり、リリスに近づく。彼女の美しさと魔力を強引に手に入れようとする彼の目には、欲望と支配欲が満ち溢れていた。


「お前の仲間たちは死んだが、私はお前を生かしておく。お前の魔力を、我が軍の増強に利用するためにな。お前の力で、より強力な力をつける。美しさも、魔力も、すべて我がものだ。」


 リリスは無言のまま目を閉じた。彼女は今、自分の力が封じられ、仲間たちを守れなかった後悔と屈辱に耐え続けていた。しかし、彼女の心の中には、決して屈しない強い意思が残っていた。


「だが、今は別の問題がある。」


 ゴブリンキングは苛立ちを隠せず、怒りを露わにして振り返った。


「虫けらのようなカマキリが、我が軍を次々に倒している。奴め……どこから現れたというのだ?ただの魔物が、ここまで混乱を引き起こすとは。」


 ゴブリンキングは拳を強く握り締め、玉座に叩きつけた。


「奴は一匹でここまでゴブリンたちを倒している。信じられん……だが、奴がここに来た時には、私がその首を取ってやる!」


 怒りに燃えるゴブリンキングは、部下たちに向けて強い声で命じた。


「すぐに、奴を捕らえよ!生け捕りにして、我の前に引きずり出せ!もう好き勝手させるわけにはいかん!」


 ゴブリンの部下たちは慌てて命令に従い、広間から飛び出していく。リリスはその様子をじっと見つめていたが、胸の中にはわずかに希望が灯っていた。そのカマキリの存在が、彼女にとって唯一の希望となっていた。


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