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ザルザール

 ザラザールの一撃をかわし、俺たちは距離を取って彼の動きを見極めていた。


 巨体に見合わず、彼の動きは鋭く、俺たちの隙を常に狙っている。


「人化は解除するしかないな」


 加減して勝てる相手ではない。


 再生能力を持つアンデッド幹部としての圧倒的な力に、どこか打開策を見つけないと、持久戦では勝てない。


「ゼラン、ノエル!光属性を付与するには、少し時間が必要よ!」


 リリスが焦ったように声を上げる。


 その言葉を聞いた俺は時間稼ぎが必要だと感じ、ザラザールの注意を引くために、彼に向かって突進した。


「時間は俺が稼ぐ!」


「任せて!」


 ザラザールがその巨剣を振り下ろす瞬間、俺は足元に魔力を込め、ファントムスピードで素早く回避し、彼の懐に飛び込んだ。


 鋭い斬撃を彼の胴体に浴びせるが、後ろからノエルも斬り掛かるがその傷はすぐに黒い瘴気によって再生してしまう。


「貴様ごときの攻撃では、我が肉体に傷一つ残せんぞ…!」


 ザラザールが不敵に笑い、再び剣を振り上げる。


 だがその瞬間、俺は擬態で姿を隠し、彼の背後に回り込んだ。


 再び剣を振り下ろそうとするが、再生するザラザールに決定打を与えられず、焦りが募る。


「リリス、早くしてくれ…!」


 俺が心の中で叫んだ瞬間、リリスが輝く魔法陣を描き、俺の方に向かって手をかざした。


 空中に放たれた光の粒が俺に宿り、眩い光が俺の鎌に纏われる。


「ゼラン、これでいける!今なら、あいつの再生を封じられるわ!」


 リリスの声に応じて、俺は光の力を帯びた二振りの刃を構え、ザラザールに向かって再び突進した。


 今度こそ、この光の力で決着をつける。


 刃を振り下ろす、光の剣がザラザールの胸に突き刺さり、その体が一瞬震えた。


 再生しようとする傷口が光に焼かれ、黒い瘴気が消え失せていく。


「この光…何だと…!?」


 ザラザールが驚愕の表情を浮かべた瞬間、俺は刃を振り抜き、彼の腕を切り落とした。腕はそのまま地面に落ち、再生することなく黒い炎に包まれて消えていく。


「今だ!ノエル合わせろ!」


「これで終わりよ!リリス!」


 ノエル叫ぶと、リリスが後方から強力な魔法を放った。光の束がザラザールの体に直撃し、彼の動きを一瞬止める。


「これで終わりよ…!」


 リリスの声とともに、俺は最後の力を振り絞り、光の力を最大限に込めた刃をザラザールの胸に深く突き刺した。


 剣がアンデッドの核を貫き、光が彼の体全体に広がる。


「我が…主…リッチエンペラー様…」


 ザラザールはそう呟きながら、光に包まれて崩れ落ちた。彼の巨体は黒い灰となり、地面に消え去っていく。


 ザラザールが消滅した後、俺はその場に膝をついた。


 光の力が消え、再び静寂が戻ってきた。


 リリスとノエルも息を切らしながら立っているが、その顔には達成感があった。


「…やったな、リリス、ノエルこれで…」


 俺は言葉を切り、ふと封印の場所に目を向けた。しかし、その場所からはまだ不穏な力が漂っている。


「…封印は、まだ完全に安定していない…」


「まずいわね……リリス後どれくらい封印できるの?」


「このままだと10年持てばいい方ですね、今の私の力では現状維持しかできないです」


 リリスが眉をひそめ、石碑に近づく。彼女は再び魔力を注ぎ込み、封印を強化しようと試みた。だが、その表情は明らかに緊張していた。


「リッチエンペラーの力が…ここまで強くなっているなんて…」


 リリスの言葉に、俺は背筋が凍る思いがした。


 ザラザールを倒しても、まだ全てが終わったわけではなかった。


 封印を完全に安定させない限り、リッチエンペラーの復活は現実のものとなってしまう。


 ザラザールを倒した余韻が残る中、俺たちはしばらくその場に立ち尽くしていた。


 倒したとはいえ、緊張が解けたわけではない。俺の心には、まだこの地を支配している不穏な力が感じられていた。


「リリス…この封印、今は大丈夫なのか?」


 俺はふとリリスに問いかけた。彼女は石碑に手を触れ、魔力を注ぎ込みながら険しい表情を浮かべている。


「ザラザールを倒したことで一時的に封印は安定したけれど…まだ安心はできない。この封印の力が、これほどまでに弱まっていたとは…。」


 リリスは魔力を注ぎ続け、石碑に宿っていた不気味な気配が少しずつ消えていくのを感じたが、完璧に封じ込めることはできていない。


 封印の隙間から、微かに漏れ出る瘴気がまだ残っている。


「これでは、いずれ封印が完全に破られてしまうわ…リッチエンペラーが目覚めるのも時間の問題ね。」


 俺はその言葉を聞いて眉をひそめた。


 ザラザールが現れたということは、すでに何者かが封印に手を加えているのは間違いない。


 だが、ここに来たのは俺たちだけではない。何かが、この封印に働きかけている。


「奴らがまた封印を狙ってくる可能性もある。早くギルドに報告して、対策を立てないとな。」


 俺は剣を収め、周囲を警戒しながら次の動きを考えた。リリスも頷き、魔力を回収しながら立ち上がる。


「このまま放置しておけば、リッチエンペラーが完全に復活してしまう。ギルドに戻って、次の手を考えましょう。」


 ギルドに戻ると、緊張感が漂っていた。


 リリスと俺は、急ぎギルドマスターの部屋へと向かい、封印の現状を報告した。


 ギルドマスターはリリスの話を黙って聞きながら、鋭い眼差しで俺たちを見つめていた。


「ザラザール…そして封印の弱体化か。」


 イリオスは思案しながら、何かを考えている様子だった。


 その言葉を聞いて、俺はさらに緊張感を覚えた。


 900年前の賢者が施した封印が、破られようとしている。これが何を意味するかは、明白だ。


「ギルドマスター、私たちは何をすべきですか?」


 リリスが問いかけると、イリオスはゆっくりと立ち上がり、部屋の窓から外を見つめた。


「リッチエンペラーが目覚めれば、この地は再びアンデッドの軍勢に覆われる。お前たちには、封印の強化を急いでほしい。だが、それだけではない。何者かが封印に手を加えている以上、その者たちを排除しなければならない。」


 イリオスの言葉には重みがあった。俺たちはすぐに行動を起こさなければならないという緊張感が全身を駆け巡る。


「封印の場所にはアンデッドが集まっていたが…それを操っている者がいるということか?」


 俺の問いにアルディオンは頷いた。


「その通りだ。カルト教団が密かにこの地に暗躍しているという報告がある。奴らはリッチエンペラーの復活を目論み、儀式を進めているのだろう。その教団のリーダーと幹部は、アンデッドとして復活しているとの情報もある。」


「アンデッドの幹部…。」


 俺は思わず拳を握りしめた。ザラザールのような強敵が他にもいるのなら、これからの戦いはさらに厳しいものになるだろう。


「お前たちには、教団の存在を探り出し、可能ならばリーダーを討つことを任せる。リッチエンペラーの完全復活を阻止するためには、教団の活動を止めなければならない。」


 アルディオンの言葉を聞き、俺たちは決意を新たにした。封印の脅威が迫る中、俺たちに与えられた使命は重大だった。


 ギルドマスターの指示を受け、俺たちは再び動き出す準備を整えた。


 リリスとノエルも共に行動することになり、俺たちのパーティーは新たな戦いに向けて歩みを進める。


「まずは、カルト教団の拠点を探る手がかりを見つけないとな。」


 俺はリリスに声をかけ、次なる目的地を見据えた。封印を守り、教団を排除するための新たな戦いが、今始まろうとしていた。

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