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エルフとダークエルフが住む町

 


 救助隊が救助された人々を馬車に乗せ、準備を進めている様子を眺めながら、リリスが俺に向き直った。


「ゼラン、私たちもそろそろ出発しましょう。」


「俺たちも?でも、救助隊と一緒に行くんじゃないのか?」


 俺が少し戸惑って尋ねると、リリスは穏やかな笑みを浮かべて首を振った。


「いいえ、彼らはここでの救助活動や帰還の準備に時間がかかるわ。私たちは先にエリュシアに向かいましょう」


「そうか……それなら先に行くか」


 俺が納得して頷くと、リリスは救助隊の隊長に一礼した。


「私たちは先にエリュシアへ向かいます。ここから先は皆さんにお任せします。」


 隊長は、すぐに深く頷いた。


「承知しました。リリス様、ゼラン殿、お気をつけて。後のことはこちらで対応します。」


「ありがとう。皆さんもどうか無事でいてください。」


 リリスの言葉に敬意を込めた頷きを返し、救助隊のリーダーは再び指揮を執るために振り返った。

 ら

 俺たちはその場を離れ、エリュシアに向かうために静かに歩き出した。


「そういえば救援隊の人達はこの後どうするんだ?」


 俺は歩きながら、ふと頭に浮かんだ疑問をリリスに尋ねた。


「この後、エルフの国で怪我と心を治療してから、彼らはそれぞれの家に返されるわ。私達は先にエリュシアに向かいましょう。」


「そうか…でも、わざわざエルフの国まで俺が行っていいのか?」


 俺は少し戸惑いながら問い返す。


 俺はカマキリとして生まれ変わった存在であり、異質な存在だということを忘れたわけではない。


「もちろんよ。あなたは私の恩人だもの。それに、エリュシアでお礼をさせてほしいって言ったのは私のわがままなのだから。」


リリスは真剣な表情で俺を見つめた。


 俺は彼女の視線を受け、少しばかり心が温まるのを感じた。


「そっか、分かったよ。じゃあ、リリスの国を見させてもらうとするか。」


「楽しみにしていて、エリュシアはきっと気に入るわ。」


 リリスの瞳が少し輝きを増し、笑顔がこぼれる。


 俺は頷き、再び前を向いて歩き出した。


 エリュシア…エルフの国。そこで何が待ち受けているのか分からないが、楽しみだ。


 リリスと俺はエルフの都市を目指して旅を進めていた。


 道中、リリスはエルフとダークエルフが共存している町が近くにあることを教えてくれた。


「エルフとダークエルフが一緒に住んでる町があるのか?」


 俺は少し驚きながらリリスに尋ねた。


 エルフとダークエルフが協力しているイメージはあまりなかったからだ。


「ええ、私たちエルフとダークエルフの関係は複雑だったけれど、この町をきっかけに長い年月をかけてお互いに協力し合うようになったの。この町は両者の知恵や文化が融合した特別な場所よ。訪れる価値があると思うわ」


 リリスの説明に興味を惹かれた俺は、その町に立ち寄ることを決めた。



「それじゃあ、まずその町に行ってみようか。いろいろ見てみたいし」


 リリスは微笑んで頷いた。


「ありがとう。あなたにもこの町の文化を見てもらいたいわ。きっと役立つはずよ」


 道中は静かで、森の中を抜けていくと、エルフとダークエルフが共に暮らす町が見えてきた。


 町は緑豊かな森の中に溶け込むように広がり、木々の枝を生かしたエルフの優美な建物と、石造りの堅牢なダークエルフの建築が調和して立ち並んでいた。


 リリスと俺がエルフとダークエルフが共存する町「エリュシアの共存都市」に近づいたとき、リリスが急に足を止めた。


「ゼラン、少し待って。私はこのままでは町に入れないの。もし素顔のままで入ったら、すぐに騒ぎになってしまうわ」


 俺は彼女の言葉に驚いたが、どうやらリリスはハイエルフであり、エルフの中でも特に高貴な存在だと思われてるらしい。


 そのため、彼女の姿が露わになると、町中の人々が驚き、混乱を招く可能性がある。


「そうか、変装が必要なんだな」


 リリスは頷き、静かに呪文を唱え始めた。


 彼女の周囲に淡い光が漂い、瞬く間にその姿が変わっていく。


 長い銀髪が短い栗色の髪に変わり、透き通る青い瞳も落ち着いた緑色へと変わった。


 彼女の美しいエルフの装束も、シンプルな旅人の服装に変わった。


「これでいいわ。これなら町に入っても目立たないはず」


 俺はリリスの変貌ぶりに感心しながら頷いた。


「見違えたな。これなら誰も君をリリスだとは思わないだろう」


 リリスは微笑んで、自分の姿を確認した後、少し安心した様子だった。


「大丈夫、これで問題ないわ。さあ、町に入りましょう」


 俺たちは再び歩き始め、リリスが変装したまま、エリュシアの共存都市の門をくぐった。


 彼女の変装のおかげで、周囲の視線を引くことなく町に足を踏み入れることができた。



「この町は『共存都市ノクターリア』と言って、エルフとダークエルフが手を取り合い、共に発展してきた場所よ」


 リリスの説明を聞きながら、俺はその光景に感心していた。


「なるほど、エルフとダークエルフが共に築いた町か…。これは確かに特別な場所だな」


 俺たちは町の入り口を通り、エルフやダークエルフが行き交う賑やかな市場へと足を踏み入れた。


 商人たちは色鮮やかな布や魔法の道具を売っており、町の人々は互いに協力し合いながら生活している様子が伺えた。


「今では、エルフもダークエルフもお互いの文化や技術を尊重し合っているの。だから、昔とは違って、争いがほとんどないのよ」


 リリスが誇らしげに説明するから、きっといい町ななんだろうな。




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