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新たな力

 進化した俺は、新たに得た力を感じ取っていた。カマキリとしての姿はさらに強力になり、圧倒的な素早さと攻撃力を持つ。


  だが、今回の進化で手に入れたのはそれだけではない。人化。自由に人間の姿に変わることができる力だ。


「まずは…この力を試してみるか」


 俺は森の中を見渡しながら、自分の体に集中する。カマキリの状態でも十分に強いが、今は人間の姿に戻ることができる。この力を使いこなすことが、今後の戦いを左右するだろう。


  洞窟に近づくと周囲の気配が変わった。洞窟の入口から低い唸り声が聞こえてくる。ゴブリンリーダーと大量の普通のゴブリンが現れたようだ。進化した力を試す絶好の機会だ。


「ちょうどいい…」


 俺は身構えた。カマキリの姿のままで、まずはゴブリンたちに向かう。素早い動きで瞬時に接近し、刃を振るった。


  クリムゾンブレードで目の前のゴブリンを一気に切り裂く。鋭い刃が敵を一瞬で倒す感覚は、これまで以上に鋭く、力強い。


「やはり強くなったな…だが、これだけじゃない」

 

 残ったゴブリンが怯えながらもこちらに向かってくる。俺はカマキリの姿から人化を発動し、人間の姿に戻る。体が軽くなり、感覚が変わった。


 ゴブリンが襲いかかる瞬間、俺は風魔法を使い、遠距離から風の刃を飛ばす。次々とゴブリンたちを斬り倒しながら、距離を保つ戦術に切り替える。


 だが、この新たな力にはまだ慣れていない。人化した状態での戦闘は、思った以上に体力を消耗する。ゴブリンたちを倒したものの、まだ力をうまく制御しきれていないのがわかった。


「この力…簡単には使いこなせないな」


 人目がある場所ではこの力をうまく使わなければ、面倒事になるだろう。ゴブリンキングが潜む巣へ再び挑むためには、もっと自分の力を深く理解し、制御する必要がある。


 一ヶ月ぐらい体を慣らした。


  わかったことは人化の状態では力の六割ほどしか出せないということだ。だが部分的にカマキリの腕や足にすることで攻撃力や素早さを上げることができることがわかった。


  とはいえカマキリの姿で戦う方が力を十分に発揮できるし、人目のない場所や強敵相手にはカマキリの姿で戦うことにしよう。


  スキルのレベルも上げ、体に慣れた俺はゴブリンの巣を目指していた。


  以前、チャンピオンや大量のゴブリンに追い詰められた場所だ。しかし、今回は違う。俺は進化し、強力な力を手に入れ、できる限りの準備はした。


 巣の入口に到着した時、緊張感が走る。進化後初めての本格的な戦いだ。だが、今回の俺は、進化した力で敵を倒すためにここに来たのだ。


「行くぞ…」


 俺は巣の中に足を踏み入れた。そこには数十体のゴブリンたちが待ち構えていた。だが、今の俺には恐れはない。まずはカマキリの姿で接近し、素早いファントムスピードを使ってゴブリンたちを次々と斬り裂いていく。


  俺は次々にゴブリンたちを斬り倒し、遠距離から魔法で応戦し、ゴブリンの大群を圧倒する。


  だが、戦いはまだ終わっていない。


  巣の奥から現れたのは、以前俺を追い詰めたゴブリンチャンピオンだ。進化した力を試すために、こいつに再び挑む時が来た。


 俺は目の前のゴブリンチャンピオンを見据えた。以前、このチャンピオンに対して逃げざるを得なかったあの時とは、状況が違う。


  進化し、新たな力を手に入れた俺だが、前ほどの絶望的な力の差を感じられないことに気づく。


「今なら、こいつに勝てる!」


 チャンピオンは大きな棍棒を振りかざし、地面に大きな音を立てて攻撃を仕掛けてきた。


  だが、俺は素早くその一撃をかわし、カマキリの姿で間合いを詰める。斬撃で素早く反撃し、ゴブリンチャンピオンの肩口に刃を食い込ませた。


「くっ…重い…」


 確かに攻撃は通ったが、チャンピオンの筋肉の厚みは想像以上だった。一撃では倒せない。だが、俺もかつての俺ではない。即座に反撃をかわすと、次の手を考える。


 俺はファントムスピードを発動させ、一瞬でゴブリンチャンピオンの背後に回り込む。素早い連続攻撃を叩き込むが、チャンピオンはその耐久力で全ての攻撃を受け流していた。やはり、こいつの防御力は尋常じゃない。


 だが、前ほどの圧倒的な差はもう感じられない。俺は今や、この戦いに勝つ自信がある。以前逃げざるを得なかった相手に対して、今度は戦い抜ける力があることを確信した。


「ここからが本番だ」


 次に繰り出すのは、風魔法。風の刃がチャンピオンの巨大な体に何度も命中し、次第に動きが鈍っていく。


「どうだ…?」


 チャンピオンは今度こそ動きが鈍った。俺はすかさずクリムゾンブレードを発動し、赤い炎を纏った刃でとどめを刺そうとした。


 しかし、その瞬間、ゴブリンチャンピオンの目が鋭く光り、突然大きな叫び声を上げた。全身の筋肉がさらに膨張し、圧倒的な力で俺の攻撃を弾き飛ばした。


「なに…!?」


 強烈な力に圧倒され、俺は一瞬で距離を取る。やはり、簡単に倒せる相手ではなかった。進化した今の俺でも、ゴブリンチャンピオンはまだ手強い相手だ。


「だが、これからだ!」


 俺は再び立ち上がり、ゴブリンチャンピオンに向かってクリムゾンブレードを発動させた。腕の刃が赤く燃え上がり、炎を纏った。これで通常の攻撃に加え、火属性の追加ダメージが乗る。今度こそ、こいつを倒す。


「行くぞ…!」


 素早くチャンピオンの横に回り込み、クリムゾンブレードで一撃を加える。鋭い斬撃とともに、炎がゴブリンチャンピオンの筋肉に食い込み、そのまま焼き付ける感覚が伝わってきた。続けてもう一撃、そして三撃目。チャンピオンはその場で反撃する間もなく、俺の攻撃を受け続けた。


「燃焼の持続ダメージで追い込む!」


 クリムゾンブレードの炎はチャンピオンの体を燃やし、じわじわと持続ダメージを与えていく。


  ゴブリンチャンピオンは一瞬、苦痛に顔を歪めながらも、なおも立ち向かってくる。だが、その動きは確実に鈍くなっていた。


「少しずつだが、効いている…!」


 俺は無理に一撃で仕留めようとはしなかった。確実に、クリムゾンブレードの燃焼効果がチャンピオンの体力を削っていることを感じた。攻撃をかわしながら、じわじわと火傷のダメージが蓄積していく。


「焦るな…一歩ずつ、倒すんだ」


 攻撃の合間に、再びチャンピオンに炎の斬撃を加える。さらに燃焼効果が蓄積し、チャンピオンは次第に耐え切れなくなっていく。


  体の至るところから煙が上がり、苦しそうな声を上げる。


 俺は距離を取りながら、慎重に敵の動きを見ていた。圧倒的な力を持つこのゴブリンチャンピオンも、クリムゾンブレードの力を使い続けることで、少しずつ崩れていくのが見て取れた。


「あと少し…!」


 ついに、ゴブリンチャンピオンが膝をついた。巨大な体を支えきれずに、地面に倒れ込む。その体はもう限界に達している。クリムゾンブレードの炎が、じわじわと最後の一撃を与えようとしていた。


「これで終わりだ…」


 俺はとどめの一撃を放ち、チャンピオンの首元を斬りつけた。赤い炎が再び爆発し、ゴブリンチャンピオンの体を焼き尽くす。ついに、その巨体は完全に動かなくなった。


 俺は深呼吸しながら、ゴブリンチャンピオンの倒れた体を見下ろした。かつては逃げるしかなかった敵を、ついに自分の力で倒すことができた。時間はかかったが、クリムゾンブレードの地道な炎の力で少しずつ相手を削り、勝利を掴んだ。


「ようやく…倒した」


  俺はついに、かつて逃げるしかなかった相手を倒した。その実感とともに、体の内側から力が満ちてくるのを感じる。


 この戦いで、俺は進化した自分の力を試し、その力を制御しながら戦うことができた。これで、次の大きな戦いにも備えられるだろう。俺は次なるゴブリンキングとの対決に向け、再び歩みを進めた。

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