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青星の水晶〈上〉  作者: 千雪はな
第4章 不安と祝福と
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手を繋いで

アリアの傷を少しでも治したくて、彼女から魔力を分けてもらった分で治癒することを提案した。アリアは、僕のことを心配しつつ、渋々両手を差し出してくれた。


僕はその手をそっと握り、魔力を受け取った。昨日、僕が魔力切れを起こした時に十分に魔力を補充してもらって、その後、使うことがなかったので受け取れるのは少しだけだが。


すーっと手のひらから流れ込むアリアの魔力はやはり心地よい感じがした。それを溢れないところまで受け取って手を離した。


「これでいいか?」


僕は魔力が十分に満たされて、さあ治癒の魔法をかけようと思ったら、「手を…」と言ってアリアは今離した僕の右手を再び握った。


「これでライナス様の魔力の量がわかりますから」


「ははは、今もらった分しか使わないよ」


「絶対ですよ」


アリアは深い青色の瞳で、真剣に僕に約束を守るよう訴えた。そんなに心から僕のことを心配してくれていると思うと、思わずこの場で抱きしめたくなった。


―――いや、今はアリアの傷を治すんだった。


「じゃあ、今度こそ治癒の魔法をかけてもいいか?」


「はい、お願いします」


アリアは右肩が僕に近くなるよう、少し座り直した。僕は左手を肩の上にかざし、治れと念じた。すると――


フワーッとアリアの上半身を包み込むほどの光が広がった。


これまでは傷の半分くらいを覆う程度しか治癒の光を出すことはできなかったのに…


「わぁ…」


アリアも驚いて声を上げた。


光は、僕が驚いて集中が途切れた途端にふっと消えてしまっていた。


「……アリアも治癒の魔法をかけたのか?」


「いいえ、私は何も。自分の傷は治せませんから…」


「そうだな。でも、さっきのはアリアと手を繋いだから…?」


僕は独り言を呟きながら、もう一度治癒の魔法をかけた。先程と同じようにアリアの体は光に包まれた。驚く気持ちはあるが、まずは治すことに集中した。




魔力が約束の量まで減ったところで、僕は集中を解いた。思った以上に消費される魔力は多く、魔術を発動していたのはほんの十秒ほど。


「あっという間だな。これじゃ、傷にはあまり意味ないかもしれないな」


「そんなことはありませんよ」


「そうなのか?」


「はい、傷の奥の方のズキズキとした痛みがすごく軽くなりました」


アリアは嬉しそうに僕にそう言った。


「それなら、もう(すこ)…」

「ダメです」


もう少し治癒の魔法をかければ、痛みが完全に取れるかもしれない。それなのに、アリアは、約束以上の魔力を使うことは許してくれなかった。


「少しも疲れていないぞ」


「今日はこれだけにしてください」


()()()?明日も治癒の魔法をかけてもいいのか?」


「あっ……、いつもの魔術の練習の癖でつい…」


僕は今日だけだと思ったから、もう少し治癒ができればと思ったが、アリアはいつも無理をしないよう日を分けて練習をしていたから、それと同じように考えていたようだ。


「明日もかけていいなら、これでやめておく」


「どこも不調はありませんか?」


「ああ、全くない」


「………では、また明日…」


僕はアリアが許してくれたことが嬉しくて、キュッと抱きしめて額にキスをした。


アリアは額を押さえ、顔を真っ赤にして椅子から立ち上がった。その反応が可愛いだなんて呟いたら、「揶揄(からか)わないでください」と怒られた。


その怒った勢いのまま部屋を出ていってしまうと思ったが、扉の前でこちらを振り返った。


「ライナス様、治癒の魔法…ありがとうございました。明日も、お願いします」


「ああ、また明日」


アリアは柔らかく微笑むと、小さくお辞儀して部屋を出ていった。



静かに扉が閉まってから、アリアの照れた可愛らしい様子にふっと笑いが漏れた。そして自分の手のひらを見つめた。


―――アリアと手を繋ぐと、魔術のレベルが上がるのだろうか……

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