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青星の水晶〈上〉  作者: 千雪はな
第4章 不安と祝福と
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帰城報告

ウェーンブレン宮殿が奇襲された後、僕は王都へ戻り、平穏な日常へと戻ろうとしていた。


アリアは国の保護対象者となり、王城内の一室を与えられた。城の西の棟には、王族用の医務室に属する者や王子らの教育係など、城内で務める者達の部屋が集まる一角があり、その中で警備しやすい部屋がアリア用にと用意された。




アリアを王城へ連れ帰ったすぐは、僕が住む離宮へ連れて行こうとしたが、帰城直後の報告の場で却下された。


報告の相手は、騎士団長のフィリップ兄上だ。兄上は僕の案をばっさりと切り捨てた。


「婚約相手でもない令嬢を未婚の王子の離宮へ招き入れるわけにはいかないだろう」――馬鹿かお前は?


馬鹿か…は口に出しては言われていないが、そう顔に書いてあった。たまたまその場に居合わせた上から二人の兄上達も、フィリップ兄上の意見と同じだった。


「まあ、これまでの経緯を聞けば、ライリーが自分で守りたくなるのもわからなくはないがな。ちゃんと筋を通してからだろうな」とサミュエル第二王子。


王太子のアドレイ第一王子も「そうだな、」と話し始めた。


「手順を踏まずにライリーの離宮に住まわすのは、令嬢の評判を落とすだろう。たとえその娘を(めと)るつもりだとしてもな」


―――娶るつもりだとしても。


そのつもりだ。やはり、一番近くにいてアリアを守りたいと思ったら、彼女を僕の妃とする必要がある。しかし、「好きだ。結婚してくれ」と本人に言えばいいという問題ではない。


兄姉達の多くが国内外の貴族らとの婚姻関係を結んでいるから僕の政略結婚は必要とされておらず、周りが認めるのなら好きな女性を妃に迎えていいと言われている。


そう、()()()()()()なら。


アリアの人柄とハンティントン侯爵家令嬢の立場から、彼女のことはどこからも認められるだろう。僕がアリアの夫として相応しいと周りに認められるか、そして彼女が王族という何かと窮屈な立場になってでも僕の妃になることを祝福してもらえるかが問題だ。


僕はアリアを守るために必要なことは何でもしよう。王城へ戻る馬車で僕の腕の中で眠るアリアの顔を見つめながら、そう決意した。


本当であれば、ゆっくり時間を掛けて周りに認めてもらい、アリアにも僕の気持ちを心から受け入れてもらいたい。しかし魔力を持つアリアが狙われる危険がある今、できるだけ早く動き出す必要がある。


僕は小さく息を吐いて気持ちを整えると、真っ直ぐに兄上らに顔を向けた。宮殿への襲撃の報告先はフィリップ兄上だが、これは長兄であるアドレイ兄上へ伝えるべきことだ。僕と同じ薄い青い瞳と視線を合わせ、決意を口にした。


「兄上、僕はハンティントン公爵家令嬢アリア・ローズマリーを妃に迎えたいと考えております」


僕はドキンドキンと大きく鳴る鼓動を感じながら、アドレイ兄上の言葉を待った。



「そうか、わかった。では、周りを認めさせてくるように。その間、アリア嬢は王城で預かろう。フィル、それでいいな」


「はい、兄上。そのように手配いたします」


「ライリー、陛下へ拝謁する時は私も立ち会おう。頑張っておいで」


親子ほど歳の離れたアドレイ兄上は昔から僕を可愛がってくれるが、成人を迎えても、いまだに甘やかされているのを感じた。頼りにしてもらえるような存在になりたいのだが…。


「ありがとうございます。フィリップ兄上もよろしくお願いします」


「ああ」


「ハンティントン侯爵には殴られるかもな。頑張れよ」


サミュエル兄上がそう言って笑った。


僕も兄上に合わせて「ははは…」と笑ってみせたが、笑い事ではない。国の決定でアリアを侯爵邸からアカデミーに移しておいて、彼女をあんな危険に晒したのだ。ギルバートには殴られる以前に、会ってすらもらえないかもしれないと僕は心配になった。

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