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青星の水晶〈上〉  作者: 千雪はな
第3章 不穏
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追跡

「殿下、少しスピードを落としてください!」


僕は従者三人と共に宮殿を襲った集団を追っていた。すぐ後ろを走るチェスターの声に、ロバートを少し置いて走っていたことに気づき、僕はわずかにスピードを緩めた。ふぅっと息を吐いて少し気持ちを落ち着け、この先を走る馬車を追った。


宮殿から先には、隣国のユトレフィス公国との国境まで街はなく、森が続いていた。公国との往来は、森の南に位置する街からの広く整備された道があるため、この森の中の道はほとんど使われることはない。だから、今僕らが辿っている新しい車輪の跡はアリアを連れ去った馬車のもので間違いないだろう。


―――奴らはアリアを何のために、どこへ連れていくつもりなんだ。


ハンティントン邸で魔法(ぎょく)の爆発が起こった直後に作られた魔術調査班のメンバーは、アカデミーで五年以上の調査・研究の実績をもつ者達から選ばれた。今回宮殿を襲撃した集団も、もう何年も前から魔術の何らかの力を必要としてアカデミーで何かを調べていたのかもしれない。


そこへアリアに魔力が宿ったことを知り、うまく調査班へ間諜(スパイ)を潜り込ませた。そして自分達の目的を果たすために、今まで彼女を攫う機会をうかがっていた。


―――その考えが正しければ、奴らにとってアリアは大切な魔術師だ。傷つけることなく連れ去られているはず……どうかそうであってくれ。


アリアの無事を願ってギリっと手綱を更に強く握り締めた。


その時――


ガラガラガラ……


前方から馬車の車輪の音が聞こえた。顔を上げ、木々の隙間にその姿が見えないかと目を凝らした時、キラリと何かが光った。


「敵だっ!」


僕のすぐ後ろを走るロバートが叫んだ。それと同時に僕らの行く手に剣を手にした粗暴な風貌の男達が十人程、道の脇の木の影から出てきて道を塞いだ。


ここで立ち止まれば馬車を逃してしまう。


魔術を使えば四方に散った敵を一度に攻撃することもできるが、残っている魔力で攻撃できるのは一度きりだろう。この後に必要になるかもしれないから、ここでは使いたくない。


―――剣で戦うなら…


相手を見ると構えには隙があり、こちらは全員で応戦する必要はない。


「ロバート!ケインとここを食い止められるか」


「はっ、お任せください!」


「頼んだ!チェスター、着いてこい!」


「はっ、殿下!」


僕は剣をスラリと抜くと、正面を塞ぐ男ら二人を薙ぎ倒してそこを突破した。


「ぎゃぁぁっ!」

「待てっ!!」

「逃すな、追え!」


男達の怒号はロバートらに足止めされてすぐに遠くなり、やがて聞こえなくなった。



今度は全速力で馬を走らせた。チェスターなら難なくついてくる。すぐにまた馬車の音が聞こえてきた。


幌付きの荷馬車がガラガラと音を立てて走っていた。馬車はいくら馬を急かしてもスピードは上がらず、僕らはあっという間に追いついた。馬車のすぐ後ろには馬に乗った男が二人、護るように走っていた。身なりから、今回の襲撃を纏める立場に近い者らだろう。


「先に行け!」


護衛の男の一人が馬車に向かってそう叫ぶと、馬車だけを先に行かそうと僕らの前で馬を急旋回させた。もう一人も馬を止めてこちらに剣を向けた。その動きは先程の男達よりも隙がない。


しかし、こちらもここで馬車を逃すつもりはない。


ギリギリギリ……


馬を走らせながらチェスターが弓を引き絞り、パンッと放った矢は馬車の車輪に命中した。


ガシャン!ガタガタ……ガンッ!!


車輪の壊れた馬車は道を()れ、木にぶつかって止まった。


「アリアっ!」


荷台に乗っているであろうアリアの無事をすぐに確かめたいのに、目の前には剣を構える男達が我々と対峙していた。



「こっ、こんな危ない目に遭うなんて、きっ、聞いてないぞ!!」


荷馬車の御者を務めていた男が、狼狽(うろた)えながら馬車を降り森の奥へと逃げていった。


「おいっ!」


護衛の一人が逃げる男に気を取られた隙に、僕は間合いを詰めて切りつけた。男は地面へと崩れ落ち、痛みにうめいた。


もう一人が僕に切り掛かってきたが、それはチェスターが迎え討ち、激しく音を立てて剣がぶつかった。だが、チェスターの敵ではなかった。あっという間にその男も地面へと落ちた。チェスターはひらりと馬を降りると、地面に倒れた男達を縛り始めた。


僕はその隙に馬車の方へと馬を進めようとした時――


「動くなっ!」


荷馬車の幌の中から女の声が響いた。


僕は剣をぎゅっと握り直し、荷台の後ろに視線を向けた。地面に倒れた男の一人を縛り上げたチェスターも、息を飲んで声の主を待った。すると、積まれていた荷物の陰から、アリアを盾にするようにして女がゆっくりと出てきた。

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