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青星の水晶〈上〉  作者: 千雪はな
第3章 不穏
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隙と奇襲

森の中、流れる川に沿って緩やかに曲る道の向こうからケインが乗った馬が全速力で駆けてきた。ウェーンブレン宮殿に常駐し、昨日僕のところへ定期報告に来ていたケインは、今朝、我々よりも少し早く王都を発ち、宮殿へ先触れに向かっていた。そのまま宮殿で我々の到着を待つ予定だったのだが――


僕の前で馬を止めた彼の険しい顔を見て、ドクン、ドクンと心臓の音がいやに大きく響いていた。


「殿下!宮殿に襲撃です!」


「なっ…!!被害は⁈」


アリアのことをまず先に思ったが、僕が確認すべきは全体の状況だ。手綱を握る手が震えるのを感じながら、報告を聞いた。


「本日早朝に複数の武装した者らの奇襲を受け,宮殿の警護兵は負傷者多数。魔術調査班の皆様は手足を拘束された状態で食堂に集められていました」


「全員か?」


ドクン、ドクン、ドクン……心臓の音は益々うるさくなっていく。ケインも僕の問いに表情を更に険しくさせた。


「いえ、アリア様が連れ去られたと…」


「そっ…んな……」





「殿下、ご指示を!」


一瞬思考が停止しそうになったが、チェスターの声にハッと顔を上げた。


「チェスター、ケイン、ロバート、僕と一緒に来てくれ。シャーマン、残りの者で宮殿に向かうように」


「「はっ!」」


馬術と剣術に長けた者だけを連れて、僕は走り出した。


「ケイン、連れ去られたのは確かか?」


馬を走らせながら、ケインに手短に確認をした。


「はい。正門付近で倒れていた兵が目撃を」


「そうか」


―――ケインがいない隙を狙われたか。


前回ケインが定期報告に王都に来た時は、その翌日の夕方に宮殿へ戻った。今回、僕が早朝から宮殿へ向かうのは突発的だったから、奇襲をかけた者らには予想外だっただろう。もし前回同様だったら襲撃の発覚はもっと遅い時間になり、王都にいる僕への報告も遅れていた。


王子の従者であるケインが宮殿を離れれば、警護の兵らの緊張も多少緩んでいたかもしれない。そんな隙も間諜(スパイ)によって漏れていたのだろうか。


「あの…」


ケインが遠慮がちに声を掛けてきた。


「どうした?」


「まだ確認はできていないのですが…」


「構わん」


「女性研究官が、兵らに毒を盛ったようです」


アリアに関する情報はアカデミー内から漏れているとは思っていたから、魔術調査班も警戒の対象にはしていた。だが、魔法庁の別の班に潜り込んでいるかと思っていた。まさか調査班の中に間諜(スパイ)がいたとは…。皆、身元は確かな者ばかりだし、何より雰囲気の良いチームだったから、アリアに害をなす者が潜んでいるだなんて思いもしなかった。


しかし、調査班移転後の王都での抗議活動の急な収束を見て、その判断に疑問を持ち始めていたのだが……


「くそっ!」


僕は手綱を強く握り直し、馬のスピードを上げた。


 ◇ ・ ◇ ・ ◇


宮殿への分かれ道で馬を止めた。すぐ後ろをついてきたチェスターらも僕のすぐ横に止まり、眉間に皺を寄せながら周りを見ていた。


「これは…」


そこに立っていた兵らは道の脇に倒れていた。口から泡を吹いて意識がない。


「確かに毒を盛られたようだな」


「はい。宮殿正門の衛兵らも同じような状態で、私がここに着いた時はまだ話ができたのですが…」


ケインが宮殿へと続く山道の上の方へと視線を向けて答えた。ここからは宮殿の建物に近い正門は見えない。道には馬車の轍くっきりとついていた。山道を下り、丁字路で王都の方へと曲がっていた。ただ、真新しい車輪の跡が王都とは反対の方へとうっすらと見えた。隣でチェスターもその跡が続く先を見て口を開いた。


「アリア様はこちらへ連れ去られたのでしょう」


「そうだな。馬車を使っているなら追いつけるだろう。行くぞ」


「「はっ」」


僕らは再び馬を走らせた。

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