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青星の水晶〈上〉  作者: 千雪はな
第3章 不穏
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月並みな選択

「チェスター、その束を確認したらいいのか?」


「はい。これで一区切りになります」


魔法庁内の会議を終え、執務室に戻る廊下でチェスターが抱える書類を横目で見て仕事の残りを確認した。


王都からウェーンブレン宮殿までは日帰りで行ける距離だが、その時間がなかなか取れずにいた。数日前に、魔術調査班の宮殿への移転を命じたフィリップ兄上に不満を漏らしたが、ただ笑われただけだった。


___「お前、自分で行くつもりだったのか」


「今でも行くつもりでいますが」


「ははは、それはなかなか行けないだろう。もっと頭を使えばいいのにな」


「では、どうしたら?」


「それは自分で考えろ。選択肢はいくらでもある。その中から自分で選ぶべきだ」___


兄上は答えを教えてくださることはまずない。いまだにどうしたらいいのかいい案が浮かばない僕は、兄上に笑われたことを思い出して深くため息を吐いた。


「殿下、どうかされましたか?」


チェスターが僕を気遣うようにこちらを見ていた。


「いや、先日兄上に笑われたことを思い出してただけだ」


「ああ…」


その場にはチェスターも同席していたから、僕のため息の理由に納得した。


「では、この書類を早く片付けなければならないですね」


「……そうだな」


チェスターも僕個人の選択(こういうこと)に関しては、答えに見当がついていても僕が自分で辿り着くまで教えてくれることはない。あくまでも僕の答えのサポートに留める。


執務室に着き、自分の席にドサッと座った僕は、もう一度小さくため息をついてから姿勢を正して書類に視線を落とした。


ここ数日は夜遅くまで机に向かい、予定を前倒して書類を片付けていた。元々明日は、国賓の出迎えと歓迎の宴の予定があったのだが、先方の都合で延期となったため、一日予定が空いた。一日半、時間を空けられれば宮殿に行くことができる。


兄上には頭を使えと言われたが、結局、頑張って時間を作って自分で会いに行くという何の捻りもない行動に収まった。今の僕にはこれしか思いつかない。


―――他の方法も無いことはないが、僕一人で決めるわけにはいかないし…


言い訳がましいことを心の中で呟いていたら、扉がノックされた。顔を上げると、扉を開けた従僕(フットマン)が「ワイルダー男爵家ケイン様がお越しになりました」と告げた。ウェーンブレン宮殿からの定期報告だ。


「入ってもらってくれ」


「かしこまりました」


報告書を手にしたケインが一礼して執務室の入ってきた。その表情から、特に問題はないことが読み取れた。


「こちらが調査班についての報告書です」


「ああ、ありがとう。様子を聞かせてくれ」


僕はケインから報告書のファイルを受け取った。


 ◇ ・ ◇ ・ ◇


翌朝、日が昇るより早く、僕は魔術調査班が希望した補給品を積んだ馬車と共にウェーンブレン宮殿へと出発した。

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