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青星の水晶〈上〉  作者: 千雪はな
第3章 不穏
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水の魔術師

アリアの魔力を受け取り、その体験を実感し始めた頃、森を抜けた馬車は川沿いの道に出て、ウェーンブレン宮殿が見えてきた。


森の木々の向こうにそびえる岩山の上に白い石積みの大きな建物だ。今は遠くからも目立つ外観だが、美しさのために白い石を使ったのではなく、この周辺で取れる石が白かっただけだ。隣国と争っていた頃はそれを隠すために周りに木を植え、壁には蔦を這わせて目立たないようにしていたのだと話を聞いたことがある。


もう少し行けば、岩山を登る唯一の道への橋を渡る。その前にアリアに話しておかなければならないことがあった。


「アリア」


僕は彼女の両手を取って、名を呼んだ。魔力で満たされた僕には、更なる魔力は流れ込んでこなかった。


話の内容を考えると僕の声は固くなり、アリアも真剣な眼差しで僕を見つめた。


「はい、ライナス様」


「魔術をよく思わない人や恐怖を感じる人がいることはわかっていると思う」


アリアは無言で頷いた。


「誰かが人々の恐怖を煽っているらしいんだが、そのための情報がアカデミーから漏れている可能性が高い」


「えっ……」


「アカデミーのどこから漏れているのか、今のところわかっていない。だから、僕らの情報をどこまで出すか制限する必要がある」


「それは…、魔術調査班の皆さんに対しても、ということですね」


「ああ、情報を漏らす者がわかるまでは、残念ながら彼らにも慎重にならざるを得ない」


アカデミーからウェーンブレン宮殿へ移動する理由の抗議活動については聞かされているから、アリアもある程度の心積りはしていたと思うが、いつも接している魔術調査班の研究官も警戒する対象との話に表情を固くした。


「わかりました。では、ライナス様に魔力を移動できたことも話さない方がいいですね」


「そうだな。レイドナー教授にだけ話せる機会を作るようにしよう」


「はい、わかりました」


アリアは僕と繋いだ手をじっと見つめながら、何か自分の中で整理ができたように小さく頷いた。そして顔を上げて微笑んだ……と思ったら「あっ」と声を上げた。


「アリア、どうした?」


「あの…、ライナス様の手が…」


「僕の手が?」


「熱くないです」


「ん……?」


―――僕の手は何も変わっていないと思うが、どういうことだろうか。


自分達の手を見つめて……


「あっ、アリアの手が冷たくない!え?どういう……アリア、熱でも出たのか⁈」


これまでひんやりと冷たかったアリアの手が、僕と同じくらいにほんのり温かくなっていた。つまり、アリアにとっては高熱が出ているのかもしれない。急な移動で心労もあるだろうし……


「いえ、私ではなく、ライナス様の体温が下がったのではないかと思うのです」


「僕の?」


僕はアリアと繋いだ手を離し、自分の頬や額を触ってみたが、自分ではわかるわけもなく……。その慌てて確認する姿が面白かったのか、アリアはくすくすと笑いだした。


理由は何であれ、アリアが笑っているのを見たら僕もほっとした。


「僕の体温がアリアと同じくらい下がった………じゃあ、僕も水の魔術師の仲間入りだね」


そう言って、僕も笑った。

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