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青星の水晶〈上〉  作者: 千雪はな
第2章 魔術研究所
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王子と魔力(前編)

丘でアリアの魔術調査の様子を見た翌日の午後、僕はレイドナー教授の研究室にいた。幾つか気になることについて、教授の見解を聞かせてもらうために――



「えっ、殿下にはあの水が澄んで見えたのですか?」


闘技場でアリアの魔術で溜まった水が底まではっきり見えるほど澄んでいたと僕が言えば、教授は驚いて聞き返した。


「やはり教授も濁って見えたんだな」


「はい、水に浸かった服も汚れて泥臭くなっていましたし、濁っていたと考えるのが自然かと」


「実際は濁っていたが、私には透明に見えたということか…」


「そうだと思われます。他にも気になることがあると仰っていましたが、お聞かせいただけますか」


「ああ、昨日のアリアが『青は水が流れ』と言って水を出した時に、その手の周りが青く光ったように見えたんだ」


「青く……では、風の時はどうでしたか?緑に見えたのでしょうか」


「………風の時?」


そういえば、水を出した後に風で吹き飛ばしてたな。青く見えた後、緑の光が見えただろうか……


「緑の光は見たかどうか記憶がない」


僕の答えに教授は頷いて、彼の考えを話した。


「推測ですが、殿下の瞳の色から水魔法との親和性が高いのかもしれないですね。古代魔術師の先祖がいる場合、その瞳の色が遺伝していると言う説はご存知ですよね」


「ああ、もちろん知っている」


「殿下の瞳の色が水魔法の魔術師の名残だとすれば、水魔法に関する部分は我々とは違って見えることがあるのかもしれません」


「なるほど、水魔法との親和性か。その私の瞳なんだが、少し揺らいでいるんだ」


「ええっ!そうなんですか⁈」


教授は椅子を倒しそうな勢いで立ち上がり、おでこ同士をぶつけそうな距離まで顔を近づけて僕の瞳を覗き込んだ。僕はあまりの近さに少し背筋を逸らしたが、教授は益々前のめりになり、その距離はさっきよりも縮まってしまった。


「確かにアリアに比べるとわずかですが、揺らいでいますね」


そう言いながら、教授はポケットから折りたたみ式のルーペを取り出して、更に僕の瞳をじっくりと観察した。


あまりの近さに呼吸をするのを抑えていたが、少し苦しくなってきた。


「教授、ちょっと近すぎるんだが」


「あっ、申し訳ございません!つい…」


慌てて体を起こす教授を見て、僕は笑った。


「瞳が揺らぐってことは、私も魔術を使えるってことなんだろうか?」


「そうですね。殿下にも魔力が宿っていると思うのですが…」


「だが、アリアの真似をして色を意識してみたが、何の魔術も出そうになかったんだ。それに、アリアみたいに体温も低くないしな」


「魔力の量が少ないのかもしれませんね。もしくは…」


顎に手を当ててしばらく考えていた教授が「そうだ、殿下、少しお待ちくださいね」と言って、席を立って隣の部屋に行った。その部屋には、魔術に関する資料や発掘した魔道具などがしまってあるらしい。僕もその部屋を見てみたいとソワソワしてしまった。


「お待たせしました」


教授は幾つかの魔道具を浅い木箱に入れて持って戻ってきた。僕が持っている魔道具は研究では不要と判断された物だから傷がついていたり部品が足りなかったりするが、目の前にあるのは状態が良い物ばかりで、僕は思わず立ち上がって身を乗り出してしまった。


「これは魔力量の計測器だな。あ、この腕輪は!これ、もしかして使えるのか⁈」


くくくくくっ、と教授の堪えきれない様子の笑い声で、自分が興奮していることに気づき、落ち着くために咳払いをした。


「すまない。こんな綺麗な魔道具を間近にみたら、つい……」


「いえ、私も先程、殿下の瞳の揺らぎで興奮してしまいましたので」


「ははは、似た物同士ってことだな」


「そうですね。魔道具でこんなに喜んでいただけるなんて、殿下にも我々の研究に加わっていただきたいくらいです」


「落ち着いたら、ぜひ参加させてくれ。それで、その魔道具は?」


目の前に魔道具を並べられ、どうやら使えるらしい。僕の魔力を測るのだろうか?早く教授の考えを聞きたくてうずうずしていた。

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