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青星の水晶〈上〉  作者: 千雪はな
第2章 魔術研究所
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魔力の消耗

「また続きは明日にしましょうか」


色の概念によって、急にアリアが魔力を制御できるようになった。アリアも研究官らも興奮気味に繰り返し水と風の魔術の発動を試していたが、レイドナー教授がそれを制した。夕日もだいぶ沈み、辺りは薄暗くなってきていた。


皆で丘を降り、濡れないように馬留めに置いておいた上着を各々羽織ると、研究官達はすぐに馬に乗って研究棟へ順に帰り始めた。


僕はレイドナー教授を呼び止めた。


「明日、少し時間を取れるだろうか。私の瞳のことや気になることについて話がしたいんだが」


「はい、もちろん大丈夫です。時間については、後程、チェスター殿と相談させていただけばよろしいでしょうか」


「ああ、よろしく頼む」


話がついて僕も馬に乗ろうとしたら、既に帰路についていると思ったアリアがまだそこにいた。隣には、アリアと同じ年頃の女性の研究官が心配そうに寄り添っている。


「アリア、大丈夫か?」


彼女の顔を覗き込んだが、日が暮れて、顔色はよくわからなかった。しかし、その笑顔は弱々しかった。隣の研究官が、遠慮がちに口を開いた。


「魔力が減ると、体力も一緒に同じように消耗するのです。まだアリア様の魔力量がわからないので、様子を見ながら調査を行なっているのですが、今日は使い過ぎてしまったようで…」


「それなら、私の馬で帰ろう。貴女は自分の荷物だけ持って帰ってくれて構わない。アリアの不調に気づいてくれてありがとう」


「いえ、とんでもございません。では、失礼いたします」


そう言って、アリアについていてくれた研究官も馬に乗って帰って行った。


「さあアリア、これに乗ってくれるか?」


僕は馬を落ち着かせると、アリアに乗るのを手伝い、自分もその後ろに跨った。


「ライナス様、申し訳ありません。さっきまでは何ともなかったのですけど…」


夢中になっている時は、疲れに気づかないのだろう。アリアは謝るが、他の誰かではなく僕が彼女を送っていけることにほっとしていた。


僕らが準備をする間に、レイドナー教授が出発し、チェスターも自分の馬の横にアリアの馬を並べ、その手綱を引いて帰って行った。


「僕らも行こうか」


「はい」


座っているのがやっとなくらいに疲れた様子のアリアを支えながら、チェスターから少し距離をとって進んだ。


「寝ててもちゃんと落ちないように連れて帰るから、安心していい」


「いえ、大丈夫です…」


アリアはそう言ったが、林に入るより前に、僕にもたれかかって寝息を立てていた。やはり心も体もクタクタだったようだ。長いまつ毛が濡れているのは魔術で出した水を被ったからだろうが、泣いているようにも見えて、守ってやりたい気持ちが押し寄せるように湧いてきた。


―――いつの間に、この子の存在が僕の中でこんなに大きくなったのだろうか…


ひんやりとした小さな肩を(さす)りながら、彼女を起こさないように優しく抱きしめ、その髪にそっと口付けた。

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